第5話

 にこっと笑う。

「これを買って家に帰れば悩みは解決するでしょう?」

 手を出すと、ルクマールさんが満面の笑みを見せました。ぐりぐりぐりっと、頭をなでられます。

 ちょっと、ちょっと、力加減、痛い痛い、これは褒めてるっていうよりも、体罰レベルですよっ。

「ありがとうな坊主!ほれ、約束の金だ、とっておけ」

 手には銀貨2枚が乗せられた。

「え?1枚多いですよ?」

「1枚は俺の悩みを解決してくれた分、それからもう1枚は母ちゃんの料理を再び食べられる感謝の気持ちだ!」

 うそ、いいのでしょうか?

 ルクマールさんの顔は本当に嬉しそうです。お母さんの料理が食べられなかったのがそんなにショックだったのでしょうか……。

 よほど美味しいとか?まぁ、何はともあれ、頭ぐりぐりの件はこれでチャラです。

 えへへ。ありがとうございます。ルクマールさん。

「店主、ポーションを少し分けてくれ。今の分も俺が払うよ、これで足りるかい?」

 ウイールズさんが小銀貨をいくつか渡している。

 二日酔いしか治らないような効果極小ポーションは価値は高くても数百円。銅貨何枚かのはずだ。小銀貨何枚かといえば何千円か。

「いやいや、こんな価値は……」

「何を言っている、すごい価値だぞ。俺の友達にも水虫で悩んでるやつは多いからな。ここのポーションを紹介しとくよ。奥方には、たくさん作ってくれるように頼んどくといい」

 店主が頭を下げました。

「そのお金で、2番通りのポーション屋のジェスさんが作ってる効果小のポーションを買って飲むといいですよ。腰痛が楽になるはずです」

 ついでなので、店主に耳打ちします。

「え?なぜ、腰痛のことを……」

「本当は二日酔いなんかじゃなくて、奥さんはおじさんの腰が少しでも楽になるようにってそれ作ってるんですよね。楽になったよって嘘ついてるのが心苦しいんでしょ?今度から嘘つかなくても良くなりますね」

 店主がポカーンとしている。

 店主の腰痛のことは、レイニーナ印のポーションについて調べていたらレイニーナさんのブログに出てきたから知ったんです。お互いを思いあう良い夫婦みたいです。いいですね。うらやましいです。

「ルクマールさんもおじさんもありがとう!これで、次の街に移動できます!」

「いや、こちらこそありがとうよ!」

「気を付けて行けよ!」

 大きく手を振って、乗合馬車に向かって走り出します。

「またな!」

 ん?またな?

 ルクマールさんの言葉に一瞬振り返ります。もう、この町には帰って来ませんよ?

 ああ、それにしてもとっても運がいいです。

 月に一度の乗合馬車はちょうど今日のお昼に出るんです。

 ルクマールさんが銀貨2枚くれたおかげでお金が貯まりました!間に合いました!



 異世界転移に巻き込まれたのは私の方なのか妹の方なのか。

 突然現れた光に私は妹とともに包まれました。

「【鑑定】」

 自分の手を見て鑑定します。

【鑑定結果

 津山優紀

 続きはWEBで】

 検索窓にはすでに津山優紀と入力されています。検索ボタンを押します。

 津山優紀、妹と一緒に日本から異世界に転移。

 離れ離れになった妹を探す旅をしている。

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