第9話

 次の仕事。

 ひとまずは、広い街の役所の駐車場で『仕事仲間』と待ち合わせをする番だった。

 一応は下手にと、指定時刻の三〇分も前に三人は待機して、他の連中は一〇分も遅れて来た。

 いかにもジャンク屋、といった感じの油圧式アームショベルを持った中型車まで三両あった。

 基本的に装甲板が強引に張られていて武装、小口径の軽機関銃がいくつか外からでも見える。

 揃った面子で、協議が始まる。

 ジャンたちを入れて二十数名ほどの人数だ。

「治安維持活動ってやつさ」

 ヘイ・ホー、と、男は両拳をボクシングのように突き出し、頭が悪そうな態度でそう言った。

 入れ墨入りの禿頭とくとうに、サングラス。

 見た目ほど馬鹿ではないと信じたい。馬鹿に、仕事は務まらない。

 それは、官庁直々の依頼だった。

 その実、内務省のお偉いさんだったナークの父のダルリ氏が仕事を回してくれたのかもしれない、というのは希望的に過ぎるか。

 仕事の内容は、この近辺に居座る武装強盗団の一掃。

 特殊な条件として、違法なジャンク品の回収を黙認する、とのことだった。

「ナークちゃん、かな?

 座標は持っているはずだよな? 俺達とも組もうぜ!!

 きっとボロ儲けできる」

 拳を突き出していた男がそういう。よく見なくても右腕が義手。一部がサイボーグの男だ。

 ナークはどうする? というように、仲間の男連中二人の顔を見た。 

「ボロ儲けしたぶんの三割。

 ジャンク品の収益を寄越すなら、いいぜ」

 カルーノがそう言うと、二〇名ほどの男たちは相当に不愉快そうな顔をする。

「そもそも、武装強盗組織の壊滅が目的だろう。

 なぜショベルカーなんかを持ってくるんだ」

 ジャンが本来の目的に戻そうとする。

「ああ?

 この機関銃が目に見えねえのかよ。

 五、五六ミリと三〇口径(七、六二ミリ)の機関銃!」

 禿頭のサイボーグは、立てた親指でショベルカーに無理やり接続され、おそらくは遠隔操縦もできるであろう軽機関銃を指した。

 似たような車両がさらに両脇に二両あり、さらに周辺に、武装した軽装甲車両が並んでいる。

「一割だ。

 ジャンクがある座標が確かならな」

 口ぶりからして、男がこの場の代表らしい。

「二割だ。

 そもそも武装強盗団を探し回る必要があるぞ」

「関係ねえ。ジャンク品の回収だけで、十分金儲けができる」

「市役所、官庁を敵に回してまで、目先の利益が欲しいのか?」

 男は両手を広げて、

「ふん、別にお前らと組まないと金が手に入らないわけじゃねえ。

 嫌ならお前ら、三人でジャンク品回収でもするんだな。

 おい行くぞ、てめーら」

 交渉は決裂。男たちは車に乗って、すぐにでも移動する。

 排気ガスの匂いが十分に去ってから、ナークが口を開く。

「良かったの?」

「ガラが悪そうだったからな。あまり好きな手合じゃない」

 カルーノの見かけもあまり人のことは言えないが、とりあえずは態度の話だ。

「いつ、首を掻かれるかわからないような仕事は御免被るね。

 日付をずらして行動しよう」

 結果論だが、ジャン(たち)のこの判断で、彼彼女らは命拾いをすることになる。

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