第7話
そろそろ下校時間。
チャイムが鳴る頃に外を見ると既に真っ暗になっていた。
「あ、もう下校時間ですね」
「結局終わらなかった……」
「まぁまぁ、明日もありますよ」
どうせ手伝ってくれない癖にな。
心の中で毒づいていると、部屋のドアがガラッと開く。
「お、加賀見。ちょうどよかった。帰る前に頼みたいことがあるんだがいいか?」
「伏見先生。お疲れ様でした~!」
「おう、お疲れ」
シレッと先生の横を通っていなくなる柳沢。逃げやがった。
「なんですか?伏見先生」
「この間、企画で出してたクリスマス会の話で」
伏見先生の頼みごとを聞き、俺もようやく帰路へと着く。
肌寒くなった暗い夜の中、一人で俺は歩く。
街灯に照らされる僅かな光を頼りに坂を下り、国道の歩道を歩き続け、電車に乗る。
あったかい電車の中、少ししか乗らないため吊革に掴まって立つ。すると、隣に見覚えのある女子高生が満面の笑みを浮かべながら近づいてきた。
「おやぁ?奇遇ですね」
「逃げたのに同じ電車か」
「逃げたわけじゃないです。戦略的撤退です」
「それを逃げたというんだ」
にこやかにしているのが腹立つ。
「彼氏と帰らないのか?」
「今は喧嘩中なので。向こうは帰宅部で既に帰宅済みですし」
「浮気と捉えられないのか?」
「アハハ。そういう心配はないですよ」
幸せそうで何よりだ。
電車の中だからか、先ほどよりも口数が少ない。あんまり話すことなく、俺の家の最寄り駅に着いてしまった。
「じゃあな。また明日」
「はい♪また明日」
なんつーか、あの笑顔にいつもやられてる気がする。
輝かしい笑顔で手を振る後輩にちょっとドキッとしつつ、俺も笑顔で手を振り返す。
仲の良いカップルにでも見られたのだろうか。電車の中にいた人たちが俺の方を見ながら微笑んでいた。
だが、そんなものは妄想に過ぎない。現実は付き合っていないし、相手は彼氏持ちだ。
ホームの階段を降り、定期を改札機に押し当てて外へと出る。
歩きながら彼女との事を思い返す。
弟たちの友人という事で柳沢と知り合い、同じ生徒会に所属するようになって話すきっかけが増えた。
第一印象の時から明るくて気さくで話しやすい奴。話していくうちに他の良いところも見えてきて、段々と惹かれていったことは否定できない。
ただそこで彼氏彼女の関係になりたかったかと問われると、素直に頷けない自分もいる。
向こうも俺に対して特別な感情を抱いているようにも見えなかったし……。
チクッ……。
そんな風に考えていると同時に冷たい風がビュオォッと吹いた。ちょっと心臓のあたりに痛みが走ったのは今の風のせいだろう。
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