番外編
番外編2 寝ても覚めても(ジェーン視点)
おはようございますジェーン・メニンガーです。
地元では母が大変失礼しまして、恥ずかしい限りのジェーン・メニンガーです。
今朝は大変珍しいことがありました。
そう、朝起きたらラウラ様がまだ寝ていたのです!
先日の旅行の疲れからか気絶するように眠りにつかれてしまったラウラ様は、朝日が昇ってもなお、すやすやとお休みになられています。
ね、寝顔初めて見えたかも!
早寝遅起きな私じゃ、どうしても見ることが出来なかったんだよね……旅行という最大のチャンスも、夢世界のせいで逃しちゃったし。
やっぱりプリティーオブプリティーで大変お可愛い! まるで白雪姫!
「あら、ラウラ様まだお眠ですわね? こういう時、メイドはどうするのが正しいのでしょうか。仕事に準じて起こしてあげるべきなのか、優しい気持ちで寝かせたままにしてあげるのか……私としてはラウラ様の寝顔をいつまでも見ていたい……じゃなくて! 守りたいこの寝顔……じゃなくて! 一緒に寝たい……じゃないって言ってるでしょうにいいいいいいいいい!!!!」
「ローザ、落ち着いて。大丈夫、自然な感情だと思うわ」
「いや、それもどうかと思いますわ!」
『真実の魔法』の弱め版、或いはプロトタイプ版の『素直の魔法』を罰として身に宿したローザは基本的に己の欲求を隠すことが出来ない。
けれど、ローザはそもそも気が強すぎて隠している内面が多すぎたから、私としてはややバランスが取れているとも思っていた。
それに、言ってることも大変共感できるしね。
「今日は何の予定もないし、寝かせてあげた方がいいんじゃないかな?」
「なるほど、確かにご主人様の予定も考えてケースバイケースで動く方が出来るメイド感ありますわね」
「出来るメイド感は分からないけどね?」
「日々、ラウラ様がメイド姿をキラキラした目で見るものですから、私としては裏切れない気持ちでいっぱいなのですわ」
「プレッシャーになってたんだ……ラウラ様のメイド好き」
ローザはローザで毎日ラウラ様のために頑張っているようだった。
私も見習いたいところだけど、何でもできるローザと違って私がラウラ様のために出来るのは魔法くらい……しかも独学の無茶苦茶なやつ。
つまるところ、まず私は自分自身を鍛えないといけないのだ。
私が成長することが最終的にラウラ様のためにもなる……そう思うと、日々の勉強にも身が入るというもので、面白いことに学力向上に繋がっていた。
そもそも、ラウラ様やローザがたまに教えてくれることもあるので、上がらない方が嘘なのだけど。
それにしても見飽きることのない光景だ。
気付けば私はラウラ様の寝顔を既に三十分は眺めているところだった。
「いや、いくら何でも眺めすぎですわ! ラウラ様は彫刻じゃないんですわよ!?」
「うーん、彫刻は見ててつまらないけど、ラウラ様は表情がコロコロ変わって楽しいし、ラウラ様に軍配があがるんじゃないかな」
「私はラウラ様も彫刻もいつまでも見ていられますわ」
「つまりこれは芸術鑑賞なので何もやましいことはないということね」
「そう……なんですの? 言われてみれば、そんな気もしますわ……」
ローザは騙されやすかった。
ありていに言えば…チョロい!
そのせいでラウラ様に魔法をかけたと思うと改善して欲しい気もするけれど、しかし今日ばかりはそのおかげで合法的にラウラ様見学に励めて感謝だった。
そう思っていたのだけど、そんな怠惰を許すローザではない。
いくらチョロかろうと、ローザは自分にも他人にも厳しい優等生なのだから。
「しかし、鑑賞というのは時間にゆとりがあってこそ行うべきものですわ。ジェーン、貴女は今日、予定があるのではなくて?」
「あっ! そ、そうだった! 課題消化のために図書館に籠らないと……」
「私も付いていく予定でしたが、ラウラ様を一人残すのも気が引けますわ。状況を説明する役も必要ですし、ここに残ることにします」
「えー、ずるいよローザ」
「何一つずるくはありませんわ!!!! ほんのちょっぴりしかラッキーとしか思っていませんもの!」
「思ってるんじゃない。もー、仕方ないなぁ……じゃあ、私、行ってくるよ」
ラウラ様や他の皆様なら課題なんて片手間でこなせるのだろうけれど、毎日の授業に付いていくのでいっぱいいっぱいな私には、課題も巨大な問題となる。
新学期が始まってからずっとその調子ではラウラ様への協力も何もあったものではないし、なるべく来期の授業内容についていくためにも、この長期休暇を利用して、基礎を付けておかないと……。
なので、今日の課題消化をサボるわけにはいかなかった。
いかにラウラ様の寝顔が魅力的だとしてもだ!
さあ! 行くぞ図書館に!
いざ! いざ!
……行くぞー! すぐ行くぞー!
ほんと、すぐ行きますから。嘘じゃないです。
あー、もう行く、もう行くんだけどなぁ……。
「行くぞ行くぞー」
「行くぞと言ってからどんだけ時間かけてるんですの! 早くお行きなさい!」
「はぁ……行ってきまーす」
未練がましくギリギリまで時間を引き延ばす私に目を吊り上げて怒るローザ。
ローザは怒ると怖いので、私は仕方なくそそくさと部屋を出る。
さて、今日も頑張るぞい私。
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