爲政20、21 之に臨めるに莊を以てせば則ち敬わる


20


季康子問:「使民敬忠以勸,如之何?」子曰:「臨之以莊,則敬;孝慈,則忠;擧善而教不能,則勸。」


 季孫肥きそんひ殿が、孔丘こうきゅう先生に問う。

「民に、尊敬と忠誠心を抱いて

 勤めに励んでもらいたいのです。

 何をすべきでしょうか?」

 孔丘先生は仰る。

「荘重なる態度で接せば、

 敬ってまいりましょう。

 敬い、慈しめば、

 忠誠を誓ってまいりましょう。

 よき働きを讃え、

 うまく成果を上げられぬものに

 仕事のやり方を教えられれば、

 皆、仕事に励みましょう」


 季孫肥は、国力衰えまくってる時期の魯の大臣なのだそう。「どうにかして国力を回復させなければ」的な焦りに支配されてただろうから、孔子のこの話にはさぞイラっとしただろうなぁ。

 にしても「デキる上司の指導のしかた」みたいな話だなー、と思いまんた。確かにそうなんだよね、変に距離感近すぎても仕方ないから、職務上の伝達関係がある以上一定の距離感を保ち、そのうえでその人の尊厳を最大限尊重し、さらに、できるやつの仕事は讃え、できないやつも叱ってる暇があったら教える。自分がどれだけ実践できるか、みたいな視点でどうしても読んでしまうよね……。




21


或謂孔子曰:「子奚不爲政?」子曰:「《書》云:『孝乎惟孝,友於兄弟。』施於有政,是亦爲政,奚其爲爲政?」


 あるものが孔丘先生に問う。

「先生は、どうして政治そのものは

 なされないのです?」

 孔丘先生はお答えになる。

「『尚書』にも書かれております。

 孝、まずは孝。

 兄弟のごとく、親しくあれ。

 この心持を浸透させるのが、

 政であると言えましょう。

 ならば私のやりようもまた政であり、

 あなたのおっしゃる政治にまで、

 立ち入る必要がありましょうか」


『尚書』は原本が散逸していて、ここで孔子が引用している句は、現存している『尚書』には見えないのだそうだ(あるにはあるけど、それは後世に成立した偽書なので、むしろ論語から引っ張ってきたんだろう、と言われている)。なのでこの条の意味を真に理解するのは非常に難しい。こういう時は自分ごとに引っ張り込むのがいいよね。読んで思ったのは、まぁ、一人一人との人間関係が大切、ってことでしょうか(言った直後にできてねえやと痛感し死ぬ感じのやつ)。

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