第15話『7日目①』やっぱり『想像』ってサイコー!


神歴27年、忙の月。1日。


今日は、執務室へと行った。

私はドアを開けて、父のところへと歩みを進めていった。


「お父さん!お話があるのです!」


日に当たってボ〜ッとしていた父は、私に気づくと、


「………なんだ?外出許可か?

残念ながら、それは出すことができない。

………出しちゃったら、お前の母さんに怒られるじゃん」


「………じゃんって。もちろん、許可も欲しいけど、今日は別の用事。

地下の訓練場のカギ貸して」


それを聞いた父は、あからさまにほっとして、


「なんだ、そんな事か。………絶対に夕ご飯までには戻ってくるように」


「はーい」


父は机の引き出しから、ジャラジャラとカギの束を取り出すと、

地下の訓練場のカギを探し始めた。


「だから、きちんと整理してっていつも言ってるのに………」


「これで一応見つかるから問題は無いんだ!………よし。これだな」


父はカギの束から、訓練場のカギを取り出し、私に手渡した。


「サンキュー。じゃ、行ってきます」


私はカギと共に執務室を後にする。


「はぁ………、なんであんなおてんばになっちゃったんだか」



「クシュン!」


誰かが私の噂をしたのだろうか。

家の廊下を歩いていると、弟のリースに会った。


「姉さん、どこへ行くのですか?………まだ謹慎期間でしょうに」


「あぁ、今から地下の訓練場でちょっと魔法の練習をするの」


「………本当に暇ですね」


「うん!家に閉じこもっていたら体が鈍っちゃうから」


「まぁ、夕食までには戻ってくださいね」


「うん、お父さんにも言われたよ。なんでだろう?」


「前科があるからでしょうね………」


そう言って、リースと別れて、地下へと向かう。

カギを使って地下室に入る。


「うーんしょっと」


大きく伸びをして、軽く準備運動をする。


「それじゃあ、『想像』魔法の練習をしますか!」


私は左の掌から炎を出す。

そしてその炎を矢の形に変え、一直線に射出する。

壁の寸前まで飛ばしたら、急ブレーキをかけ、そのまま反転させる。


「はぁ!」


私にぶつかる寸前で、魔法は私が魔法で作った壁にかき消えた。

………やっぱり凄い!


今度は水を出して、熱くなるようにイメージする。

どんどん熱くしていき、ついには沸騰し、全て蒸発させた。


そして、バラバラにした水蒸気を一粒一粒意識しながら冷やして行く。

氷になるまで冷やすと、雲が出てきた。


「よーし!行くよ!」


そのまま氷を擦り合わせるイメージを………

パチパチパチパチ。

やがて、雲に光が走るのが見えるようになってきた。


「行けーー!!!」


凄まじい爆音が鳴り響き、雷が落ちた。


「うわっ!?」


爆音に驚く。

まさか、ここまでとは………


階段を降りてくる音が聞こえる。


「リアリお嬢様!リアリお嬢様!大丈夫ですか!?」


やばい、音を聞きつけたうちのメイドのリネアが来た!


「だ、大丈夫、大丈夫!問題ないよ!」


「そうですか?ドアを開けてください!」


「わ、わかった」


私は急いで扉に向かい、扉を開ける。


「リアリお嬢様!雷の落ちるような音、何をしていたのですか!?」


「いや、ちょっと実験………」


私はリネアの追及を避けながらも、ふとアルに言われたことを思い返していた。



あれは、別れる少し前のことだった。


『リアリ。すまないが、約束しておいて欲しいことがある。』


急に真面目な顔で話し始めるアル。


『う、うん。何?』


『リアリと、私の「想像」と「創造」のことだが、あれは、誰にも言わない方がいい。

………グリデウス様がサラッと言った、「神に反する」というのが非常に気になる。

………魔法というものは、神に認められて初めて詠唱して使うことができる。

そこまではいいな』


『………もしかして、私の使う「想像」は、そんなルールを無視して、魔法が使えるから………』


互いに互いを指差し、互いに確信を持った表情で言う。


『『神を無視して魔法を使っていると言うことになる!!』』


『そりゃあまずいね。私は別に気にしたことはないけど………』


『ああ、俺も気にしたことはない』


『流石に人前で堂々と使える魔法じゃないよね………』


私は大きな溜息をつく。


『………くれぐれも。人前で大っぴらにその魔法を使うのは避けてくれ』


『アルはいいなぁ。アルのだったら、ポケットとかに手を入れたら使えるのに……』



そんなことを思い出す。

………アルは『創造』魔法で充実した魔法ライフを送っているのかな………

今度行ってみよ!


「リアリお嬢様!実験とは?危ないことしてないでしょうね!」


「してないしてない!安全、安心だから!」


リネアの追及に少しきつくなって来た。

その時。


「………リネア?リアリお嬢様は大丈夫って言ってる。さっさと仕事に戻らないと、怒られる」


「ですがーー……。リアリお嬢様って目を離すと怖いんですよ、そう思いませんか?ハミル」


リネアの相方のハミルがやって来た。

だいたいこの二人、ペアになっている。

心配性なリネアに、冷静なハミルがついて、

ちょうどいいと、メイド長は言っていた。


「確かに、リアリお嬢様は何をするか分からない。

………でも、リアリお嬢様も成長した。きっと大丈夫、………だと思う」


大丈夫って失礼な。私は普通だって言うのに!


「だから行くよ、リネア」


「………分かりました」


渋々といった雰囲気で歩いて行くリネア。


二人が扉から出て行き、私はかなりほっとした。


気を取り直して、今度はゴーレムを出現させる。

通常、この世界のゴーレムと言えば、2〜3メートル

と言われる。


でも、私の作ったゴーレムは、そんな物の比にならないぐらい大きい。

部屋の天井につくぐらいで、5メートルはある。

でも、もっと大きくできそうだ。

残念ながら、それは部屋の大きさの関係上無理そうだが………。

その時、突然階段を下りる音が!


「あ、すいませーん、今日の夜ご飯、何が………」


リネアが再び扉を開けて入ってくる。


「ひゃ、ひゃーー!!!」


と思った瞬間に、彼女は全速力で階段を上って行く。

やばい、見られた!

慌ててゴーレムをしまうと、解決策を思いつき、土の壁、複数枚と、2メートルほどのゴーレムを作り出す。

これらは、「アースシールド」と「ゴーレムクリエイト」という普通の魔法で作ることができる。


ちょうど、準備が整った頃、階段の方から声が響いて来た。


「だから!5メートルぐらいのゴーレムがいたんですよ!」


「………それはありえない。ゴーレムは普通、2メートル前後であるはず」


「本当に見たんですよ!来てください!」


どうやらリネアは、ハミルを呼んできたようだ。

………あまり大事にならず、ほっとした。


扉がバタンと開く。


「ほら!見てください、こんなに大きなゴーレムが………」


「どこにそんなゴーレムがいる?」


「あれっ?さっきまでここにいたはずなんですけど………」


「見間違いじゃない?」


リネアは戸惑っている。

よし!このまま間違いにしてしまおう!


「もしかして、これを勘違いしたんじゃない?」


私はゴーレムを操作し、土の壁の上に乗せる。


「ほら!ちょうど5メートルぐらいになるし」


「本当。ほら、リネア。きちんと謝る」


「………ごめんなさーい!」


二人で一緒に地下室を出て行く。

リネアには申し訳ない事をしてしまった。

………今度私の分のお菓子を少し分けてあげよう。



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