第7話『3日目②』レッツゴー、飛び出そう
「じゃあ、先に行こう!」
「えぇ?もう行くのか?もう少し休んでも………」
アルが弱気なことを言うので、
「私は一人で、あいつを倒したんですけど〜?」
と、軽く圧をかける。
「………分かりました、行きましょう」
「わかればよろしいのです」
ボスが倒されてから、しばらくほったらかしだった階段を、降りていく。
それはそうと………
「ねぇ、あなたのお父さんが負けた理由って………」
「ああ、きっとあの煙を二人とも吸ってしまったんだろうな」
なるほど、それは恐ろしい。
「でも、なんで私にはかからなかったの?」
私は、ずっと気になっていた疑問をアルにぶつける。
「それはきっと、リアリが、魔力をまとっていたからだと思うぞ」
「え?」
「いや、あの煙は、おそらく魔法の一種で、魔力で体を覆ったから、煙が体内に入らなかったのだろう。よく知ってたな」
アルが感心したように話しているが、私は当然こんなこと知らない。
「へ、へぇ〜。ま、まぁ、当然でしょ。わ、私くらいの魔法使いになるとね〜」
「………知っているんだったら、そのそらした目を真っ直ぐと私に向けてほしいのだが?
………まぁ、別に偶然でも、助かったのは事実だからな」
アルに一瞬で嘘がばれた。
私って、分かりやすいのかな。
お父さんも、お母さんも、果てには、まだ小さいうちの弟だって、私が嘘をつくと、温かい目を向けてくる。
何が悪いんだろう………
私には答えの出せない疑問を抱えながら、階段を降りていくと。
「おい、着いたぞ」
どうやら階段を降り終わったようだが………
「………真っ暗だ………」
階段を降りた先には果てしない暗闇が広がっていた。
「アルって暗いところ怖い?」
「いや、別に………」
「じゃあ、行こうか!」
私は一歩前へと踏み出す。
すると、突然周囲にあった松明からそのまま奥の道の松明まで火が付いて行った。
「うぉぉ!」
私は驚いて、のけぞってしまう。
「すごい仕掛けだなぁ」
アルがウンウンと感心していると、向こうのほうからコウモリの群れが飛んできた。
「魔物が来た!」
「火がつくのもいいことばかりじゃないんだな」
私とアルは、魔法をコウモリにぶつけ、一体ずつ撃破していく。
「あんまり、魔物は強くないみたいだね」
「そうだな」
さっきの階の魔物に比べると、ずいぶんと弱体化している。
もしかして、これは作り主の凡ミスでは!?と思い、
「よし、さっさと突破しよう!」
とズンズン進んでいく。
「おい、ちょっと待ってよ」
アルは引っ張られて付いていく。
これだったら、楽勝だね!
………そう思っていた私は今、大きく後悔している。
「ここって………」
「ああ、さっきのところだな」
「なんで戻ってきているの!?」
私たちは2時間かけて、入り口まで戻って来ていた。
「ここは多分、迷路みたいな場所なんだろ」
「そりゃ、なんとなく気付いていたよ!なんか分かれ道が多いな〜って」
悲しくなって来た。昔っから迷路は得意じゃない。
こうなったら………
「ねえ、アル。提案が有るのだけれど」
「なんだ?」
「迷路の1番の攻略法を使いましょう!」
「なんだ?それ」
小さいころ、お母さんに教わった究極の方法だ。
お母さんは、「どんな迷路もこれで楽勝よ〜」と言っていた。
「壁伝いに移動する!」
拳を上に掲げ、さもしてやったりと言う顔をすると、
「………あぁ、やってみればいいんじゃないか?」
とアルは答える。
「これでここの層は楽勝クリアだね!」
私は浮き足立って壁伝いに歩く。
しかし、気付いていなかった。
アルが、ニヤニヤしているのを………
………さらに2時間後。
「ここは………」
「ああ、入り口だな」
「なんでよ、もう!」
私は膝を地面につく。
さっきの木の魔物戦でもつかなかったのに。
「いや、一週目も同じく俺が壁伝いに移動したんだ」
「へ?」
「それで、出口は見つからなかったからな」
「ちょっと!わかってたんだったら教えてよ!」
「いや、悪い悪い。つい楽しそうだったので、止められなくてな」
「………じゃあ、出口はどこなのよ」
ジト〜っという視線をアルに向けながら、私は問う。
「いや、二週目、魔力を探りながら歩いたらな、あったんだわ。壊せそうな壁」
「はぁ!?」
じゃあ私はそうとも知らずにもう一周して来たって言うの!?
私は床に倒れ込む。
「おい、行くぞ」
「もう動きたくな〜い。アルが連れて行ってよ」
「えぇ………」
アルが露骨に嫌そうな顔をする。
「では、数時間前に、私を襲おうとした件………」
「分かりました、私があなたを運ばさせていただきます!」
アルは私を背負う。
「意外と重い………」
「こら!女性に向かって『重い』は禁句!
………まぁ、私は気にしたことないけど…」
そうして、この国で最も偉い王族を足に使い、十一層を突破した私たちであった。
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