第10話『4日目③』最後の説明回

「リアリ………」


「………てへっ」


ちょっと舌を出して照れてみる。


「お前、なんて事を………」


完全に無視をされた。少しだけ心が傷ついた。


すると突然、下に繋がる階段が現れた。


「………よし、俺たちは何も見なかったし、何もしていない。そうだな!」


アルが突然聞いてくる。


「えっ?何」


私が聞き返すと、


「だから、俺たちはものすごく偉い人を拳で吹っ飛ばして粉々になんかさせてないって、そういうことだ!分かったらいくぞ!」


とアルはズンズン階段を降りていく。


「あ、ちょっと、待ってよ〜!」


私は慌てて後を追いかける。



階段は今までにないくらいに長かった。

1時間はずっと降りてた気がする。


「ふぃ〜!やっとついた〜!」


「リアリ、ちょっとタンマ」


「いや、待ちません!このままこの階を攻略してしまおう!」


なんか1時間も同じ景色を見ていて、テンションがおかしくなってしまった。


「そ〜れ〜!」


そして、そのまま目の前にあった大きな扉を開ける。

すると以前どっかで見た様なお花畑が広がっていた。

でも、今度は真ん中に少し大きめの家が立っている。


「わぁ〜!凄い!」


「おい、ちょっと待てって………」


アルも同じ景色を見て、すごく驚いている。


「どういうことだ?もうこのダンジョンは終わりなのか?」


アルが不思議そうに私に聞いてくる。


「だって、さっきの階で………」


「わかった、分かったから。確かにさっきダンジョンマスターという人に会ったな」


「いや、会ったんじゃなくて粉々に………」


「そこまで言わないでくれ!結構トラウマなんだ、あれ」


「じゃあさ、取り敢えず、あの家まで向かってみようよ。

何かあるかもしれないしさ」


「分かった」


アルと私は、家に向かっていく。



「うわぁ、大きい家だね〜」


私が感心していると、


「すみません、誰かいませんか!」


とアルが扉をノックしている。


「あ、ちょっと待ってよ!」


私は慌ててアルの元へといく。


「おかしいな、返事が返ってこない………」


「だからさっき………」


「分かったから!………さっきから俺で遊んでないか?」


「気のせいじゃない?」


私はそそ〜っと口笛を吹く。


凄くじと〜っとした目つきで見てくる。


「さぁ、行こうか!お邪魔しま〜す」


私はその視線から逃れる様にドアを開ける。

中は真っ暗だ。


「アル〜!光魔法、お願い!」


「全くも〜。光よ。ライト」


アルが魔法で光球を浮かべると、


「なぁ、ここには何も居ないよな………」


と不安そうに聞いてくる。

私はその様子が面白くて、


「もしかしたら、さっきのおじさんが化けて出て来るかも〜」


とからかう。


「お、おいっ!冗談でもやめてくれよ」


と言う。


「もしかして、お化け怖い派の人間?」


私がさらに面白がって聞くと、


「だ、大丈夫だよ!心配すんな!」


と胸を叩いて答えるアル。


「ガタンっ!」


「きゃあっ!」


物音がした途端、アルは私に飛びついて来る。


「………やっぱり怖いんじゃん」


「すみません、手を握ってもらっててよろしいでしょうか………」


あまりの恐怖からか、私に対しても敬語になるアル。


「しょうがないなぁ〜」


私は手を繋ぐと、


「さぁ、出発!」


とズンズン前に進んでいく。


「も、もう少しスピード遅めで〜」


アルも引っ張られながら恐る恐るついて来る。




三十分後。


「う〜ん。特に気になるものはなかったね」


「そうだな」


三十分も歩いてくれば、慣れるのだろうか。

アルの口調は元に戻っている。

あとは、絶対何かあると見て、一切調べていなかったこのドアの奥だけか。

今まで見てきた部屋のドアよりも、ひとまわり大きなドアを開ける。


「なんだここ?不思議な部屋だな」


そこには、椅子が二つ。

それ以外にはなにもない部屋だった。


「取り敢えず、座ってみようか」


「お、おう」


私とアルは、その椅子に座る。


「………何も起きないな」


「………何も起きないね」


さっさと立ち上がろうとした、その時。


『ダンジョンクリア、おめでとう!』


目の前の壁に、グリデウスさんの顔が出現した。


「!う、嘘だろ………」


『このメッセージを見る頃には、俺はもうこの世には居ないだろう。

残念ながら、これは俺の作った魔法だ』


「やっぱり………」


この人は自分で魔法を作れるのだ。

私たちには到底できっこない。

「体系が違う」って、こういうことだったんだ。

私が唖然としている中、アルは席から立ち上がり、画面をペタペタと触っている。


「どこにいますか?その絵の中から出て来てください!」


壁をどんどんと叩くも画面の中のグリデウスの表情は全く変わらない。


「ちょっと、アル!見にくいから座ってよ!」


私はこれからどんなお話が始まるのかワクワクしているのだ。

アルに強く言うと、


「いや、だって、ここにグリデウス様が………」


「グリデウスさんはここには居ないの!映像なんだから当然でしょ」


「えっ、これって常識なのか?」


「い、い、か、ら、座って!」


「はい………」


納得できない様子で渋々座るアル。

テレビの中の人がここには居ないって、常識でしょ!

………あれ、これって前世の常識………


『非常に困惑しているだろ。何せ俺は今から千年も昔の人物だ。流石にお前たちのいる時代には生きていないだろうな』


グリデウスさんは続ける。

では、あれは一体誰であったのだろうか。

ダンジョンのモンスターは、全て光となって消えるのだが、

彼も光となって消えた。ならば、彼もダンジョンのモンスター………?


『俺は、偽人歴2335年にこのダンジョンを作った。なんでか分かるか?

俺は、絶望していたからだ』


そうして、グリデウスさんは、自分の過去を語り始めた。


「ねぇねぇ、アル………」

こそこそとアルに小声で話す。

「なんだ」


「めんどくさいから、カットしていい?」

「ダメに決まってるだろ!?」

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