第4話 魔女との契約

 ある夜、悪夢で目を覚ますとアイが椅子に座っている。


「寝起きはいかが?」


 アイの言葉にさっきまで見ていた悪夢を思い出そうするができないでいた。悪夢であったことは感じるがその内容が見えないのである。机の上で静かに輝く『祈りの石』はわたしの悪夢を吸い取っている様であり。わたしはアイに返す言葉を探していると。


「最近は『祈りの石』の輝きが鈍くてよ」


 先に話すのはアイであった。アイは『祈りの石』を手に取り寂しそうにしている。


「契約以上のことはしているつもりよ」


 わたしの強がりに、呼吸が苦しくなる。これは契約前の症状だ。


「安心して、これは魔女の幻術よ」


 この魔女本気だ。わたしとの契約の重さを知らしめている。


「そうね……友達ができたらしいわね」


 真由美ちゃんと亜美ちゃんの事である。


「わたしに友達は贅沢とでも言いたいのか?」

「友達はむしろ歓迎よ、不幸の質が変わるだけ。裏切りに妬み……この『祈りの石』の好物よ」


 そう言うと呼吸がらくになる。どうやら幻術を解いたらしい。アイはクスリと笑うと消えていくと同時に強い眠気に襲われる。


 気がつくと朝であった。机の上に『祈りの石』が置いてある。わたしはこの現実を直視しなければならないのか。


 携帯をチェックすると日常を鞄に詰め込む。


 女子高校で保健室登校する為だ。首から『祈りの石』を付けて家を出る。わたしの不幸が力となりこの世界に向き合うのであった。


 悪夢と『祈りの石』の事を考えながら、バスを降りる。バス停から校舎に向かって歩くと。


 建物が見えてくる。今日は土曜授業なので登校しているのは一部である。まいいや、昇降口まで行かずに正面玄関から入る。


 禿げたオッサンと一緒になるが気にしないでいた。誰だったかな……見覚えはあるのだが。


 理事長室に入っていくので、小首を傾げていると。そうか!理事長であった。


 これは不幸と言えるのではないかと『祈りの石』を眺めているが光らない。


 不幸とはいかにである。気にしても仕方ないので保健室に向かう。


 中に入ると。


 亜美ちゃんが部屋の隅でブツブツ独り言を言っている。保健の先生が心配そうに見ている。


 うん?


 後ろから真由美ちゃんが入ってくる。


「土曜授業の日は来客が少ないから堂々と『ワールドクラッシャー』ができるよ」


 真由美ちゃんは暗い空気を吹き飛ばしてくれた。亜美ちゃんのブツブツも止まり、保健の先生は定位置に戻る。わたしも『ワールドクラッシャー』を始めるが亜美ちゃんはベッドで横になる。


 ま、飽きたら勉強でもしよう。さて、どうすれば、真由美ちゃんの様に廃プレイができるのであろう?


 真由美ちゃんから通信交換で貰った『レッドブック』は最後の試練に必要なアイテムである。


 あぁぁーレベルが足りない……。


 そう、最後の試練は関係ないのであった。無難にレベル上げでもするか。


「つぐみちゃん、携帯を持ってブツブツ言うのは止めましょうね」


 ぁが、保健の先生に注意される。どうやら『ワールドクラッシャー』をプレイしながらブツブツ言っていたらしい。


 『祈りの石』はやはり反応しない。


 こんなにも不幸なのに……。

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