#5
顔を隠し、黒い外套に身を包んだ一団がレネットを連れて裏路地を走っていくのを物陰から確認し、シュガルは後ろを振り返った。
「おてんば姫は予定通り連れて行かれた」
「ファルーズ離宮の方角ですね」
仲間の一人が夜の帳が降りる空を見上げる。すぐに、明かりがなくては足元がおぼつかなくなるだろう。
「助けようと思えばできますが……」
「確かに心配だが、俺たちには別の仕事があるからな。邸宅の連中は?」
シュガルが訊ねると、一番近くにいたものが懐から時計を取り出し、頷いた。
「手筈通りならすでに制圧している頃だと思います」
「よし。合流して、大将を迎えにいくぞ」
その場にいた全員が静かに頷き、闇夜に紛れて走り出す。シュガルもまた、久々の高揚に胸を躍らせていた。
また、大将と一緒に戦える——どのような形であれ、それがもっともシュガルの心を打った。
『愛する女と添い遂げる』、そのために全てを清算しに来た、人間らしい理由で戻ってきた彼のために、この剣を振るう。これ以上に喜ばしいことはないだろう。
「隊長、楽しそうですね」
「そりゃあな。さてお前ら、俺たちの仕事はごくごく単純なものだが、俺としては最後まで大将に付き合いたいと思う。異論は?」
「なし!」
皆が口を揃える。アルレクスを失って腐っていた者も戻ってきていた。
長い夜が始まる。空に、一番星が輝いていた。
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