第2話
「ゴホッ、ゴホッ」
まただ……。
また、『咳』が出始めた。
僕は、一旦、原稿用紙を休ませる。
何度医師の診察を受けても、原因が分からない『咳』。
それは、僕が『時代ホラー作品』を書くようになってから現れるようになった。
現在書いているのは、時代ホラー文学賞に応募予定の『剣鬼』という作品だ。
舞台は幕末。
主人公は佐幕派の志士、銑司。
銑司はある日、剣に巣食う鬼〈剣鬼〉と契約を結ぶ。
その契約とは、『〈剣鬼〉が無敵の剣の腕を銑司に与える代わりに、人を斬る度に銑司自身を喰らってゆく』というものだった。
契約を結んだ銑治は、人を斬り続け、〈剣鬼〉に己を喰われ続けてゆく。
ラストも、自分の中で朧げながら浮かんでいる。
銑司の想い人が、涙ながらに彼を止めようとする。
しかし、自らの殆どを鬼に支配された銑司は、彼女を斬る。
その血飛沫を見た瞬間、銑司は自分の全てを『鬼』に支配され、深い闇の中へ消えてゆく、というものだ。
しかし、この作品を書くにつれ……銑司が人を斬る毎に、そして悲劇のラストに近づく毎に、僕の『咳』は酷くなってゆく。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます