第6話

「何も不具合はないって言ったじゃないですか」


『ごめんほんとに。最後の最後でリンクに支障が出た。エレクトリッカーが繋ぎ止めてるけど、いつちぎれるか分からないんだよ』


「俺ごはん作ってる最中だったってのに」


 現場まで走りながら、必死に頭を整理する。

 通信規格と合わせた、大規模な地域流通網。これが成立すれば、街中の流通が劇的に変わる。スーパーの野菜の鮮度が、凄まじいことになる。飯屋の料理に使われる具材が、新鮮すぎるほど新鮮になる。

 調整はほとんど最終局面で、通信規格と合体させるだけだった。


「くそっ」


 ようやく、彼女の家に来れたのに。この前は朝方あさがたで、彼女が寝ていたからごはんだけ作ってまた仕事場に戻ったのに。今日こそ彼女に告白しようと思ったのに。


「ああもう」


 頭が混乱してくる。落ち着け俺。ここで俺が踏ん張って、しっかり終わらせるんだ。


「すぐに終わらせる」


 自分に言い聞かせる。


 まだ、鍋と冷やし中華を作ってる途中。具材は、新しい流通網で仕入れたものだった。間違いなくおいしい鍋と冷やし中華になる。だから。まず目の前の仕事を、瞬殺するしかない。

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