第77話 フィーネさん視点
フィーネさんのつぶやき。
「いったい、あの子はなんなの……」
ジョジョリさんが反応した。
「すごい子でしたねぇ。あの金狼を奴隷に持ってるなんて」
フィーネさんがふっと小さく息を吐きだす。
「奴隷ならば、幾らでもお金を積みさえすればすごい人を持つことができるわよ。それよりも……あの子の鑑定能力は何なの?」
「鑑定能力のなせる業ではないでしょう、発想力に今回は助けられたのだと思いますよ。弱点が喉だと、首の付け根ではないと……。こう、人間、自分たちの体を使って発想するなど」
喉仏を抑えるクラノル。
「それもあるわね。あの子の価値は鑑定能力になんてない。屋台を出し、騒動一つ起こさずに人を並ばせ、売り切れ後にも文句を言わせなかった。試食だと私たちに食べ物を持ってきたのも考えてやったとしたらさすがだわ」
「確かに、商才はずば抜けてありそうでしたね。半額券というものを配っていたそうですよ。半額で売るなんて損にしかならないと思いますが……話を聞けばそうでもなさそうです」
「そうね。もう一度足を運んでもらえて、味を覚えてもらう。並んでも手に入らなかったという苦情を収めるだけでなく、もう一度足を運ばせるなんて、奇跡的な方法よね」
ジョジョリさんがクラノルさんとフィーネさんの会話を聞きながら、なるほどと頷いている。
「計算も早かったし、礼儀正しい、貴族かどっかの隠し子で相当教育されてるとか?」
そこにルクマールが渋い顔をしてやってきた。
「ん?誰の話だ?ユーキか。あいつ、文字はかけないって言ってたぞ。だから、俺が代わりに看板に文字書いてやったんだ」
と、どや顔を見せる。
その顔をみて、フィーネさんは、再びつぶやいた。
「本当に、あの子はなんなの……」
いくら奴隷と主人という関係だったとしても、あれほど金狼を動かし、灼熊ルクマールにも慕われるなんて。
二人がまさか協力して戦う日が来るなんて、誰も信じなかったでしょうね。
「ああ、あのへたくそな字は」
ジョジョリが口を滑らせている。
「何だと?そんなことより、さっさと仕事終わらせようぜ、あいつら街から出ていっちまうだろ!」
「え?出て行っては困るのですか?」
クラノルの問いにルクマールが答えた。
「あ?だって、ユーキを見失っちゃうだろ」
へ?
見失う?
「俺、ユーキの奴隷にしてもらうのが夢なんだ!」
は?
ユーキの奴隷に、なりたい?
「あの子、なんなのぉぉぉぉっ!」
フィーネさんの絶叫がこだました。
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