第7話

「ここで大丈夫です。ありがとうございます。右折野郎」


「おう。がんばれよ、告白」


 同僚が送ってくれた。同僚は恋人がいるので、どうやって告白したのかとか、色々訊いた。全然参考にならなかった。SNSで出会ったとか、今どきすぎる。ついていけない。そもそもSNSで仲良くなった相手に会おうと思わないよ。

 右折野郎の車はめちゃくちゃ速いけど、かたくなに右折しかしなかった。ここから先は隘路あいろで左折必須なので、降りる。


 走った。


 なんとか終わったけど、二時間もかかってしまった。これじゃあ、さすがに彼女もお風呂から上がってしまう。


 ポケットを探る。


「あ」


 しまった。

 指輪。

 指輪の入った箱をどこかに落とした。


 どうしよう。指輪がないと告白が。なんてこった。


 来た道を戻るのか。それとも、告白は一旦あきらめるか。


「うう」


 どっち選んでもしんどい二択だな。まずい。


 クラクションの音。


「おい」


 何かが飛んでくる。慌ててキャッチした。指輪の箱。


「忘れもんだ。ちゃんとしっかり持っときな。告白がうまくいくように祈ってるぞお」


「ありがとうございます。右折野郎」


 車。テールランプが5回。


「古いなあ」


 車に頭を下げる。助かった。そうか、車に乗ったときにポケットから落ちたのか。

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