第22話『10日目②』王都サンストリアランド?
「ねぇ………北の方には何も無いって聞いたけど………」
「あぁ………俺も予想外だ………」
私たちの目の前には、未だかつて目にしたことの無いような巨大な門と壁があった。
村はぐるっと壁に囲まれていて、全く中が見えない。
「取り敢えず、入り口の方、行ってみようか………」
「あぁ……そうするか………」
私とアルは入り口らしき方へと歩いて行く。
到着すると、門の端っこの方に女の人が立っている。
「すみません。ここってトナリノ村ですよね」
「いえ」
「………じゃあ、ここってなんですか?」
「『王都サンストリアランド』です」
「え、すみません、もう一度………」
「だから、『王都サンストリアランド』です!ご入場でしたら、大人一人2000円、子供一人1500円になります」
私とアルは、少し門の前から離れる。
「………ねぇ、いつからここって巨大アミューズメントパークに変わっちゃったの?」
「………リアリの言う『アミューズメントパーク』がなんなのかは分からないけど、
ここは絶対にトナリノ村のはずだ」
「どうしようか」
「取り敢えず、この施設で最も偉い人に話を聞きに行こう」
「分かった」
私たちは、門の前の女性の元へと戻る。
「すみません、ここに入場したいんですけど………」
「!はい、ご入場の方ですね!」
突然女性の顔つきが変わり、何やら嬉しさを含んだ感じになった。
「大人2名、合計で4000円になります!」
私たちは、お金を手早く払い、嬉しげな表情で見送ってくれる女性を横目に門の中へ入っていった。
「うわぁ、すごいね、アル!」
「あぁ………」
入場した途端、見えてきた景色に圧倒される。
高い壁の内側には、巨大な観覧車や、ジェットコースターなど、まさに遊園地とも言える
設備が勢揃い。
「ねぇねぇ、アル!あの高速で動いている乗り物に乗ろうよ!」
私はジェットコースターを指差し、アルを誘う。
「………リアリ、俺たちの目的は?」
「この施設で1番偉い人に会うことですね………」
「わかったら行くぞ」
「は〜い………」
私はションボリとしながら、それっぽい施設にアルと向かう。
遊園地の中でも、どこか、管理センターっぽい建物だ。
「すみません!この施設で1番偉い人はいませんか?」
入り口の前で叫んでみる。
「はーい!すみませんね」
奥の方から、やや年老いたお爺さんが出てきた。
「私が、元ここの村長で、現ここのオーナー。サム爺さんじゃ」
………やや気さくなお爺さんの様だ。
「こんにちは、サム爺さん」
「こんにちは。で、なんの用かな」
「すみませんが、ここって以前は普通の村でしたよね」
アルが話を切り出す。
「まぁ、確かにそうだったのぅ」
「なぜ、ここは遊園地に?」
アルがそう聞くと、サムさんは突然頭を抱えて涙を流した。
「私の娘が………私の娘が………」
「………大丈夫ですか?」
「………大丈夫じゃ。思い出したら少し悲しくなっただけじゃよ」
「あなたの娘さんが関係しておられるのですか?」
アルが恐る恐る聞く。
「あぁ、そうじゃ。うちの娘がな。婿を連れてきたと言ってこの前帰ってきたんじゃよ。
まぁ、ショックだった。まさかうちの娘に変な虫がくっつくとは思ってなかったんでの」
「はぁ……」
「じゃが、それよりもショックだったのは、娘が、何も無い虚空をむいて、
『私の彼です!』と紹介してきた事じゃった。
その後、娘はこの遊園地を『いつもお世話になっている皆さんへ』と言って作って去って行ったのじゃ」
サムさんは、涙を流しながら話していた。
………エア彼氏とは、その彼女、思い切りましたなぁ。
私がウンウンうなずいていると。
「分かりました。それじゃあ、これらの建物は、その彼女が建てたものなんですね」
「そういう事じゃ。北は何にもないとよく言われるからのぉ。
せめてこれを北の特色にしようと………」
サムさんは、しょぼんとしている。
ウズウズしていた私は、はやる気持ちを抑えきれず、アルの腕を掴んだ!
「ねぇ!アル、ここがどんな場所か分かったんだから、一泊ここで遊んで行こうよ!」
「そうは言っても………ってリアリ!」
私はアルをずるずる引き摺っていく。
向こうには手を振るサム爺さん。
「どうか、楽しんでくだされ〜!」
「ありがとうございま〜す!」
アルをずるずる引き摺っていると、とうとう腕を振り払われた。
「わかった!分かったから。ここで一泊して遊んで行こう」
「やったーー!」
私はぴょんぴょん飛び跳ねる。
そして今度はアルの手を握った。
「ねぇ、まずはあのすごいスピードで動くトロッコに乗ろう!」
所謂ジェットコースターである。
「お、おい、ちょっと………」
ちょっとアルがジェットコースターを見て青ざめてはいるが、気にしない。
目一杯楽しむぞーーー!!!
ジェットコースターに乗ったり、メリーゴーランドに乗ったり。
久しぶりにこうやって遊んだ。
小さい頃は、よく遊んだものだが、年齢がある程度いってからは、
なかなかにこんな事する機会がなかったなぁ。
観覧車に乗りながら、私は思いにふける。
「なぁ、リアリ」
「なに?」
「なんか、楽しいな!俺、こんな事したの、子供の頃以来だ!」
ニシシ、とアルは笑う。
ふと、アルの表情が、子供の頃のそれと重なった。
懐かしさに頬を緩ませていると、
「?どうした?俺の顔見て笑って?」
「子供の頃のアルを思い出してね。変わらないなぁって」
「そうか………」
静かに、観覧車は回っていく。
私とアルを乗せて………。
観覧車に乗り終わったら、そのまま村の宿で寝た。
今日はいい天気だった。
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