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 作りかけの料理。


 彼は、いなくなっていた。


「うええ」


 キッチンにもたれかかって、また泣いた。

 彼が、料理の途中で消えた。それだけなのに。まるで、捨てられたような気分。


 いままで、彼が、料理の途中でいなくなることなんて。


 なかった。


 なかったのに。


 彼は。本当は、いないんじゃないかと、思う。


 全部わたしの妄想で。酔っぱらったわたしが、鍋と冷やし中華を同時に作ろうとして我に返っただけで。


 むなしいだけ、だった。


 ただただ、泣く。

 涙だけが、ここにある。

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