第3話

 近場のコンビニでサンドイッチやコーヒーを買い、二人で食事。一息ついてから、次の目的地へと進む。

 武器の売買だ。

「今回の釣果ちょうかは?」

 ジャンク部品の買取などを行っている『武器商店のオヤジ』――中年男性のルーカスが、内陸国だというのにそんな口ぶりで聞いてくる。

「まずは戦車の装甲の破片。

 買い取れるか?」

 カルーノが堂々と言う。ジャンク屋ですと言っているようなものだが、とがめる者は居やしない。独裁圧政の隣国とは違うのだ。

「査定に時間がかかるが、タグを付けて預かろう。

 例の戦場跡に行ったのか? あそこは治安が悪いし、しょっちゅう戦線がぶり返して砲弾が降るぞ?」

「分かっているが、B級国民を維持したくてね」

 ジャンがそう言った。

 ジャンたちの住む国は、全国民に対して基礎所得保障が行われている、半分くらいは共産主義の国だ。

 より稼ぐものには、かなりの税金が課せられる。

 国民には下からC級、B級、A級の等級があり。納税額などに応じてランク付けされる。

 例外は超級という最上級もあるが、雲の上なので見えていないことにしていた。

「納税者か。

 生きるだけなら生きていける時勢に、ご苦労なことだ」

「オヤジだって、B級だろ?」

「働いている間だけさ」

 オヤジは寂しそうに言った。

 それを振り払うように、ジャンが手に持っていた弾丸の装填されていない軽機関銃を置いた。

 次いで、弾薬入りの箱型弾倉も置かれる。

 入れ違いに、カルーノが残りの拳銃やナイフなどを取りに車へと戻る。

「ふむ、量産品だが良い状態だ」

 すぐに査定に移るオヤジことルーカス。

「これなら一〇万クレジット以上で買い取れるな。

 さっきの装甲板はガラクタだが、悪いようにはしない」

「まあ、そりゃありがたい」

 ジャンの内心では高額の査定に驚いていたが、足元を見られないように意識して表情を抑える。

 さらにカルーノがひびの入った『生き残り』の拳銃や、綺麗なサバイバルナイフを並べていく。

「運のいい奴らだ。

 売るだけじゃなくて、買っていかないか?

 特殊拳銃と拡張キットがおすすめだ」

「素直に一番高そうなのを勧めてくるなよ」

 カルーノがはっきりと言う。

 ジャンは相棒のハッキリとした口ぶりは嫌いではなかったし、同時にあこがれでもあった。

 ジャンは、何かと考えてからものを言う性格だが、とっさの思考の瞬発力ではカルーノに遠く及ばない。

「弾種を変えずに、拳銃や狙撃銃、バトルライフルにも変わる仕組みか」

「さっすがお目が高い!!

 すぐにどういう武器かわかるようで、ジャンどの」

 まだ「買う」とは一言も言っていないのにも関わらず、ルーカスのこの態度だ。

 カルーノがいるので、強引に商品を押し付けられる可能性はないと断言できるが、商売道具にはそうである以上に興味のあるジャンだった。

「どういう武器だ?

 ほとんど値札しか見ていなかった」

 ジャンは、カルーノの疑問に答えていくことにする。

「衝撃吸収に優れた新素材の拳銃だな。

 始めから狙撃用のライフル弾を使うやつ。

 拳銃状態でも射程は普通の拳銃の倍以上、一〇〇メートル以上はあるだろうね」

「カタログスペックは二〇〇メートル」

 ルーカスのオヤジがそう補足した。

「二〇〇メートル」

 ジャンが補足を確認するように語気を強めて続けていく。

「まあ、反動も普通の強装薬弾マグナムより小さいだろうし、それでいて七、六二ミリ弾を撃てる。

 拡張キットは銃身を取り替えることで、セミオートマチックライフルや連射ができるバトルライフルに変わる仕組み。

 狙撃用スコープやら、銃身下部に取り付けるオプションもけっこうある。

 これだけで一財産だ」

 その価格を想像して、ため息を吐くジャン。

「では、」

 手もみをするルーカスに、

「聞くだけ聞いた。

 持ち込んだ全部の査定をよろしく」

「よろしく」

 カルーノとジャンが冷たく言う。

 ルーカスは苦笑しながら、

「冷たい奴らだ」

 そう悪態を吐いた。

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