13.ペットと下準備
「・・・」
「・・・このくらいでしたら如何でしょう?」
ここは、もっとこう体格に合わせて・・・
「では、このように?」
「そうですね。こちらの方が」
「・・・」
「あの・・・?」
これでしたら、らしく見えますね。
「そうしましたら、このサイズで五着ほどお願いできますか。それと、急ぎませんからまずは一着できたらお持ち頂いても?」
「畏まりました。そうですね、寸法こそこれまで無いものですが、ものとしては一般的なものですから最初の一着でしたら、明日の夕までには仕上がるかと」
「まぁ。ですがあまり遅い時間にお越し頂くのも申し訳ありませんから、明後日の午前中にお持ち頂けますか?」
「・・・」
「あの、お嬢様・・・?」
「あら、アル。いつの間に」
「先程参りましたばかりでございますが・・・それよりも、何をなさっておいでなのでしょう・・・?」
この場にいるのはわたくしと、アル。
ソラに、護衛として兵士の方が一名。
それと普段からお世話になっている仕立て屋の従業員。
更に詳細に申し上げるならば、デザイナーの方です。
つまりは、アルが来るまでは四人?だけでした。
今ここに集った四人でできること。
それは、
「採寸と仮縫いです」
「その内二人集えば事足りますよね、それ? 護衛のガリルとかいりませんよね」
「・・・おい、アルフレド。その言い方だと俺が要らない子みたいに聞こえるだろ止めろ」
「おや、ソラに一撃の元に撥ね飛ばされ障害物にすらならなかったガリルさん、どうか致しましたか?」
「ぐるぉうっ」
「お前ら揃って憐れむ目を向けんなちくしょーっ!!」
「アル、ソラ。やめなさい。不意打ちでソラほどの重量にぶつかられて耐えられる人など限られています。魔界付近の哨戒も魔物との遭遇もいつものことと弛んでいたのは事実ですが、済んだことです。同じようなことがあったときに対処できるようにしていく他ありません」
わたくしも含め。
「・・・お嬢様。さらっと本音での追撃はツラいです」
「あら?」
「まぁ、ガリルなどより」
「だからその扱いや」
「見てある程度は分かりますが、あえて伺わせてください。何の採寸と仮縫いをされているのでしょうか」
「アルも見ての通り、ソラの使用人服・・・いえ、この場合でしたら使用魔物服、でしょうか。どちらにせよ、ソラに着せる仕事着の採寸と仮縫いです」
「使用魔物服は些か語呂が悪ろうございます」
「まずそこですか」
「ツッコミどころはよほど空気を乱す場合を除き積極的に拾うものであると、我が太古の記憶が囁くのでございます」
「乱していますし、あなたは古代文明の生き残りか何かですか」
「まさかまさか。あははは」
何故だか笑顔と台詞が白々しいですが、まぁ、今はアルなどよりもソラです。
「何やら私の扱いがぞんざいな気配」
「では、ケイトさん。宜しくお願い致します」
「スルーは悲しぅございますお嬢様っ!」
「へっ、ざまあみろや」
「わ、私がざまぁされる・・・だと・・・」
「さ、ソラ。服ができるまでにも少し練習しましょう」
「が、がうぅ・・・」
「あの、お嬢様? 服をお作りになろうとされておいでなのは分かるのですが、それ以前の問題としまして根本的に何をなさろうと?」
「あら、アルが以前教えてくれたのではありませんか。良い機会ですからそれを実行に移しただけですよ」
「はて、私が?」
一昨年頃でしたでしょうか。
魔界の哨戒でおかしな見た目の魔物がいた、というお話をしていたときのこと。
その魔物は前肢の腕辺りから先と腰より下の毛が薄く、二足歩行だったこともあり、まるで村人や町人が着る服を着ているようだった、という内容でした。
そこでアルが、
『なんと申しましょうか、一部の人がされているペットに服を着せるみたいなのを思い出しますね』
と、溢していました。
「それを思い出しましたので、折角ソラもいることですし一部の方々を真似てみようかと」
「はぁ・・・確かに、記憶の片隅の端の角の先くらいには口に出した記憶はございますが」
「素直に覚えていないと言いなさい」
「しかし何ゆえ使用人の着る服を?」
「アサルトレオーは二本足で立ちますよね。そうすれば給仕や屋敷内の荷運びくらいはできると思いませんか?」
「がうっ!?」
「いや、お嬢様・・・確かにアサルトレオーは立ち上がりますけど、それがデフォルトではありませんからね? 流石に人間と同じように立って作業は無理が・・・」
「ですが、ほら。ソラは普通のアサルトレオーに比べ全身の筋肉が発達していますから、できないことはありませんよね」
「・・・残念ながら普通のアサルトレオーよりも、本来の四足獣に身体のバランスが近いので・・・」
「まぁ、ものは試しとも言いますし。まずは実際にやってみましょう」
「ぐるるぉうん!?」
「何やら強引にでも推し進めようという気配がするのですが、気のせいでございましょうか・・・?」
「・・・・・・お父様からソラの食費が酷く嵩むと苦言を受けまして。ですので使用人として働いてもらい、お給金を食費に充てられれば苦言を躱す材料にも、ソラを屋敷に置く言い訳にも使えるのではないかと」
「思った以上にしっかりとした理由が出てきてびっくりしています・・・」
「が、がう・・・」
「あの、ちなみにそれって自分で食べる分狩ってこさせるとかではダメなのですか?」
「少しだけなら良いのでしょうが、あまりやりすぎてこの近辺の縄張りや勢力図が変わりすぎるのも問題がありますから」
「あぁ・・・」
「ぐうぉっ!?(生態系を破壊するほどは食わぬぞ!?)」
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Q.ソラは本当に大食いなのか?
A.身体の大きさほど食べません。むしろ、燃費はかなり良い方。
とはいえ、一般的に飼われている馬や、乗り物になる魔物などに比べれば食べる量自体は上なので・・・
ちなみに、ケイトはデザイナーさんのお名前です。
まだ名前の決まってない人が何人かいるなか、ポッと出て即名前をもらえた運の良い人。
「んなことどーでも良いから新しい服作らせnsry$★%!?」
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