第76話

「見た目も能力も、今とほぼ変わらない状態のときに、売りに出しましたから」

 はい?

 見た目は、すんごくかわいいです。耳がぴくぴく動くのも、尻尾が嬉しそうに揺れるのも、もう、めちゃくちゃかわいいです!

 親バカだとか何だとか言われようとも、これは譲れません。

 え?世間的にはイケメンって方に価値があるんですか?知りません。

 世間的には肉体美にも価値があるんですか?関係ありません。

 バーヌの魅力はそんな容姿的なところにはないんですっ。

 能力と言うと、嬉しそうに尻尾を振る能力ですか?もふもふしたときの柔らかな髪と、温かい耳の感触ですか?

 あ、違いますか。冒険者として有能な戦闘能力の話ですか。……確かに、強いのってすごいですが、それよりも、癒し能力のほうがすごいと、はい、わかりました。私の感覚は、とっても親バカなのですね。

 うちの子すごい。っていう親バカ感覚……。

「高級奴隷どころか、超高級奴隷ですよ」

 ニコニコと相変わらず笑顔のバーヌ。

 自分が価値が高いことに誇りを持っているのでしょうか。

 でも、笑いごとではありません。

「もしかして……今回の報奨金程度じゃ、とてもじゃないけれど足りないような額ってこと?」

「報奨金がいくら出るのかは知りませんが、そうですねぇ、普通の人が1年暮らせるお金の100年分くらいの金額です」

 ひゃ、ひゃ、ひゃ……。

「百年分っ?!」

 1年暮らせるお金ってどれくらいでしょう。

 日本で、節約生活して200万として、その100年分……に、二億。

 もう少し贅沢な暮らしをしていたとしたら、5億ぐらい?

 お、億単位のお金……。

 ニコニコと嬉しそうなバーヌ。

「ごめんなさい、バーヌ。頑張ってお金貯めても、すぐには無理かもしれません……」

 どうしよう。

 どうしたら、たくさんお金が稼げるのでしょう。

「ねぇ、バーヌ、ごめんね、って、私は申し訳なくて、申し訳なくて謝っているのに、なんでバーヌはそんなに嬉しそうな顔してるの?もうっ。また、3回回ってワンって言わせるからね!」

 バーヌが素直にくるくると回り出そうとしたので、ぎゅっと抱き着いて動きを止める。

「あー、やらなくていいっ、うわぁ」

 バーヌが私を抱き上げ、ぎゅっとしたままくるくると3回回りました。

「ワンッ」

 ワンじゃなぁーい!

 けど、バーヌのしっぽがとっても楽しそうにぶんぶん振られてるし、私の目の前にはバーヌの耳がぴくぴくしてるし、ぐ、ぐぐぐ。ワンって嬉しそうな声も、全部、かわいいっ!


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