04
呑み会で、なんとなく恋人はいるかと訊かれた。
適当にはぐらかす。彼のことを言いたかったけど、言ったところで理解はされないだろうと思った。
わたし、ときどき男のひとが家に来るんです。ごはん作ってくれて。それだけなんですけど。
言えないし、むしろ怪しまれる。
だいたい一次会から二次会にかけて、その日のカップリングが決まる。で、相性がよければ付き合ったりする。今どきの、なんとなくの恋愛関係構築。
わたしは一次会でおさらば。男のひとは要りません。
いつものようにコンビニでスイーツと、あとスーパーが閉まってたのでおにぎりを買った。
お部屋。
彼。
「あ。おかえり。お鍋にしようか。それとも冷やし中華?」
抱きつきそうになる衝動を、抑えた。彼がいる。それだけで、こんなに。こんなにも暖かい気持ちになる。
「両方」
かろうじて出た言葉は、ただの食い意地。
「両方ね。わかった。お風呂沸いてるよ」
「うん」
彼への恋心から、逃げるように。お風呂に飛び込む。
暖かい。
こうやって。日々が続く。彼には何も訊けないまま。
身体は暖かいのに。
また、涙が出てきた。
「うええん」
声をあげて泣いた。
お風呂場だから、反響して、へんてこな声に聴こえる。
「うええ」
男女の呑み会から中座して。彼のごはんを食べる日々。それだけ。彼のことが好きなのに。踏み出せずに、ひとりお風呂で泣いている。
「うう」
泣くのも、けっこうカロリー使うのかな。なんか、疲れた。のぼせる前に、あがろうか。
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