第11話 浮気現場パパラッチ作戦(後編2)

《前回のお話》

 鴨倉哲也と蜜本カレンが浮気のために密会すると予想した日。

 優は学校から帰る鴨倉を尾行したが、秋葉原で鴨倉を見失ってしまう。

 鴨倉が上野方面の山手線に乗った事まで確認した優は、それを燈子に連絡した所、

 「二人は日暮里のラブホテルに行くのではないか」と推理する。

 そこで次に日暮里で張り込む事を考えたが、駅の出口が三つあるため、

 二人では完全に見張る事ができない。

 そこで優は親友の石田洋太に援助を頼む事にした。




 その夜、俺はさっそく石田洋太に電話した。

 石田とは中三からの付き合いだ。

 中学は違ったが塾が一緒で仲良くなり、高校では一年からずっと同じクラスだった。

 俺にとっては親友と呼べる存在だ。


「と言う訳でさ、鴨倉先輩とカレンの浮気現場を押さえたいんだ。協力して貰えるか?」


 石田は二つ返事で答えてくれた。


「わかった。俺も協力するよ。月曜か木曜なら、俺もバイトも無いし時間が作れる。優から連絡が来た時に、学校が終わったら日暮里駅で見張っていればいいんだな?」


「ああ、その通りだ。ありがとう、恩に着るよ」


「いいさ、気にすんな。俺も鴨倉先輩のやった事には、ムカついていたからな。あの野郎、普段から先輩ヅラして威張っていたクセに」


 俺はそれを黙って聞いていた。

 思い出すと改めて腹が立ってきたのだ。

 仲間の、それも後輩の彼女を寝取るなんて、クズ過ぎないか。


「それにしても燈子先輩、さすがだな。自分の彼氏が浮気してるって言うのに、そこまで冷静で居られるなんて」


「本当、今回は改めて燈子先輩の凄さを実感したよ」


「復讐方法が『最高に惚れさせた時に相手を振って、他の男と一夜を過ごす』か。確かに目の前でそんな事をされたら、トラウマ・レベルだろうな」


「俺もそんな事は思いつきもしなかったよ」


「女は怒らせるとおっかねぇな」


 するとそこで石田が少し興味深そうに聞いて来た。


「ところでその計画だと、最後に燈子先輩と一緒にホテルに行けるのは、優なんだろ?」


「さっき言ったろ。まだそれは決まっていないって。その時に燈子先輩の目にかなう男に、俺が成っていれば、って話だ」


「でも現時点では、その位置に一番近いのは優じゃん。それって凄ぇ~役得じゃんか?あの燈子先輩だぜ、俺たちがずっと憧れていた」


 石田の一言で、俺は高校時代の事を思い出した。


 俺と石田、燈子先輩、そして鴨倉のヤツも、同じ高校の出身だ。

 燈子先輩は俺たちの一つ上、鴨倉は二つ上の学年だ。

 燈子先輩は文芸部に所属していて、同時に図書委員を務めていた。

 そして付いた渾名が『図書室の女神様』


 清楚ながら知的で凛とした燈子先輩は、全校男子の憧れの的だったと言っても過言ではない。

 そしてスレンダーながらあの豊かなバスト!


 俺も石田も、いや他の連中も、登下校中に燈子先輩の姿を見て、何度ため息を着いたことだろう。

 俺と石田なんか、城都大学に合格した時「当って砕けろの精神で、燈子先輩に告白する!」って話していたもんだ。


 ところが俺達が大学に入ってすぐに、燈子先輩は鴨倉と付き合い始めた事を知った。


 鴨倉哲也も、高校時代から女子にキャーキャー騒がれる陽キャ・イケメンだ。

 勉強が出来てスポーツ万能、サッカー部では副部長でセンター・フォワード。

 身長は180cm。成績優秀だがチョイ悪の雰囲気があり、クラスでも部活でもサークルでも、常に中心的な存在のスクール・カーストの最上位。

 これでモテない訳がない。

 そして俺達に勝ち目がある訳ない。


 俺と石田は、燈子先輩が鴨倉と付き合ったと知った時は、二人でヤケ酒を煽ったもんだ。

 その事を考えると、確かにこれで燈子先輩とうまく行ったらら『不幸中の幸い』『災い転じて福と為す』と言えるかもしれない。


「まぁ、そうなればな」


 俺はため息混じりにそう言った。

 現実にはそうなれる可能性は低そうだ。


「そうなるように、頑張れよ!燈子先輩とうまく行ったら、カレンちゃんと鴨倉の事も忘れられるだろ?」


 まぁ確かにそうかもしれない。

 『失恋のショックを癒す一番の方法は、新しい恋をする事』だって言うからな。

 今はまだ、とてもじゃないが『ショックが癒える』なんて考えられないが。


 そして……今日、いま、この瞬間も……カレンは鴨倉の下で「アン、アン」言っているかもしれないのだ。


 ……燈子先輩は、今、どんな気持ちなんだろう……


 俺はふとそう思った。



>この続きは明日(12/20)正午過ぎに投稿予定です。

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