第47話
「じゃぁ、ちょっとほかの人にも感想聞いてみる。評判が良ければメニューに加えよう」
と、いくつか揚げたフライを皿に乗せて知っている顔を探す。さすがに全く知らない人に食べてみてと言うのははばかられる。
まずは出張買取所に足を運んでみる。
「お仕事お疲れ様です」
と、手の空いている人に声をかける。
「ああ、坊主、どうしたんだ?」
えっと、なんて名前だっけ、フィーネさんの好きな人だよね。名前忘れちゃった。
「あっちで屋台を手伝っているんだけど、これ、僕の作った新作の料理なんだけど、メニューに載せようかどうしようか相談に乗ってほしいんだ。食べて感想を聞かせてください」
ぺこりと小さくお辞儀をする。
「へー、いい匂いがするね。いいよ、食べて感想言えばいいんだね」
あ、思い出した。ジョジョリさんだ。そうそう。ジョジョリさんがパクリと一口。
「うまいな、これ!酒に合いそうな味だよ」
「ちょっとジョジョリ仕事中に何を食べて」
あ、しまった。そうか。仕事中だもんね。
「ごめんなさ。あの、僕が頼んだんです。僕の作った料理なんですけど、屋台のメニューに加えてもいいかどうか相談に乗ってほしいって……」
「屋台?昼間に肉を売っていたところね。君はそこで働いていたのね」
「はい、街で食堂を営んでいるダタズさんの店の屋台です。手伝いをしています」
フィーネさんにきちんと説明をしなければと話をしていると、後ろで満足そうにため息をつくジョジョリさん。
「坊主、うまかった。これはぜひメニューに入れるべきだ。いくらにするつもりだ?買いに行くよ!」
「いくら……えーっと」
値段まで考えていなかった。もともと捨てられる部位であるレバーが材料だし。ニンニクってどれくらいの価格なのかな?油も。原価はダタズさんに聞かないと分からないから値段もつけられない。
「私も食べてみていいかしら?」
「はい、もちろん」
フィーネさんがレバーのフライを食べる。
「あ、そうだ。これ、えーっと、貧血のときにいい材料が使ってあるんです」
レバーだし。
「おいしぃ。貧血にいいの?これ、本当に君が作ったの?初めて食べるわ。これは、屋台で出すような料理じゃないでしょう?小銀貨2~3枚の味だと思うわ」
フライが1枚2~3千円?いやいや、それはないよね。スーパーの総菜売り場だと、100円~200円といったところだし、とんかつ屋でも、セットじゃなくてとんかつだけなら500円~800円ってところじゃないかなぁ?
肉が銅貨2枚だから、少し衣つけたりといった手間がかかるけれど、さすがにそこまで高く売れるとも思わない。
「ありがとうございます。自信がつきました。メニューに入れる方向で検討します」
「後で買いに行くから!」
出張買取所を後にすると、フィーネさんから声がかかる。
「はい、お待ちしております!」
買い取り待ちの人がいたので邪魔にならないように簡単に手を振って去ります。
ふむふむ、評判は上々。みんなが食べないっていうレバーだし、日本じゃぁ嫌いな人も多い食材だからちょっと心配だったけれど。
もう少し誰かに食べてもらって、普通に売るか決めようかな。
それとも、レバーだし嫌いな人がいるかもしれないから、別の料理に小さいサイズのものをおまけにつけて味見してもらうか……。
どっちがいいかなぁ。うーん、悩む。
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