バーニングミーとか言う奴

 もし向こうが私の事や昔の事を覚えているのならば、おそらくあんな顔なんかできないだろう。という事はやはり、昔の事など忘れているのだろう。しかしそれにしてもあまりにも顔が似すぎている。


 馬面と言うわけではなく、むしろ丸顔だったがそれでもなおやはりバーニングミーの顔は昔の私の記憶にあった顔と酷似していた。


 いつも締まりのない笑みを浮かべて、時も場合も選ばずにすり寄って来る。どんなに来るな来るなと言っても、嫌よ嫌よも好きの内とか言う恐ろしく都合のいい理論を振りかざして近寄って来る。

 無視を決め込んでやっても、結局お優しい皆様のおかげで救いの手を伸ばさなければならなくなる。


「まあしょうがねえだろ、これが本番ならば腹も立っただろうけどまだ本番じゃねえし。金も手に入ったし向こうだって勝つためにやった結果があれなんだろ?俺が同じことしちゃわない保証なんかないよ、まあ本番でもこれと同じ方針で行くって一枝先生も大林さんも言ってるしさ、俺は俺なりに頑張るからよ。今度はよろしくな」


 よくもまあこんなヘラヘラとした調子で話せるもんだ。隣の馬房に帰って来たバーニングミーを捕まえてあんなことをされて悔しくないのかと吠えかかってやったらこの様だ。


 やはりこいつは私のよく知るあいつだ、何にも変わっていない。よく優しいですねとか言われるが現実は他人に甘く自分にも甘い、そんな奴だ。他人に厳しく自分に甘いよりましだろとか思うかもしれないが、それならみんな見放すから却って楽だろう。

 中途半端が一番性質が悪い。




 それからひと月後、ヘラヘラとした表情のまんま馬運車に乗り込んでいくバーニングミーを私は見送った。あいつがGIに向かう中、私は厩舎でお留守番だ。

「仕方がないか、GIがこれで終わりな訳じゃなし」


 ソエとか言う、若い馬にありがちな故障。三週間前の、あいつのいない競馬場で行われたレースを勝った私の所に、あいつ以上に全く歓迎していないその客は入り込んで来た。

 楽観的に言ってひと月、おそらくは二ヶ月ほどレースに出られない。こうなった以上けがを治す事が最優先だ、おとなしくしているしかない。


「悔しい気持ちはわかるけどさ、今は病気を治すのが最優先事項なんだよ」


 もう一枝先生にはさほど期待していない。私が文字通り唾棄したのは、自分のケガのせいではなくあいつのせいだ。出られなくて悔しいとか言う訳ではない、ただ単にあいつが気に入らないだけだ。あいつがGⅠを走って自分が走れないから、そんな理由すらない。

 ただ嫌いなだけだ。


 私が最大限に不貞腐れた顔をしたつもりで夕焼けの空を眺めていると、そこには雲一つありゃしない。

 不思議な事に、私の機嫌が悪い時はおおむね空の機嫌はいい。雨が好きとか言う訳ではないが、なぜかいつもこうなのだ。お前の私怨なんぞに耳を貸してなんかやらないとでも言うのか、まったく健全な話だ。


 そしておそらくはこれと同じ晴天の下で行われたレースで、一枝先生と大林騎手は私と同じようにイラついているか、さもなくとも悄然としているのだろう。それほどまでに、朝日杯とか言うGⅠレースで受けた衝撃は大きかったらしい。


 まともに走れば勝ち負け可能だと言う理屈で二番人気に推されたバーニングミー、あいつは懲りずに前回と同じように外から追い込みをかけようとしたらしい。まあそれは外枠だったから仕方がないとしても、またしてもその前には別の馬がいた。




 五番人気、単勝馬券の倍率で言えばほぼ倍の配当だった存在。そのギフトトゥゴッドなるサラブレッドの前に、バーニングミーは四馬身もの差を付けられた。


「仕上がっていれば好勝負だが」

「三ヶ月ぶりの上に前走タイムも平凡」

「二連勝と言っても1200m、マイルは疑問」

 だったのが

「三冠確実」

「これでまだ未完成かもしれない恐ろしさ」

「血統的にはこれから本番」

 とまあものすごい手のひら返しだ。


 まあ印象なんて物は本来様々な事象によりアップデートされて行く物だから仕方がないのだが、それだけにアップデートされる気配がみじんもないあやつの事を考えると胃が痛む。


「向こうだって十全と言う訳ではないが、あの走りを見ていると2400mどころか3000mでも長そうには見えない。勝つとすれば消耗戦しかないが、バーニングミーのような切れ味タイプの馬では難しいかもしれない」


 一枝先生も白旗状態だ。もちろんギフトトゥゴッドが故障と言う事態を迎えない可能性がない訳ではないにせよ、だとしてもそれで勝った所で空き巣だ。

 いつまでもあーギフトトゥゴッドがいればなあと言われ続ける。一枝先生の師匠の人も似たような話をこの目で見て来たらしい。とにかく今日この日をもって、ギフトトゥゴッドは私たち世代の中心となったわけだ。


「ああ悔しいねえ、実に悔しいよ。あそこまで素晴らしい走りやられちゃうとさー、先生が言ってたようにもうちょいスタミナを鍛えないとやばいかなーって思っちゃうし、次走はもうちょい長い距離にしてもらおうかなー」


 それなのに!私が大いなる怒りと毛一本ほどの優しさを込めてあんなひどい負け方をして悔しくないのと延々十分近く吠え続けてやったと言うのに、バーニングミーはまあ全く締まりのない面相をこっちに向けながらああはいはいと聞き流してばかりだった!


 ようやく文面だけはそれなりに悔しそうにしながら前向きそうなことを言ったものの、こんな芸術的な棒読みで言われては初対面であっても信用などできはしないだろう。

 全力をもって好意的に解釈してやるとすれば、ギフトトゥゴッドと言う存在に打ちのめされてしまいやる気を失ってしまったと取る事は可能だ。だが普段の言動を見ていればそんな見方はただのおべんちゃらに過ぎない。抜けるような青空が広がる下で天井ではなく底が抜けたようなお人好しぶりを振りまきながら飼い葉をむさぼるその姿は、G1において十六頭を負かした馬のそれではなかった。




 結局、私の足がまともになったのは年明けの一月半ばだった。その日から始まった調教はこれまでよりずっと軽く、ずっと気持ちが良かった。三歳馬として、先輩との調教を行う時も出始めた。


「しっかり喰らいついていますよ」

「この調子なら共同通信杯行けるかな、まあ様子を見てからかな」


 年末年始まともに走らずに過ごしていたせいで体重は増えたし疲れはない。およそひと月後だと言う共同通信杯なるレースはとりあえずの目標としては悪くなかった。それにしても先輩との調教は空気が引き締まる。あいつと走っている時とは全然違う。季節とかは関係ない、本番の舞台にいるような気分になって来る。


 一方で同じ先輩と一緒に走っているあいつの所の空気はどこか生ぬるく見えてしまう。私が一緒に走った先輩は去年の年末にやっとオープンクラスに上がったばかりのB級オープン馬であり、あいつが一緒に走っていたのは重賞、それもGⅡを勝った馬だと言うのにどこか空気が弛緩しているように見えてならない。


 あの空気を、私は間違いなく吸っていたし、嗅いでいた。そしてそれだけで気持ち悪くなれた。実際に一歳の頃にはそれが原因で嘔吐した事もあった。そこまでやればそりが合わないのだという事に気付いても良さそうな物だが、まことにお優しいオーナーである城田様とそのお仲間様は全くその事に気付こうとせずただ体調不良のせいにした。


 こんな調子であった以上、嫌悪をむき出しにした所で生まれた瞬間から敵同士になる運命を背負ってしまった悲しさとか言うもっともらしい正論を振りかざしてそれで終わらせてしまっただろう。


 そりゃ毎日毎日へとへとになるまで働かされて過労死するよりはずっとましかもしれない。競走馬の「労働」なんてせいぜい月一回、どんなに激しくても月三回だ。半年一年何もしない事など珍しくもない。我ながらいいご身分だとは思うが、それにしたって嫌な相手と四六時中一緒に過ごすのは耐えがたい。


「どうも気合負けって言うか、わざわざ離れて走ろうとしていますね」

「よれる馬じゃないのにな、もうちょい待つ必要があるか」


 そんな相手と一緒に走らされればやる気が萎える事は明白だ。私なりの最後の手段をもって拒絶の意志を示してやったはずなのに通じる気配さえない。そしてあやつはG1を走って来たと言うのにまあ元気一杯だ。




 で、運命と言う物は常に私のそっぽを向く。本当にたまたま、私のデビュー戦と二戦目は十頭立てと言う少頭数だった。

 一方でバーニングミーのデビュー戦は十五頭、次からはずっとフルゲート。そして枠順は私が共に一番外である八枠、あいつは四枠→二枠→五枠→七枠とまんべんなく散らばっている。そしてそれで毎レース勝ち負けしているのだからあいつは万能となり、私はまだもまれるとどうなるかわからないとなる。


 そのせいで、私は復帰予定戦であった共同通信杯を走る事ができなかった。一週前の時点で十六頭が登録しており、間に入ってしまったらどうなるかわからないと言う理屈だ。話によればその共同通信杯とか言うレースにはこんなに多く登録してくる事自体珍しいらしく、そして今週に行われるきさらぎ賞とやらもまたしかりらしい。そのきさらぎ賞にバーニングミーは駒を進める、そして私は共同通信杯を走れない。


 ずぶとさと言う物が競走馬としての才能ならば、私は間違いなくそれが欠如しているしあいつには備えられているだろう。だがずぶといと言うにはあいつは迫力がなく、私以外にもさほどそういう所を嫌われている訳でもない。なぜかわからないが、愛されてしまう存在。そしてそれを鼻にかけるほどでもなくなんとなく無思慮に振り回しては周りの連中から適当に愛され、その連中の数分の一の連中から適当に疎まれる。それはずぶとさとも違うもっと奇妙な類の才能と言う物かもしれない。


「やはり、ギフトトゥゴッドを避けての出走でしょうか」

「これはスプリングSとか若葉Sとか、そこらへんも結構怖いかもしれませんよ」


 本番で戦うのはしょうがないとしても、それまではなるべく避けて通りたい。当然の摂理であるが、その当然の摂理に従って登録を外されたとなるとなおさら腹立たしい。一方でバーニングミーはその当然の摂理に従いきさらぎ賞とやらを走り、二分の一馬身差と言う僅差ながら見事に勝利した。

 だがその事が逆にギフトトゥゴッドの強さを際立たせる結果になった、それなのにバーニングミーは相変わらず笑っている。重賞を一番人気で勝ったんだからほめてやってもいいだろと思うのは勝手だが、それで痛い目に遭った事をもうみんな忘れているのか。

 まあこの際だからひと時の栄光を楽しんでおこうとでも言うのか、ああ彼奴が吐き出す空気のようにぬるくなっていく空気と水がうらめしい。花粉症でもないのに毎年春は嫌いだ、彼奴のぬるま湯から上がった湯気が全てを覆いつくすから。







 六頭。私とこいつと、ギフトトゥゴッドを除けばたったそれだけ。どさくさ紛れを狙うような、狡猾と言うより殊勝と言った方がよさそうな奴もいない。


「タイム上では二頭にそれほど差はありません。まあバーニングミーは現時点で七割の仕上がりと言った所で、ビーアワスタートは95%まで持って来ています。バーニングミーはもう大丈夫ですがビーアワスタートはここで権利を取らないと皐月賞がないのでやはり本気で行きたいと思います。ただ少し他の馬を嫌がる所があるのでやはり外枠が欲しいですね」

「ギフトトゥゴッドを負かすのはビーアワスタートしかないと言う話もありますが」

「ギフトトゥゴッドもここは100%では来ないでしょうけど本番ではどうか、まあまずはおとなしく出走権獲得としておきましょう」


 弥生賞。このレースで三着以内に入れば、皐月賞に無条件で出走できるようになる。賞金のない私には、それがほぼ皐月賞に出る絶対条件だった。ちなみにこの弥生賞って言うのは皐月賞と同じ中山競馬場同じ2000mで行われる、と言う訳で皐月賞のトライアルレースとしてはもっとも重みのあるレースである。ギフトトゥゴッドがここを選んだのはまあそんな理由だろう。

 本来なら、ここでギフトトゥゴッドなる馬がどんな奴なのか聞いておくべきなのかもしれない。だがどうしてもそんな気にはなれない。必要であろうことはわかっているが、それだけにたちが悪い。


「ギフトトゥゴッド?あれは本当の名馬だね。レースの後聞いちゃったんだよ、まだまだこんなんじゃダメだって言ってたの。ったく俺らなんかじゃ絶対に到達できない高みってのがあるもんだなと思い知ったよ。今度の弥生賞もあのお方のお尻を拝んで過ごす事になるんだろうな、まあ向こうが2000mに耐えられなくてこっちが2000mに耐えられるのを祈ろうじゃないか」


 そんな自分の気持ちを全力で抑え込んで口を開き、うちの厩舎で一番間近でギフトトゥゴッドを見たであろうやつに聞いてみたらこの言い草だ。

 しまいの方に取って付けたような調子で希望に満ちたセリフを抜かしたもののそれ以外は完全にギフトトゥゴッドのためにしゃべっているような有様で、戦う前からこちらの戦意を萎えさせようとして来る。


 それでもまだもしそれがもう少し野太い声で放たれているのであれば力一杯の皮肉を込めた強がりにもなりそうな物なのに、聞き覚えたくもない甘ったるい声で言う物だから実に気持ちが悪い。悔しいと思わないのとか檄を飛ばしてやった所でのれんに腕押し、豆腐にかすがいである事はわかり切っている。


 希望がまるでない訳でもない。天気予報によれば、今度の土曜日の降水確率は80%。日曜日も40%だと言う。

 私だってまだ一度も走っていないが、いわゆる重馬場になれば付け入る隙が生まれるのではないだろうかなるのは自然な話だ。果たして天気予報の通り雨が降り始めた。うるさいほどの雨ではあるが、これが勝因になってくれるかもしれないと考えると気分は悪くない。

 それに冬は乾燥して喉によくない、走っていなかった私でさえそうなのだから走っていればなおさらだろう。人間はよくこの時期に走るが、今になって思うと不可解で仕方がない。





 枠順は五番、ちょうど真ん中だった。バーニングミーは一番で、ギフトトゥゴッドは四番。


「一番内枠かよこんな時に限ってさあ、参っちゃうよなあ。ああそうか、でも決まっちゃった手前しょうがないよなあ。でも九頭立てで枠順なんて関係ないか」


 だったら換われよなんて言うのが無茶ぶりである事はわかっているが、たまにはそれぐらいの事を抜かしてもいいだろうと思ってもみたらいつもの通りだ。おたまじゃくしがいくら成長しようとカエル以外にならないように、こいつはいつまで経ってもこのまんまだ。

 ギフトトゥゴッドのように自分の地位に満足せずさらに修練を積む事もなければ、あれほどもてはやしているくせにその真似をしようとさえしない。それなのに、今までの五戦で三勝二着二回。ギフトトゥゴッドのように負かした相手を降参させてしまうような才能はこいつにはないが、成績としては十分過ぎる。


 大雨でこそないものの止む事なく降り続く雨のせいで、土曜日の最終レースの頃には重馬場を通り越して不良馬場になっていた。当然タイムは伸びない。それでも弥生賞における前日での一番人気は言うまでもなくギフトトゥゴッドで、二番人気はバーニングミーと言う2000mも重馬場も走った事のない二頭だった。私は枠順と同じ五番人気。


「スピード勝負にはなりにくいだろうがその分勝負根性とスタミナの勝負になりそう。今回も少頭数とは言え揉まれた経験のないビーアワスタートはどうか?」


 調教なんぞまともに見ているとは思えない記者の評はいつもの通りだ。


「前走でビーアワスタートに負けた二~四着馬は皆、次走で馬券に絡んでいる。レベルが高い可能性ありここでも無視はできまい」


 たまにこういうのがあっても、穴馬担当の記者だったりする。別に本命扱いされようが穴馬扱いされようがあまり関係はないのだが、それでもやはり自分の存念と違った見方をされるのは気分のいい物ではない。

 ましてや


「バーニングミーとビーアワスタート、二頭仲良く寄り添いながらの調教」


 とか抜かしている奴はいっぺん蹴り飛ばしてやりたいぐらいだ。例によって例のごとくあのバカから離れようとしていたのを戸柱さんに無理矢理に抑え込まれて強引に併せられた時は深く嘆息した。自分では相当大きな声を出しているつもりなのにこの有様だ。









 日曜日、しとしとではあるが雨はやまない。さすがに不良馬場とまでは行かないにせよ重馬場のまま第一レースが始まり、そしてそのまま時間が流れた。

 冷たくない雨。桜のつぼみがなんとなく開きかけている時期にふさわしいのかもしれないその雨は私にとっては実に不愉快だった。


「やや重まで回復するかな」

「ならないでしょうね」


 別に馬場がどんなだろうが私には関係ない。もちろん走った事のない馬場に対する不安はあるが、そんなのは大半の馬にとって同じ事だ。時間が近づくに連れ憂鬱な気分は深まって来る。


 およそ四ヶ月ぶりの競馬場。と言っても中山競馬場は初めてだから四ヶ月ぶりもへったくれもない。そしてこの中山競馬場が初めてなのはあいつも同じだ。枠順が五番と一番だから見えないだろうしそして馬運車に乗せられている時から顔を合わせないようにしているが、おそらくは六戦目にして初めての競馬場だと言う現実に浮かれ上がっているのだろう。見なくてもわかる。


 そんな事を考えている間に第十レースが終わり、いよいよ私たちの番が近づいて来た。枠順通りに通路に向けて引かれて行く私の目の前で、ギフトトゥゴッドの尻が揺れている。ありふれた鹿毛の、ありふれた黒い尻尾。オーラとか言う類の物は感じられない。どこまで強いのかだなんて、走ってみない事にはわからない。


 狭い通路を抜けてパドックに出ると、雨は小止みになり空は中途半端に白くなっていた。だがそれでギフトトゥゴッドの輝きがどうと言う訳でもない。これから戦う相手にそんな物を感じてうんちゃらかんちゃらとか言う理屈を並べ立てるつもりもないが、ただ単純にそういう類の力を感じる事ができなかった。曲がり角に来た際にちらりと顔を見てみたが、顔もまた特に目立つ所はなかった。私にあるような顔面の小さな白い模様いわゆる星もなく、足も全てまっ茶色。強いて言えば目つきだけはこれから戦う男のそれっぽかったものの、後はどうという事のない普通のサラブレッド。それが私にとってのギフトトゥゴッドの第一印象だ。


 もしこの第一印象を他の馬が知ったらどう思うだろうか。大胆不敵だとある意味での称賛を行うか、無知蒙昧だと嘲笑するか。GⅠ馬と言うもっともらしいようで実際もっともな肩書がくっついているからとか言う繰り言を述べるつもりはないが、単勝一四〇円とかG1馬とか言う肩書きを気にしないで見てみると実際ただのサラブレッドに過ぎない。そして、これでも私にしてみれば過大評価である。言


 うまでもなく、それはバーニングミーと言う名前だけ燃えていて実際は燃えカスか消し炭かマリオネットのような輩のせいだ。こいつがやたらもてはやすと言う事は、逆に大した存在ではないという事ではないか。お世辞がうまいとか言う訳でもないが、常にペラペラと軽薄にしゃべり、いくら注意しても聞こうとしない。黙れと言えば一応は黙るが、数秒もしないうちにまた口を動かし始め、いい加減にしろとどなるとまるで親でも死んだかのように黙りこくってしまう。たやすく許してはいけないと思い口をつぐんでいると、どんどんと空気が重たくなりいつも負けてしまう。そんな事を繰り返すのはもう嫌だった。

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