第50話
「問題ない、ない。っていうか、レバー、うまいな。内臓は捨てる発想しかなかったが……」
「病気も治してくれたし、捨てるのなんて本当に勿体ないわね」
「あー、でも、レバーはほかの肉に比べて足が速い……腐りやすいんで、流通させるのはちょっとむつかしいかもしれないです。こうしてすぐに使うなら問題ないんですけど……」
冷蔵庫ないし、見た目では分かりにくいし。特に生で食べることを考えると本当に鮮度が命だ。っていうか、生じゃないと効果がないのかな?
「ユーキは物知りね。分かったわ。信用置ける人から、新鮮なものだけを仕入れて調理しないと駄目なのね。で、この美味しいもの、作り方教えてもらってもいいかしら?」
「ええ、もちろんです。一緒に下ごしらえしましょう」
順調に下ごしらえをしつつ、販売方法などについても確認する。それから、メニューの修正。フライの値段設定とか、いろいろ。
空がオレンジ色に染まりだした。そろそろ販売開始の時間かな。
看板を設置して、呼び込みを開始しようとしたその時。
ガツンっと、看板を蹴り倒された。
「おい、お前ら!誰に許可を得てここで商売をしてるんだ!」
ガラの悪そうな男が3人現れた。
うご。
「勝手されると困るんだよ。ルールってもんがあるからなぁ」
これ、ショバ代よこせとかいう系なあれでしょうか。
ど、どうしよう。
「おい、お前、誰に許可を取ればこんなことができるんだ?」
ガラの悪そうな3人組の後ろに、ルクマールさんが立った。
「はぁ、俺様に決まってるだろ!このあたりの場所は俺たちバードウイングの場所って……」
看板を蹴り倒した男が振り返る。
ああ、花見の場所取りみたいなもの?野営とかするために場所を取ってあったのかな?目印みたいな物はなかったよね……?
「バードウイング?へー。そうか。しっかり覚えたよ。俺の作った看板を蹴り倒した男の所属するパーティー名」
ルクマールさんが、倒れた看板を立て直した。
「え?ル、ル、ルクマールさんが、作った?」
男が、明らかにうろたえだした。
「ここに、俺のサイン入ってるのが見えない?」
そうなんだ。文字が読めないから何が書いてあるのか分からなかったけど、板の下の方にナイフでちょっと何か書いてある。
ルクマールさんが、逃げようとした他の二人の襟首をつかんで、看板の文字に顔を近づけた。
「文字読めない?ほら、ここ、俺が作った看板。な?で、何?ここで商売するのに誰の許可が必要だったんだっけ?」
「ひー、す、すいません、あの、そのっ、まさか、灼熊の店だとは……」
ん?何か勘違いしてるよ。この店はダタズさんの店なんだけど。
というか、灼熊って、何?
「何のもめごとかしら?ダンジョンやその周辺の管理は、私たちギルドの管轄です。問題があれば私たちが処理しますけれど」
騒ぎを聞きつけたのか、出張買取所のフィーネさんが来た。ギルドからの出張だったんですね。商店が買い取りをしてるんじゃなくて、ギルドだったんですね。
「いえ、あの……」
看板を蹴った男がうろたえているけれど、ルクマールさんは気にせずにフィーネさんに尋ねた。
「なぁ、店出すのに許可って必要か?こいつら、ここは俺らの場所だからとか言ってたが?」
「いいえ。許可は必要ありません。問題があるような店であれば出て行ってもらうようには言いますが、美味しい食事を出す店で値段も適正だと調査済みなので何も問題ありません……むしろ、問題なのは……」
フィーネさんが男たちを見た。
「ひぃー、すいません、その、あの、俺たち、ずっとこのあたりで野営してたんで、なんか場所を取られたような気持ちになって……」
「わ、悪気は、悪気はなかったんです」
男たちが後ずさる。
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