その140 ふわふわタイム
お兄様が優秀すぎてクロウムさんの居場所はすぐに分かってしまった。
冷静に考えてみれば住居不定な存在よりは、封印という居住が完全に固まっている存在の方が居場所も分かりやすいのは当然かもしれないけれど、それにしたってお兄様、すごすぎです。
「じゃあ~、封印が緩んでないか確認しましょうか~」
「緩んでいた場合、ニムエさんが締め直すんですか?」
「そうなるわねぇ~」
あっさりとニムエさんはそういうが、いやいや、結界を直すなんて、かなりハイレベルなことではないのですか?
「やはり神聖な存在だけあってちっこくても優秀じゃのう」
「ヤバいですわね。ナタ学院長のおまいうが止まりませんわ」
とにもかくにも、封印を確認することが今最も効果的で、かつ素早く出来る世界救世の一歩らしい。
特に手間がかかることでもないようなので、さっさと済ませておきたいところだ。
なにせ、こちらはジェーンの恋の応援という重大すぎるミッションが待っているのだから……!
ちなみに落ち込むヘンリーは「記憶を一部分だけ消す方法は……」などと何やら恐ろしいことを言っていた。
これがフラグになってヘンリーラスボスルートとかになりませんように……!
★
さて、封印されている場所、略して封印地へ行くのだが、一応は秘密となっている場所なので大人数で押し掛けるわけにはいかない。
なので、ある程度人数を絞っていくことになったのだけど、結果的に私・お兄様・ジェーン、そしてニムエさんという何処か見慣れたメンバーになった。
この変則旅行チームになったのには理由があって、まずメーリアン家は敵が多い家なので、力を持った他家に情報を渡すのは非常に問題があると言うのが挙げられる。
いくら仲良しな私たちと言えども、家同士のことには一線を引いておかなければ後々面倒なことになりかねない──と言うのはお兄様の言い分であり、実際、ごもっともな正論であったので反論する者はいなかった。
そうなると身内である私とお兄様が行くのが最も角を立てない丸い結論となるのは当然として、そこにジェーンも加えたのはニムエさんの強い希望のほかに、ジェーンには家の力がないからというのもある。
そう、ジェーンは家同士の話など関係ないのだ。
そんなわけで封印地のあると言う場所に向かうため、四人で山登りに励んでいるわけなのだけど……そこで私は思い出した。
私の体力がクソ雑魚であることに……!
「ひぃ……ひぃ……」
「ラウラも成長したな……」
「あれぇ!? 何も変わっていないと思うのですが!?」
汗水鼻水涙、全てを垂らしながら山を必死に上る私の姿には、成長のせの字も感じられないと思うのだけど何故かお兄様は満足げだった。
「前は背負われていたが、今は自分の足で登っている。体力が付いたな」
「つ、ついたのでしょうか……」
あくまで一か月程度の運動なのでそこまで効果は実感できないのだけど、お兄様から見れば急成長しているらしい。
でも、きついのは変わっていないのですが……。
「短期間でこの成長、すごいですよ!」
「そう、すごい?」
「すごいぞ」
「そうか……私ってすごいんだ!」
「乗せられやすいわね~」
甘やかされまくっている私の姿を見てニムエさんはあきれ顔である。
しかし、今は甘やかされたすぎる!
だって辛いのだもの! 飴が欲しいのだもの!
「もっともっと甘い言葉を私に囁いてください!」
「とんでもないこと言ってるわ~」
「ここで倒れたらお荷物確定なんですよ……!」
「仕方ないわね~、じゃあほいっと~」
「ほぎゃああああああああああああああ! 何故私の背に乗るのですか!? お荷物確定とはお荷物を背に乗せること確定の意味ではないのですよ!? スパルタすぎでは!」
きついと言っているのにぴょんっと私の背に乗っかってくるニムエさんの、そのあまりに非人道な行いと、子供らしいフワフワとした感触に思わず叫び声を上げてしまうが、直後に異変に気付く。
あれ、軽い……どころか体から元気が湧いてきたような。
まさか、私は子供を背負うだけで元気になるようなハイレベルの変態だったのか……!?
「子供を背負うと力が湧いてくる体質だったなんて……」
「ラウラちゃんはそこまでのヤバいやつじゃないと信じているわ~。安心して~、私のいい感じのオーラでいい感じにしているだけだから~」
「なんだかすっごくふわっふわした説明ですが、確かにいい感じに元気になりました!」
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