みんなのパパママ

「いってらっしゃーい」


 きょうのママはごきげん。かいしゃにむかうパパをえがおでみおくってる。さいきんちょっとつかれてイライラしてたっぽいけど、きょうはぜんぜんちがう。


「ねえ宇宙、今日のお夕飯何食べたい?」


 えっと……コロッケ。


「そう、コロッケね。でもじゃがいもがあまりないから買って来ないと……パパと一緒に食べたいでしょ」


 うん!まあパパといっしょだとなんでもおいしいんだけど……。


「そうね。でもね、残念だけど今日は月曜日だから、いろいろパパのお仕事が多いみたいだからちょっと遅くなるかもね」


 そのことはパパからなんかいかきいてる。どようびとにちようびがやすみのかわり、そのつぎのげつようびはすごくいそがしいんだって。


「うん、そうなの。だからこの前の月曜日と同じように帰って来るのは夜の七時、いやもうちょっと後になりそうだけど、我慢できる?」


 がまんする。パパのためだから。


「宇宙って本当にパパの事が大好きなんだね、それでママの事は」


 ママのこともすき、でもいちばんすきなのはパパとママがなかよくしてくれること。


「宇宙って本当にいい子ね、あなたみたいないい子を持ってママは幸せだわ」


 ママがこんなにほほえんくれるなんて、わたしもうれしい。

 でも、なんかきのうはずいぶんうるさかったみたいだけど、なにがあったの?わたしよくわかんないんだけど、ねえママおしえて。



「昨日……昨日のいつ?」



 えーっと、わたしがおひるねしてたころ。なんかパパとママがさわいでたみたいだけど、あれいったいなんだったの?


「あれ?あれはねえ、ちょっとねえ、今度の夏休みに宇宙を映画に連れて行こうって思ってたの。パパは綺麗な自然が一杯映った映画がいいって言うけど、ママは宇宙にはやっぱり普通のアニメがいいかなって」


 なーんだ、そんなことだったのね。ごめんねママ、わたしそのときなにがあったんだかわかんなくておおさわぎしちゃってた。それでもうひとつごめんね、やっぱりわたしはパパのいってるしぜんがいっぱいのえいがのほうがみたい。


「そう、私も何となくそう言うかなって思ってたの。でもね、ちょっと最近、ママ疲れてイライラしてたでしょ?だからむきになっちゃって…脅かしちゃったならごめんね」


 いいのいいの、わたしはパパとママがなかよくしてくれるならいいんだから。あっそろそろようちえんのじかんだったよね。


「うん、行ってらっしゃい」


 それで、ようちえんにいってかえってきたわたし。ひとつおもいだしたことがあったんだけど、そういえばママ、おめめのおいしゃさんってはなしはどうなったの?


「大丈夫、ママがちょっと心配し過ぎちゃっただけで宇宙は何ともないって。ママはそういう性格なの。幼稚園の同じ組の子もいろんな子がいるでしょ、それと同じようにパパやママにもいろんなパパやママがいるの」


 そうなんだ、わたしもパパもママもしてないけど、めがねっていうのをしてるこもいるんだよね。たしかめがねって、おめめがわるいひとがかけるものでしょ?


「そうそう、みんなみんな違うの。ママもパパもその事を宇宙にわかって欲しいの。この世界はものすごーく広くて、パパもママも全然知らない事が数え切れない位あるの。だからね、宇宙にはちょっとのつまらない間違いとか気にしないで欲しいの、他の子たちのなんて尚更ね」


 なんだかきょうのママはパパみたい。


「そうかなー、人間はねえ、誰かと一緒にいるとその人の影響を受けちゃう物なの。ママもパパのお陰でパパみたいになって来たのかなー、パパもママのお陰でママっぽくなってるのかもしれないけどね」


 ふーんそうなんだ……あっパパがかえってきた。ねえパパ、きょうのおゆうはんはコロッケだよ。さっそくたべようよ。


「駄目でしょ、外から帰って来たら手を洗わなきゃ」

「ああごめんごめん、つい宇宙が嬉しそうに寄って来るから……」


 パパもわたしとおなじことをいわれてる。ねえどうして?


「外から返って来た時って、汚い物もいろいろ手とかにくっついちゃってるの。それをちゃんと流さないといけないの」


 ふーん、そうなんだ……パパのおててをすぐにさわれないのはちょっとざんねん。






「いやー、やっぱりお前の作ったコロッケはうまいなー」

「ありがとう、あなた……」


 いいことをしてくれたひとにはありがとう、これがだいじだよねって、パパもママもほいくえんのせんせいもいってた。じゃあわたしもいおう、


 パパとママにありがとうって……あれ?いまママのおめめまっかにひからなかった?わたしのきのせい?

 でも、パパもそうだったし、ママがそうなってもふしぎじゃないよね、ママもパパといっしょにいてえいきょうをうけたんだよね、そうだよね。パパとママがなかよしでわたしはあんしん。だから、きょうはほんとうにぐっすりねむれそう。





「なあそら、おれのとうちゃんはすげーんだぞ。どんなふうにすげーって?」


 つぎのひ、ようちえんでこうぞうくんがなにかをじまんしたそうにわたしのほうをみてきた。いったいなに、どうすごいの?


「きのうおれのとうちゃんといっしょにおふろにはいったらさー、すごいものをみせてやるっていってさ、あっというまに2キロたいじゅうをへらしたんだ。それでおれがおどろいてるとまたすぐにもとのたいじゅうにもどってさ」


 それでそのたいじゅうけいってはりでたいじゅうをおしえてくれるのっていったら、ちがうっていってた。そんなすうじがでるようなたいじゅうけいでもすうじがきゅうにうごくことってあるんだね。


「ねえねえそらちゃん、ちょっときいてくれる?」


 わたしがじつはわたしのパパもっていおうとおもったら、こんどはとなりのせきのあきちゃんがわたしのかたをたたいてきた。


「わたしのママねえ、きのうわたしにすっごいのみせてくれたの。ママがてをたたくとママのスカートがきゅうにみじかくなって、わたしがどうしたのってきいたら、スカートがながくなったんじゃなくてあしをながくしたんだって。すっごいでしょ、あしをきゅうにながくするなんて、わたしもやってみたい」


 あきちゃんのママって、そんなことできるんだ、すっごーい。でもほんとうはね……


「あきちゃん、なにいってるの?」

「みかちゃん、なにって、きのうほんとうにわたしのママが」

「そんなことあるわけないじゃない、でしょそらちゃん?」


 わたしはなにをいったらいいかわかんなかった。パパもおなじことをしてたよっていったほうがいいのか、みかちゃんといっしょにそんなことはないよねっていったほうがいいのか、わかんないからだまってた。


「そんなことよりわたしのママのはなしをきいて、わたしのママはきのうね、ようちえんからかえってきてわたしがテレビにむちゅうになってておトイレいくのわすれちゃって、ああどうしようもうまにあわないっておもってたら、まゆげをこうくってあげて、そしていつのまにかトイレのうえにすわらせてくれてたの。そのおかげでわたしはおもらししないですんだの」

「みかちゃんのママってすっごいママなんだね……」


 そしたらみかちゃんはそんなことをいってきた。へぇ、みんなのパパやママもすごいんだね。めがあかくひかったりかおがまっさおになったりするぐらいじゃたいしたことはないんだね。むやみにいったらなんかばかにされそうなきがするから、わたしはなにもいわなかった。

 あれ、なんかしらないけどようちえんのまえになんだかよくわかんないけどいろんなものをせおったたくさんのおとなのひとがきてる。どうしたの?あっせんせい、せんせいになにかあるの?


「すみません、昨日の夜なんか変な事起きなかったですか」

「特に何にも……私ぐっすり寝てたんで」

「そうですか……」


 あのひとたちなにをしにきたんだろ、わたしにもきのうのよるなにかおきなかったのってききにきたけど、よるの11じってなに?わたしはいつもどんなにおそくてもごごの8じはんにはねて、おきるのはあさの6じはんぐらいだから、そんなじかんのことはわたしよくわかんない。


「おっかしいなー……いや何でもないんだ、ごめんね……」

「例の映像は何だったんだ…?合成じゃないんだろ」

「光の柱がたくさん並んでてな、この町にさ……」

「まさかねえ、あの噂が」

「滅多な事言うなよ、にしても誰一人目撃情報がないってのはちょっと異様だぞ」

「この町はどうなってるんですかね」


 ひかりのはしらがたくさん?いったいきのうのよるなにがあったんだろ……?


「えーと、ママも夜の11時にはもうぐっすり寝ちゃってたから全然わかんない。パパもそういう話全然してなかったでしょ?そういう事なの」


 ふーん、そうなんだ。テレビじゃあっちでもこっちでもわたしたちのまちをうつしていて、せんせいやママとおなじことをわたしたちのまちのひとにきいてまわってる。

 でもおじいちゃんやおばあちゃんからわたしたちまで、いろんなひとにきいてるみたいだけどみんなそんなことはしらないっていってる。へんなひとたちだね。




「一体この町で何が起きたと言うのでしょうか…さて先生、十日前にこちらの山で観測された謎の光線と此度の光線はいかなる因果関係があるとお思いですか」


 こちらのやまって……あっ、このまえにどようびにわたしたちがいったところだ!すっごいきれいなひかりのはしらだよね……あっ、ママどうしたの?


「パパからの電話。大事な電話だから、宇宙は付いて来ないでね」


 ママはでんわっていいながら、じゅわきをもってどこかへいっちゃった。いったいなんのはなしなんだろう。

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る