第24話『12日目』馬車を引くのは重労働?



翌日の朝。目を開けると、目の前に男の顔が。


「ひ、ひゃあーーーー!!」


ベッドから男を叩き落とす。


「な、なんだ!敵襲か!?」


男が叫ぶ………?ってあれ?


「アル………?」


「どうしたリアリ?ってか、なんで俺のベッドに……?」


あれー?昨日普通に寝たはずでは………?

寝ぼけた頭を無理やり回転させて考える。

しかし、思い出せない………。


「なぁ、取りあえず。起きようか………」





ベッドから出て、パッと着替えを済ませて、下に降りる。

受付の人は笑顔でそこにいる。


「おはようございます!朝ごはんは、昨日と同じ場所で食べられますよ!」





朝ごはんは、スクランブルエッグと、コーンポタージュだった。

朝ごはんに丁度いい、優しい味だった。

二人で無言のまま食事をしていると、ふと、料理屋の入り口に見知った顔を見かけた。


「!この前の面白い子じゃん!お〜い!」


「おはようございます!」


先日、馬車で知り合った名も知らぬ少女は、私たちの方へと歩いてきた。


「奇遇ですね!またお会いできるとは………。この偶然を祝して、一つ面白い事を言ってください!」


少女はキラキラした目で、私を見てくる。


「………しょうがないなぁ〜。えっと、この卵、エッグみがなくて、美味しいよ?」


場の温度が数度下がった気がする。

そんな中、お腹を抱えて転げ回る少女。


「卵と………エッグっ………笑いがっ………止まらない!」


アルがぼそっと呟く。


「なぁ、この人本当に頭の方大丈夫なのかな?」


「しっー!失礼でしょ!そういう事は、心で思っても口に出さないものでしょ!」


「お二人さん?どうかしましたか?」


「「いや、なんでも」」


少女は、笑いから立ち直ったようだ。


「あっ、それよりもさ、せっかくなんだから、一緒に朝ごはん食べようよ」


「いいんですか!?それじゃあ、お言葉に甘えて………」





「へぇ〜。サエワイン村に里帰りするの?」


「はい。お母さんが帰って来いって」


「若いのに偉いねぇ〜」


「………16のくせして年寄りぶるな、リアリ」


「………っていうか、自己紹介がまだでしたね!私は、サエデと言います」


「あっそうだったね。私は、リアリ。よろしくね」


「俺は、アルだ。どうか、よろしく頼む」


「はい!アルさん、リアリさん。こちらこそ、よろしくお願いします」


自己紹介と朝食を済ませ、宿の受付に戻り、鍵を返却する。


「本宿の利用、誠にありがとうございました。またのお越しをお待ちしております!」


「こちらこそ、ありがとうございました!」


宿を出る。


「そういえば、サエデは、この後どうするの?」


「私は………歩いて次の村まで行きますよ」


「えっ!?辻馬車は?」


「今の時期は、ここまでしか行かないそうです」


「そっか〜。………じゃあさ、私たちの馬車に乗る?」


「え!?リアリさん達、途中まで辻馬車に乗ってませんでしたか!?」


「まぁ、ちょっと諸事情があってね。今、馬車で移動しているの」


そこへタイミングよく、アルが宿の隣から馬車を引っ張ってきてくれた。


「お〜い、リアリ。馬車取ってきたぞ」


「あっ丁度来た。ねぇ、アル!サエデ乗せてっていい?」


「………いいのか?絶対後悔するぞ………」


「………いいんですか?乗せてもらっても?」


「いや、別にいいんだが………本当にいいのか?」


「まさか、こんな所に神の助けですよ!どうあがいてもサエワイン村まで歩いて

2週間はかかると思ってたんですから!」


「サエワイン村って、確か三つ先の村だよね」


私がそう聞くと、サエデはうなづいた。


「じゃあ、3日で着くね!」


「それは、本気で、言ってるのか!?」


アルが若干青ざめている。


「うん、本気」


「はぁぁぁ。仕方がないか」


アルは肩を落とす。


「でもな、村の外までは俺が引くから!絶対にヒモとか呼ばせたりしないから!

分かったら、馬車に乗ってくれ」


「オッケー!さぁ、お言葉に甘えて、サエデも乗った乗った!」


「………いいんですか?」


サエデは、アルが馬車を引くという状況に戸惑っている。

が、構わず馬車に乗せる。


「じゃあ、頑張ってね、ヒモのアル君!」


「それは言わないでくれ!」


ガタゴト、ガタゴトと、馬車は動き出した。

取り敢えず、村の外を目指して。




その後、アルと私が村の外で交代した事に、サエデは驚いていたが、

私が走り出した途端、無言になった。アルもだ。

………そんなに速いかな?車並みのスピードしか、まだ出してないのに………。













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