第73話 闇落ちと浄化と変化
サイモンさん達を追いかけて、サハギンさん達の村の砂浜に上がって来たのは10匹の闇落ちイエローイヤータートルだった。
たぶんタートル達も自分達の食べる物が減って共食いを始めたのだろうね。
そう考えると、可哀想だ。
だからと言って狩るのはやめないけどね。
サイモンさん達を追いかけて来た10匹は他の個体に比べるとかなり大きいし、闇をまとって体も黒い。
ダークタートルかな?
まずカルラは「ライトニングボルト」ブランは『ディスチャージ』コタロウは「ライトニングボール」でダークタートル達を痺れさせた。
タートル達が痺れているところをアラニャの糸で首と甲羅をそれぞれ拘束して首を引っ込められないようにして、僕がその伸びた首を刈っていく。
同じように10体倒した。
全部倒し終わったところでサイモンさん達にまとわりついていた闇が取れたので、すぐにポーションをかけて傷の回復を確認してから、倒したダークタートルは解体する。
なかなか大きいね。
素材は全てマジックバックにしまっておく事にした。
このままでも大丈夫かも知れないけど、一応食べるのは浄化してからにした方が良いよね?
何かあったら嫌だし怖い。
僕がダークタートルの肉を解体していると、サイモンさん達が頭を掻いて「アル様、ありがとうございます」と頭を下げたので、僕は「気にしなくて良いですよ」と頷いた。
そこでコタロウがダークタートルの甲羅をマジックバックに入れやすい大きさに切りながら首を傾げる。
「アル兄ちゃん、闇落ちがいるならこのままサイモンさん達だけで続けるのは危ないんじゃないの?」
僕は「そうだね」と首肯した。
確かにコタロウの言う通りだ。サイモンさん達がもう少し強くなれば問題なく倒せるだろけど、今はまだ危険かもね。
「サイモンさん、闇をまとっているタートルは他にも居そうですか?」
「いや、今のところはこれだけだと思います」
「分かりました。では引き続き無理せずに討伐をお願いします。もっと肉を食べれば闇落ちも無理せず倒せるようになりますから焦らず行きましょう」
「なるでしょうか?」
「なりますよ。僕達も初めは苦戦しましたから」
僕が微笑んで、サイモンさん達は安心したように頷いたが、コタロウが「いや、アル兄ちゃんは初めから余裕だったよ」と呟いた。
そこからコタロウがサイモンさん達に闇落ちと戦う為の注意点を説明した。
うん、説明は僕には無理だからね。
と言う事で、しばらくは僕らが狩りに行った後で、コタロウによるサイモンさん達への訓練が追加された。
何事も安全が大事だから、タートル達の狩りのペースを少し下げてでもサイモンさん達の強化をしておいた方が良い。
この訓練は特にサイモンさんの娘のサーシャが熱心に受けているそうだ。
やはり村長の娘としてみんなを守りたいという思いからなのだろうが、進化してさらに可愛くなったので護身の為にも良いと思う。
コタロウがサイモンさん達の訓練をしている間に、僕達は村の中の入江に養殖場を設けて見た。
土魔法で水の中に等間隔で杭を打って、アラニャが糸で作った網を張る。その中に捕まえて来た魚型の魔獣を入れた。
マルタの街でやっていたカウマルタの酪農と同じ事を湖で試しにやってみる事にしたのだ。
餌は水草なので、サハギンの女性陣や子供達とルタウの街とは反対側の岸から水草を集めて来てあげる。
サハギンの子供達が一生懸命に世話をしているおかげで、今のところ問題もなく魚型の魔獣は順調に育っていると思う。
あんまりにも子供達が大事に育てているので、食べるのは忍びないかも知れないね。
いや、それも勉強かな?
それからサイモンさん達がホワイトタートルを拾って来た。やはり体が白いせいで除け者にされていたらしい。まだ小さい事もあるがかなり痩せ細っていた。
それでも共食いを始めたタートル達の犠牲にならなくて良かったね。
ホワイトタートルにも、どんどん肉と魔石を与えたら体力も戻ったので、主従契約をした。
ブランの通訳によりホワイトタートルが従者を希望したからなのだが、類にもれずやはり進化した。どうやら、進化によって水の中を泳ぎ回れるようになったらしい。
さらに浄化したダークタートルの肉と魔石を少し与えたら、コタロウ達のように変化もした。体に柄が入り、手足の先が黒くなった。
そして、魔力が大幅に増加したのでブランが身体強化を教えた。これにより泳ぐ速さもかなり速くなったので、もう普通のイエローイヤータートルに遅れをとる事はない。
なのでサイモンさん達と一緒にタートル狩りに参加している。雷をまとったり『ディスチャージ』も覚えたので、サイモンさん達はかなり頼りになると褒めていた。
ちなみにホワイトタートルにサイモンさんがタロンと名付けた。
仲間と認めたんだね。なんか僕も嬉しい。
そして、タートルの討伐に合わせて行っている魚型の魔獣の捕獲だけど、思ったより数が多いので養殖場が溢れた。なので湖に広く作る事にした。
狭いと嫌だもんね。
作り方は村の入江の物と一緒だけど、大きさは30倍以上大きく作った。そして、村の物から大きい魚型の魔獣を全てこちらに移す。
「意外と残ってましたね」と僕が言うと「はい、あの数のタートルに毎日食べられていたのによく残ってましたよね」とサイモンさんが頷く。
「そうですね」
「それで、アル様。タートルもだいぶ数が減りましたが、どうされますか?」
サイモンさんの質問に僕は「どうって?」と首を傾げた。
「甲羅の細工をこれからも作り続けるなら、少し残した方が良いのではないかと」
「そうですか。じゃあ、ある程度捕獲してそちらも養殖場で養殖してみますか?」
サイモンさん達がやりたいと言うので、また別に養殖場を作って、次の日から小型のタートルは捕獲して、養殖場で養殖する事になった。
正直を言えば、甲羅も肉も充分すぎるほどにある。入らなくてマジックバックもいくつも買い足したぐらいだから、たぶんサイモンさんはもちろん、サーシャが生きている間の分もあるだろうね。
だけどさ、きっとサイモンさんは子孫の事まで考えているんだね。今や少し先だけではなく何代も後の事まで考える、それが長なのだろう。
すごいね。
そんな風に思いながら、今日の分の水草を小舟に乗って魚型の魔獣の養殖場に入れていたら、そいつらが飛んで来た。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます