その141 今にも壊れそうな平穏
ニムエさんの謎オーラによって湧いてきた謎パワーのおかげで、謎の活力を得る謎な私である。
と、とにかくこれでお荷物になる事態だけは避けられた!
一人だけあからさまに役立たずだと色々と辛いから、これは本当によかった……よかったよぉ!
「そんなことより~、どうしてジェーンちゃんにも来てもらったか分かる~?」
背負われたままに耳に口を寄せて、ニムエさんが囁いてくる。
ううっ、これは動揺せざるを得ないが、今は山登りの最中! 一次の緩みが死につながるのだから、真面目に真面目に!
「えっ、い、家柄が関係ないからだと思っていましたが」
「そんなの私が考えるわけがないじゃない~」
「そこは考えて欲しいのですが!?」
基本的に人間の些細で細々とした諸事情には興味のないニムエさんなので、当然家同士の折衝など考えているはずもなかった。
彼女はもっと広く、世界規模で物事を見ているのだ。
「恋愛よ~恋愛~。ジェーンちゃんとお兄さんを一緒に連れてくれば~、多少は可能性が生まれるじゃない~? 一応~、一番好感度高かったのはお兄さんだしさ~」
「あっ、なるほど! いや、でも、誤差の範囲でしたけどね?」
ジェーンが恋することはそのまま世界を救うことに繋がる。
流石はニムエさん、クロウムさんという巨悪への対処を考えながらも、同時進行で別軸の世界救世も成そうとしていたとは。
しかしお兄様の好感度も実際のところ低いので、超低空飛行の争いと言わざるを得ないのだけど……。
「一番希望があるのは事実よ~、だってラウラちゃんのお兄さんだから~、結婚しちゃえば貴女と家族になれるもの~」
「お兄様のセールスポイントそこなんですか!?」
「あら~、結婚相手の家族って意外と重要よ~」
「うわっ、幼女からそういうこと言われると複雑な気持ちになります!」
見た目は子供、頭脳は大人を通り越しているニムエさんの言うことはあまりにも含蓄があった。
確かにどれだけ好きな人相手でも、家族に嫌な人がいたら結婚への意欲とかガンガン下がりそうだもんね……うーん、嫌な現実。
「あれ、でもその理屈で言えば当家は駄目ですか。悪名高いメーリアン家ですから」
「そこをマイナスに思うジェーンちゃんじゃないんわよ~。良いところをきちんと見てくれるわ~」
「今からその最もマイナスな部分を見に行くんですけどね……」
そう、これから出向くのはメーリアン家のマイナスの極み。
いやさ、マイナスの礎を作ったある意味中興の祖みたいな人の封印地である。
ドン引きされて好感度下落したりしないか結構心配かも……。
「ま~、封印がしっかりなされていたら大丈夫よ~。それに~、ほら~、前の方で結構楽しそうに話しているわよ~」
「あら~~~~~~~~~~~~~! 本当ですね!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
「いきなり興奮するじゃないの~」
ゆらゆらと揺れる手で前方を指差すニムエさん。
その指の先の方では確かにお兄様とジェーンが何かを面白そうに話していた。
おお、尊い光景が前方で花開いている!
尊過ぎて尊みの秀吉が推見城で薨去してしまうレベルかも……!
「ただ~、話している内容はラウラちゃんのことね~」
「尊さが急に薄れましたね」
「すっと落ち着きすぎよ~!?」
「いや、なんか、私が間に挟まっている気分になるので……」
それはオタクとして非常に微妙な事態だった。
まあ、妹の友達と話せば、話題が自然と妹のことになるのは仕方ないのだろうけれど……。
「ちなみに封印がしっかりなされていなかったらどうなるのですか?」
「その時は頑張ってドアを閉めるわ~」
「そんなノリなんですか!?」
「ぶっちゃけ~、結構ありそうだと思っているのよね~……クロウム・メーリアンなら内側から封印を開けかねないわ~」
「いきなり最終決戦とかにならないことを祈りますよ……」
そんなこんなで山を登り、木々を掻き分け、辿り着いたのは山の中腹あたり。
そこにはこれまでの自然豊かさを切り離したかのように、不可思議に禿げた場所があって、まるでUFOに森の一部さらわれたような姿になっていた。
所謂一つのアブダクション。
ちなみにキャトルミューティレーションは動物の内臓や血が抜かれた怪奇現象のことでなので間違えないようにしよう!
キャトれ、キャトれる、キャトれれば、キャトれろ(キャトルミューティレーション下一段活用)。
急に何をアホなことを考えてるんだと思われるだろうが、そう、アホなことを考えて一度頭を落ち着けているのである。
何故なら……この禿げ地の真ん中の方で謎のヒビが浮かんでいたからだ。
空中にヒビがあるこの状況、明らかに封印に綻びが生じている……!
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