神様、交渉をする。


「天使君。ものは相談なのだがね」

僕はCDショップ前の悲劇から何とか立ち直り、仕事に向かっていた。

「何っすか神様」

「天使君は…最低賃金というものを知っているかい」

「はぁ。知ってるっすけど」

「地上では一時間に千十三円を超える賃金で人々は働いている」

「地方格差あるっすけど、神様の好きなアキバでは確かにそうっすね」

「つまりだよ?天使君?」

僕は滑るように華麗に土下座をキメた。

「僕にもお金ください!」

「はぁ?なんなんっすか。アンタ神なんだから金なんて適当に生成したらいいじゃないですか」

「何を言ってるんだ天使君!そんな神の力で産み出した金など所詮偽物!もはや偽札!」

「はぁ?」

「スカーレットを応援している「スカーレティア」の皆様は自らの仕事を日々頑張り、そうして稼いだお金をスカーレットの応援に使っている!僕はその美しさに感銘を受けているんだ!いいかい?スカーレットの応援に偽札を使うだなんて言語道断!非道下劣!」

「そっすか、はいはい」

「そこでだ天使君!…僕に…時給をくれないか。」

「いや…」

「高望みだとはわかっている!ただ判子を付くだけの仕事で時給をもらおうと思うなど卑しいことだと…。だが、だが!どうか情けを!神の慈悲を!」

「だから神様アンタっしょ…」

「お願いします!」

僕はもう一度深く土下座した。

「…ちょっと待っててくださいっす」

天使君はそう言ってどこかに電話をかけた。


「…神様、天界の経理と話が出来たっす」

「そ、それで…?」

「俺の交渉術に感謝してくださいよ。神様がこれまで以上に業務に励むのを条件に時給を許可してもらいました」

「天使君神!」

「ただし、試用期間1カ月は時給900円。試用期間に仕事態度等が良くないと時給打ち切りになります」

「がんばるがんばる!超がんばる!」

「試用期間が無事終われば時給千円。半年に一度の査定で時給の見直しがあります。神様が頑張れば頑張るほど昇給するシステムにしておきましたから」

「天使君神!神の中の神。いわばオオカミだね!」

「いや天使っす」

僕は飛ぶようにデスクについた

「僕頑張る!バリバリ仕事する!そして稼いだお金でさりぃちゃんとチェキを撮るんだ!」

「はい。頑張ってくださいっす」

僕は溜まっていた書類に勢いよく判子を押し始めた。

「…神様って企業で言ったら社長とか会長職だから時給じゃなくて役員報酬で、地上の平均だと月五千万とかなんっすけどね」

「ん?天使君?何か言ったかい?」

「いえ、時給アップ目指してガンガン仕事頑張りましょうね、神様?」

「うん!!!」


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