第7話
ダルリ氏は危険人物として連行する、という
あとは、精神安定剤の投与も。
ナークはナークで『あなた達の話を聞きたいわ』と意外な申し出をしてきた。
軍隊にいるだけではわからない情報が欲しい、とのことだった。
二人が武装解除をし、人払いをした大型テントでジャンとカルーノ、ナークが話し合い、『交渉』をすることになった。
電子上の名刺交換をし終えてから、話に移る。
「私はこの戦場を愛しているの。
さらに言うとここには私を愛してくれる人たちがたくさんいるわ」
何人かの男の名前を挙げていく、ナーク。
「えーと、非処女?」
「恋が多いのよ。
ほら、私って、惚れっぽいみたいだし」
はにかんでいるが、ビッ……チである。
「一度に二人以上の男と寝たことは?」
さらにカルーノが(どうでもいい)追求をした。
「その辺にしとけ」
と、ジャンは無心で応対した。
「ふんだ!
こうすると階級が上がりやすいのよ!」
『うわぁ……』
同じ声を上げて、二人の微妙な顔。
優秀な軍人の皮を被っているがその実、
呆れる。
「それで、あなた達は?
なんでも屋さん? もう軍は出ているの?」
ジャンたちの国では、一六歳~二五歳までのいずれかの期間に、一年間の軍事教練が法律で義務付けられている。
カルーノが身の上話をしていく。
「俺とジャンは幼馴染というか、悪友でな。
悪いことも良いことも、するときはいつも一緒だった。
まあ、後者はほとんどなかったが。
一年前ちょっとに中学卒業と同時に軍事教練を受けて今に至る」
「へえ……、私と同じB級国民かあ。
一年でちゃんと稼いでいるのね」
タフ・モバイルで、渡した電子上の名刺を眺めているのだろう。
大まかの身の上は察知されたのだろう
「カツカツだよ。
基礎所得保障も受け取れないし、わずかしか貯金できていない」
ジャンが嘆息混じりにそう言った。
「ねえ。
私を連れて行く気はない?」
『は?』
ジャンとカルーノが奇声めいた声を上げる。
「これでも当分の砲兵部隊や敵地上部隊の動きがわかるし、ジャンク品の回収をしたいのなら役に立つわ」
そう言えば、名刺には『敵部隊の装備回収』とも書いていたのだった。
「この仕事は荒事だ。
あれだけ君の父親が、砲兵部隊勤務を嫌がっていたんだぞ?
そう簡単に通るはずがない」
「そもそも、二人でギリギリなのに、三人目。
しかも女は雇いづらい」
カルーノの言葉に、抜け落ちている発想をジャンが追加する。
「試用期間で何ヶ月かはどう?
貯金はあるし、タダ働きでも構わないわ」
ジャンとカルーノは顔を見合わせた。
「うーん。
父親さんと相談だな」
数ヶ月経って使えないか、その前に
「やった!
決まりぃ!」
その後すぐに向かった医務室代わりのテントで、ダルリ氏は左腕に包帯を巻かれていた。
安定剤も効いているのか、なにやらぼんやりとした面持ちだ。
「私、軍を辞めることにしたわ」
ナークの言葉に、
「本当か!」
ダルリ氏は喜んだ。
「ジャンとカルーノに付いていくことに決めたの」
「そうかそうか。
それならいい……。
ちょっとまて、今なんて?」
「除隊手続きはもう電子書面で済ませたそうです」
「幸い、担当官とも『仲が良い』ようなので、違約金もなし。残念ながら退役金も出ませんが。
まあ、話は車の中で」
カルーノとジャンが冷徹にそう言い、呆然とするダルリ氏を後部座席に放り込み、娘のナークも飛び乗った。
「勝手にしろ」というのがダルリ氏の出した結論だった。
あまり危険な仕事ではないということを念押しして説明していくうちで、ダルリ氏の心も折れたようだった。
軍事の
「あと、依頼達成ということで、ちゃんと五〇万クレジット、及び経費をいただきます」
カルーノがそう言い、ナークが目を見開いた。
「私を取り返すだけなのに、そんな高いお金を支払ったの?」
残る三人は無言。
ナークも一旦黙り、話題を変える。
「ジャン、カルーノ。
次の仕事とかはあるの?」
「まずは君の衣替えからだな。
君のも二二口径の拳銃だろう?」
ジャンがそっけなく言った。
「砲兵部隊に来てから、小火器なんて使ったことがないわ。
士官学校時代の方がまだ撃っていたくらいね」
「ナークの武器は経費扱いで良いのか?」
カルーノがジャンに問う。
ナークが助手席のジャンを見つめる。おそらくはジャンが会計担当であることに、なんとなく気がついたかもしれない。
ジャンが後ろのナークを軽く見て、「まあ一般的な装備なら問題ない」と言った。
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