その248 略すの下手か?
脳内で様々な黒歴史があふれ出す黒歴史バーゲンセールの中でも、私は何とか冷静を保っていた。
そもそも私にとって黒歴史など現在進行形で量産中なのだ。バーゲンセールの為の黒歴史大量生産は常に行われている。
故に黒歴史など恐るるに足りない!
「恐るるるるるるるるに足りない……!」
心の中では堂々としたことを思いつつも、お口から溢れる言葉は素直だった。
るがゲシュタルト崩壊を起こしてしまうほど怖いし動揺しています!
しかし、推しのためにも無様なところは見せられない。
私は脳内で推しの顔をスライドショーしていき、一旦心に安寧を生み出す。
……よし、指の震え無し。
こちら管制塔、離陸準備完了しました。
これよりブラックマインド号(命名ラウラ・メーリアン)離陸開始します。
私は紙飛行機をつまみ上げると、柱から少しだけ顔を出し様子を窺う。
するとそこにはシャンデリアの真下に何とかドラゴンをとどめようとする2人の姿が。
しかし、すぐにでもドラゴンは動き出す気配を見せており、シャンデリアを落とすほどの隙にはなっていない。
もうここで投げるしかない!
テイクアウト!
……じゃなくてテイクオフ!
渾身の力を込めて放った私の一投は──ヘロヘロと緩やかに飛んだ。
ブラックマインド号ー!? めちゃくちゃ頼りない飛び方してるー!
作り手に似てしまう物なのか、ブラックマインド号はランニング中の私にそっくりだった。
あるある、あんな感じでヘロってるヘロってる。
しかし、私に似すぎてしまうとこのまま目的地にたどり着けず墜落ということも……。
その予想は悲しいことに当たっていて、ブラックマインド号はドラゴンの元へ辿り着く前に失速にあい、下を向いてしまう。
ぶ、ブラックマインド号ー!
堕ちるのは心だけにしてー!
墜落必至のブラックマインド号を前にして思わず目を瞑りたくなってしまう私だけど、なんとブラックマインド号はそこから突如急浮上し始める。
ぶ、ブラックマインド号が光堕ちした!?
いや、結局堕ちたんじゃ駄目だから、この場合天に召された!?
一体何が起きたのかと慌てふためいていると、視界の隅に任せろと言わんばかりにこちらに親指を突き立てているグレンの姿が見えた。
……そ、そうか! グレンが風魔法で補助してくれたんだ!
何も言わずともこちらの意思が伝わって即座にサポートしてくれるなんて……神か?
もしくはイブンがこちらの心をずっと読んでいて、グレンに伝えてくれたのかもしれない。
しかしこの際どちらでも構わない!
ありがとうございます推し!
推しの力により再浮上を始めたブラックマインド号は急速に速度を増し、やがてドラゴンの目の前をスイッと通り過ぎる。
瞬間、ドラゴンは吸い込まれるようにブラックマインド号を目で追った。
動くものを目で追ってしまうのは生物の本能である。
これは意思で妨げることが困難な事象であり、それに加えてブラックマインド号は元々身代わり用の魔法紙。
いかにドラゴンが優れた生物と言えども、釣られてしまうのは無理からぬ話だ。
やったよー! ブラックマインド号ー!
略してクマインドー!
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