第11話
「まぁ、うん、鮮度が命だからね。買いだめできないから、週に1回ペースで手に入ると嬉しいが。その、小銀貨3枚の仕事じゃ、わりに合わないだろう?」
おじさんが申し訳なさそうな顔をします。
「他の依頼と一緒のついでに採取してもらえるかと思ってギルドに行ったんだけど……」
うんと、頷く。
「おじさんはポーションを作る人でしょう?コールアの実やニリリ草を使って作ることもありますか?」
「へ?いや、ないけど」
「じゃぁ、レシピを教えますから試しに作ってみてください。それでうまい具合に作れるようなら、コールアの実を10粒小銀貨3枚、ニリリ草の葉も10枚で小銀貨3枚で買ってくれませんか?」
おじさんが驚いた顔をしました。
「待て、待て、レシピを教えるなんてそんなこと、それぞれの調合レシピはみな秘密にしているはずで……」
「あ、うん。おじさんは信用できそうですし、その、おじさんは秘密にしてください。あ、レシピだけじゃなくて僕から教えられたということも内緒にしてください。えーっと、孤児院を助けたいんです」
ここまでは本当の話。
「その、同じように孤児院を助けたいという人が、レシピをお金に換えられないかと教えてくれました。それで、えっと、おじさんも協力してくれませんか?」
これは嘘。
本当と嘘を織り交ぜると、人は信用すると言います。
「わかった……」
おじさんを孤児院の裏庭に連れいきました。
「ここで、栽培してるんです。ですから、その栽培したものを買ってもらえるとうれしいです。見ての通り、小銀貨3枚でもとても助かりますから」
小銀貨3枚でパンが20~30個は買える。育ち盛りの子供たちにお代わりができるくらいのお金にはなる。
おじさんが大きく頷いた。
「これはいい。新鮮な葉が必要な時に必要な分手に入るのはありがたい。10枚で小銀貨3枚が精いっぱいだが、毎週お願いしよう。それから、教えてもらったニリリ草とコールアのレシピも試してみて、うまく行ったら3種類とも頼むよ」
と、早速おじさんは、銅貨と引き換えに葉っぱを持って帰っていきました。
「あ……ご寄付をありがとうございます」
お金を受け取ったシスターが唖然としています。
「寄付じゃないですよ、これは取引です。彼らの稼ぎです」
子供たちを手招きして、目線を合わせて話をします。
「いいですか、ニリリ草と、コールアと、スージマ草、ちゃんと育てるんですよ。そうしたら、さっきのおじさんが毎週買いに来てくれます」
週に小銀貨9枚……全然大した金額じゃないけれど……。
おじさんはいい人でした。もし孤児院の子どもたちが重い病気になったらポーションで助けてくれるかもしれません。おじさんのポーションが評判になって忙しくなったら、お手伝いに子供たちの誰かを雇ってくれるようになるかもしれません。
何かが何かにつながるかもしれません……そんな手助けしかできないですけれど。
他に何か私にできることはないでしょうか……。
そうだ。
ポーション屋とのつながりもあれば何か役に立つかもしれないですね。
ジョーンさん、確か4番通りの6番宿に泊まっているって言っていましたね?
ニリリ草とスージマ草とコールアの実を必要としているポーション製作者が他にいるかもしれません。聞いてみましょう。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます