第4話 おじいちゃん、だいじょうぶ?
「ですので、プリズムの色の分解順に体色が変化するようにセットして、最後にその基準で使い魔同士に最上位のものを判別させます。クモの目も光の屈折を利用して像を結ぶので、その色の順番を使えば新たに知識を記憶させる必要がないですから。何せクモの脳は小さいので。判別させる方法ですか?まあクモですので、誰が一番上位かなんてすぐ判断できません。準備として、机の端に順番通りに左から色を帯状に塗っておきます。クモが文書を読み終わると、自分の体色と同じ色の場所に移動させるようにします。上位である左側に誰もいないクモが、最もヒット数の多かったクモになります。そのクモが書類を運んでくるという仕組みです」
ネネは怒ったような顔で突っ立っている。それはそうだ。何を言っているのかさっぱりだろう。いきなり呼ばれてこんな理屈っぽいこと聞かされても、分かった振りをすることすら難しい話だろう。
「君が帰った後、あの仕組みを試してみた」
昨日、ネネを連れてくるように言った魔導士が話し出した。
「すごいの一言だ。寝る前に仕掛けて、朝起きて見たら、溜まっていた分すべてが片付いていた」
魔導士は、傍らに座る老人の方を見た。老人がうなずき、立ち上がった。
「今日からルル、あなたがここの責任者じゃ」
老人はそのまま歩き出すと、ルルの隣に来た。そしてその背を押した。
「座ってください。あなたがここの長であらせられます」
「え、ちょっと待って。ここの長って、この部門の長ってこと?いきなり?俺って派遣魔で、正職魔ですらないんですよ。で、あなたたちが部下ってこと?」
「はっはっはっはっ」
魔導士が笑った。老人もくすくすと笑っている。
「さすが御冗談がお上手です、ルル様。あなたは最も魔法をうまく使いこなしていらっしゃる。派遣魔であろうが最も優れたものが長となるのは当然。そして長とは、魔法庁の長、魔導士長であらせられます。万を超える魔導士を束ねる役職でいらっしゃいます」
驚いた。実に驚いた。何て実力社会。ていうか、こんなのでいきなり魔導士長になれるって、さすがに評価がザル過ぎるだろう。
「いや、ちょっと待って。こんなので魔導士長になれるんだったら、誰でもすぐなれちゃうんじゃないの?」
「へぁっ!!」
奇妙な叫びとともに、老人の目が光った。赤い光。そして唸った。ええ、この人ひょっとして認知症?
「あいえあきゃっ!!!」
雄叫びとともに、すべてが吹き飛んだ。魔法庁の巨大な建物も。その中にいる膨大な数の魔導士たちも。ただ、ネネだけは守った。あれだけ準備する時間を与えられれば、二人を守る魔防陣を作るのはそれほど難しくはない。そして、悟った。
「はい、お試し終了、ですか」
魔導士がきょとんとした顔で俺を見ている。そうか、やはり俺だけでなくみなにかけている。
「はっ、あなた様をお試しするようなことをして申し訳ございませんでした。ただ、これであなた様も納得していただけたと思います。この魔導士は、私を除けば魔法庁で最高の使い手です。それがまったく分かっていないのに、あなた様はまず防御の魔防陣を作り、そしてあの爆裂魔法が幻影魔法だと即時に見破った。それだけですべての魔導士を超越していらっしゃいます」
まあ、いきなり魔導士長やってた人がすべて吹き飛ばす魔法かけてくるわけがないのは、理性で考えれば分かること。魔力とは関係なく、人間の持つ分析力のお陰かな。人間やっててよかった。
「なるほど。分かりました。では今日から、私が魔導士長です」
すごい、力がすべてのこの世界。いったいどこまでいけるんだろう。
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