第3話 ファミレスのある日常

 わたしの日常は保健室登校で始まる。保健室に入ると亜美ちゃんが勉強している。


「おはよう、今日も元気そうね」

「つぐみちゃんか……わたしは忙しいの」


 亜美ちゃんはわたしをチラリと見て勉強に戻る。真面目だな、保健室で勉強を頑張るなんて。


うん?


 雨が降ってきた。最近は天気予報があたらないな。


「あぁがーずぶ濡れになった」


 真由美ちゃんが急いで保健室に入ってくる。保健の先生にタオルを借りると。


「サービスシーンよ」

「いや、脱がなくいいから」


 わたしの言葉にしょんぼりして携帯を取り出す。


『ワールドクラッシャー』でも始めるのかと見ていると。


 わたしの携帯が鳴る。


『ウエルカム、今日はファミレスに行こうよ』


 何故、目の前にいるのに携帯を使う?


「亜美ちゃんも行こう。だから、友人として携帯の番号教えて」

「イ、ヤ、ダ」


 亜美ちゃんがはっきりと言うが真由美ちゃんは首を傾げている。


「そうか!」


 何かを思いついた真由美ちゃんは亜美ちゃんに近づくと。


「ナデナデの刑です」


 真由美ちゃんは亜美ちゃんの頭をナデナデする。亜美ちゃんは不機嫌そうにメモを取り出して番号を書く。


「ついでだ、つぐみちゃんにも教えであげる」


 わたしと真由美ちゃんに番号の書かれたメモを渡される。ほうーこれが亜美ちゃんの携帯番号か。真由美ちゃんは携帯を操作していると、亜美ちゃんの携帯が鳴る。


『ハロー、ファミレス行こう』

『行けばいいのでしょ』


 どうやら、今日は三人でファミレスらしい。しかし、普通は番号交換の為に電話をかけるな。


 わたしも亜美ちゃんにかけるか。


 いったん解散してからのファミレスで食事会である。わたしは少し早く着く。


 真由美ちゃんは後30分かかるらしい。仕方なく、中に入りパフェを頼む。


 うん、ほどよい甘さだ。


 退屈な時間を過ごしていると。亜美ちゃんが到着する。


「亜美ちゃんは何を注文するの?」

「ポテトとライス」


 ファミレスなど久しくきていないのでそれが普通なのか分からない。


「OKだよ、今、ボタンを押すね」


 卓上にある例のボタンを押すのであった。簡単に注文すると、揚げたポテトと白いライスが届く。


「食べていい?」

「真由美ちゃんももうすぐ来るから、大丈夫だよ」


 亜美ちゃんは静かに食べ始める。長い沈黙の後で真由美ちゃんが到着する。やはり、亜美ちゃんとの二人きりは厳しかった。それは沈黙の時間であり、ある種の拷問と言えた。とにかく、真由美ちゃんが到着したのだ。有意義に過ごそう。


「わたし、わたし、巨人パフェ食べたい」


 一昔前まで『鬼殺しパフェ』と呼ばれていたモノである。


 大人の事情で『巨人』に変更されたらしい。まさに弱肉強食の世界である。弱きモノは名前を変更しなければならない。


 さて、注文して届いたパフェは一言で『デカイ』であった。ガツガツと食べる真由美ちゃんを見ながらわたしもパフェ以外の物が食べたくなる。例のボタンを押すと、イカ墨スパゲッティを注文する。


「生ハムサラダ……」


 亜美ちゃんが呟く、はいはい、注文ですね。しかし、亜美ちゃんは意外と普通だな。


 最近はファミレスと同じで何が正しいのか分からなくなっている気がする。


 そう、そう、スパゲッティは箸で食べると……。

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