第12話『4日目⑤』かつ『5日目①』想像と創造

「嬢ちゃんの言う通りだ。俺はこの口で真実を伝える為に、モンスターになった」


「!?な、なんのモンスターですか?」


アルが怯えて敬語に変わる。


「そうだねぇ。原型を留めているところから見るに、ゴースト系のモンスター?」


私が冷静に判断をすると、


「嬢ちゃん、正解だ。俺はゴースト種のモンスターだ。

その名も、『ヒロイックゴースト』」


「なるほど、最上位のモンスター。ドラゴンにも劣らない強さのやつですね!」


「ああ。俺がなれそうなモンスターって、これしかなかったんだ。ハッハッハッハ!」


「………てことは、幽霊ですか?」


アルが恐る恐る聞く。


「大きな分類だとそうなるな」


「俺、もうどう反応したらいいか分かんない………」


「とりあえず、気絶でもしたら?ちゃんと背負ってあげるよ!」


「分かった………、ってそう言われて気絶できるか!

………もういいよ。なんか幽霊って感じしないし………」


アルが軽く開き直る。


「………話、続けても良いか?」


「okです」「良いですよ」


「わかった。さっきの映像で、俺の生い立ちは分かったな。

つまりはそういうことだ。

俺はこの世界が怖くなった。

だから引き篭もったんだ。

だが、世界の真実を知った今。

今のお前らにそれを伝えることは出来ねぇが、

俺の力を与える事ができる。

……それが、老害になっちまった俺にできる唯一のことだ」


再びハッハッハッハと笑い出すグリデウスさんには、

先程の戦闘で見せた覇気などかけらもない。

話を聞いてから、声に少し、寂しさが混じったような気もする。


「………いいか?

俺の力は、神に反する物だろう。

もし、お前達が普通に生きたいのであれば、絶対におすすめはしない。

いろいろと厄介ごとを招く可能性だってあるからな。

だからこそ、問う。

………俺の力を、貰っちゃあくれないか?」


最後に、ニコッと笑うグリデウスさん。


「『新しい力』って、なんとなく惹かれないですか?

………今のままじゃ、きっと何か大きな物を失いそうな気がします。

………それに、貰っておける物はもらっておきたいじゃん?

だから、私はあなたの力を貰っちゃいます、グリデウスさん!」


「俺はもう決めていた。

俺の目的こそ、あなたの言う、厄介ごとなど、恐るるに足りない物です。

俺は、俺の運命を、変えたい!

だから、あなたの力をください!グリデウス様!」


「ハッハッハッハッハ!いいだろう!

俺の力、『創造』と『想像』をくれてやろう!」


そう言って、グリデウスさんは、足を三回踏み鳴らす。

すると私とアルの足元に、大きな魔法陣が現れた。

そして魔法陣から凄まじい光が溢れ出す。


「あ、言い忘れてたけどな、この習得に、丸一日かかる上に、その間、頭がひどく痛くなるぞ」


「え!?」


それを早く言ってよーーーー!!!

それを聞いた時には時すでに遅し。


「アイタタタタタタタタ!!!!」


めっちゃ頭痛が痛い!頭痛が痛い!

二重表現使っても足りないくらいの激痛が走る。

もう少しレディーをいたわってーーーー!!!


このダンジョンに入って何十回ともなる激痛に、

頭を抱える。

隣のアルは?


無言で立ち尽くしている。

あれ?私と違って頭痛ないっぽい?

なんでーーーーーーーーーーーーーーー!!!!!!



その後丸一日が経過して、18日になった。


「はぁーー、はぁーー、死ぬかと思ったーーー!」


私は一日中、頭痛に苛まれていた。

………正直言って、死ぬかと思った。


「なんか、楽、だったな」


アルは拍子抜けでキョトンとしている。

私はアルの肩を前後に揺らす。


「私は!楽じゃなかったのーーー!」


「そりゃ、嬢ちゃん、多分適性の差だ」


「へ?」


「嬢ちゃん、恐ろしく強いからなー。多分『想像』の方が行ったんだと思うぞ」


「その、『想像』って何?」


「説明か。それなら、下の階でしてやる。すぐに降りてこい。この屋敷の裏だ」


そう言って、姿が消えてしまうグリデウスさん。


「え?ちょっと待って!もう!行くよ、アル!」


「あ、ああ、わかった!」


慌てて私の後を追いかけるアル。

私は屋敷の裏に階段を発見し、降りていく。


「おぉ、来たか。じゃあ、早速説明するが、良いか?」


「「望むところよ(です)!」」

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