その253 創造思惟妄想
さて、時間もないので手早く妄想したいところなのだけど……。
馬鹿やろうこの野郎! ラウラ・メーリアン! 擬人化を
と手早さを求めると脳内の先生からおしかりを受けてしまうので、ここはそんな甘えは許されない。
「想像の強度が強い方が強い剣を生み出せるのは間違いないとは思うが……」
「うん! しっかり妄想の強度を高めるからね!」
「想像と妄想、同じような意味だとは思うのであるが何故だろう、同じことを言っているように思えない」
想像は創造を生み、妄想はもう創っている。
なんて言葉遊びはさておいて、私にとっては創造より妄想の方が興奮が増すという違いはあります。
より強いエクシュを生み出す為にもしっかりとした妄想は重要!
そんなわけで速度を意識しつつも、私にとって違和感が出ないような妄想を心掛けることにする。
擬人化に重要なのは元の要素を大切にすることだ。
馬であれば流星と呼ばれる顔の白ぶちを大事にしたり、服装も騎手の衣裳をモチーフとしているように、そういったネタ元の細かな部分を拾うことで擬人化はリアリティを強める。
本来擬人化はリアルでもなんでもない。
けれどリアリティとリアルは違う。現実とは異なる現実を見せるために、見る者を惹きつけその世界に浸らせるために、その柱となるリアリティは重要なのだ。
翻ってエクシュなのだけど……改めてその姿を見てみると……うん、まあ、何度も言うように落書きです。
落書きの擬人化は難しい!
どの要素を拾えばいいか全く分からないよー!
素直に考えれば子供として擬人化されるのが普通なのだけど……声は渋いんだよね。
なんというアンバランス。まるで犬の声を出す猫の様相を呈している。
とはいえ、ショタで声は渋いと言うのはキャラとしてなくはない。
むしろあり寄りはべり、いまそかりだ。
なんならロリなのに声が渋いという前例すらオタク界隈では存在しているくらいなので、これくらいはギャップ萌えの範疇と言える。
見た目は侮られがちだけど紳士的で実力者。
エクシュの要素としてもイケボショタは合っている。
合ってはいるのだけど……いまいちしっくりこない。
エクシュにショタイメージが皆無なせいだろうか。
やはり私にとってのエクシュは最高に頼りになる名剣。
いつだってこちらを気遣ってくれる大人なジェントルマンだ。
でもへっぽこ感も残したい……。
「くっ、我が儘な私の妄想め……!」
「主よ、悩んでいるところ申し訳ないのだが、もう時間がないかもしれない」
「ラウラー! まだかー! もう腕がぷるっぷるしてるぞ! ぷるっぷるだぞ!」
「あっ、ご、ごめんね、グレンー!」
魔法で足止めを引き受けているグレンとイブンも、もう限界が近かった。
その筋肉でガッチガチな腕を、ぷっるぷるに震えさせている。
なんという申し訳なくも萌える光景か!
あああああ、早く妄想を確固たるものにしないと!
渋くてへっぽこ渋くてへっぽこ……ええっと、ええっと。
ドラゴンの揺れがドンドンドンドン増していくなか、私の脳も揺らされて、妄想も揺れ動いていく。
そして様々な思考が揺り混ざった結果──私の妄想は唐突に、一瞬だけその形を見せた。
「こ、これでいっけー!」
「むっ、流れ込んでくるぞ。主の思いが!」
私は妄想を流し込むように目を瞑りエクシュを握りしめる。
するとエクシュの体は青白く輝き始めた。
なんかもうバタバタで妄想しちゃったけれど、妄想未満と判定されて具現化されない事態は回避できたらしい。
あとは出来栄えの問題だ。
でも私、最後にどんな妄想したっけ!?
焦りと混乱と揺れと萌えがごちゃまぜになって、自分でも自分の妄想が分からなくなってしまった!
あー! どうかまともであっておくれー!
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