第6話
「先輩って大学進学どこに行くんですか?」
「適当」
「うっわ」
なんでそんなゴミを見るような目で俺を見るんだ。
「将来の事ちゃんと考えてます?適当に進学しても意味ないんですよ?」
「そういう柳沢はちゃんと考えてるんだな?」
「ええ。可愛いアタシはアナウンサーを目指して頑張る予定です」
「安直だな」
実際に可愛いのがさらに腹立つ。
「なんとでも言ってください。数年後には朝の顔になって毎朝先輩のテレビの中に登場してやりますよ」
「それは楽しみだな」
何となく朝ご飯を食べながら成長した後輩がテレビに映っている姿を想像する。なんかいいな……と思いながら自然と笑っていた。
反応が返ってこないので柳沢を見ると何故か顔を真っ赤にして仰け反っていた。
え、なにその反応。
「話題を振っといてなんで照れてるんだ?」
「先輩は自分の言葉の破壊力を思い知っててください」
どうやって思い知れと言うのか……。
その後、彼女のクールダウンのため無言が続く。俺は作業に戻り、柳沢は生徒会室から一度退室した。
一人で黙々と作業を続けていると五分くらい経ってから彼女が戻ってくる。
「ふぅ……焦りました」
「クールダウンできたか?」
「おかげさまで」
なんでドヤ顔出来てるんだろうコイツ。
「話を戻しましょう」
「十分くらい前か?」
「うっさい。先輩って大学どこ受けるんですか?」
「決めてない」
「もう二年の冬ですよ?もうちょっとでクリパからのお年玉ですよ?」
「年末の大掃除が待ってるぞ」
「余計なこと言わないでください。え?本当に決めてないんですか?」
「ああ」
「塾は?」
「お前、俺の家の事情も知ってるだろ」
「そりゃあ、マユちんから聞いてますけど」
塾に通う金なんてない。だから、大学も奨学金のある所を選ぶ予定だし。
「え、塾に行かずに大学って受かるんですか?」
「同じトコに住んでた龍姫(たつき)も優護(ゆうご)も愛麗(あいり)も塾行ってないけど大学行ったぞ」
「え、頭良い人ばっか集まってるんですか?ってか、その人たち会った事ありますけど何食べたらあんな風になるんですか?」
「どういう意味だ?」
「いやいやいや、タツキさんもアイリさんもめちゃくちゃ美人じゃないですか!文化祭の時にマユちんに紹介されて思わず背筋伸びましたもん!」
長年一緒に居るからかあんまり気にしたことないんだよな。
「あ」
そこで柳沢は何かに気づいたように声を出し、ニマニマと笑い出した。
「もしかして、タツキさんのこと好きなんですか?」
「はぁ?」
「さっき言ってた好みの見た目にタツキさんそっくりじゃないですか」
「冗談でもやめてくれ。血の繋がり無くても姉弟で家族なんだ。そういう感情は全く湧かない」
「それ言ったら島本が……」
「アイツはいいんだよ。俺はって話だけだ」
宏太の場合、出会い頭からアイツらに惚れてて、惚れられてたからな。
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