第31話 ルブレのお気に入り

 ルブレは珍しく、1人で行動する事にわがままを言わなかった。

 まぁ子供ってこういうところ好きだよな~

 待つのは退屈ではない。

 俺はエルゴダンジョンを出てから鑑定魔法を発動したままだ。

 ルブレと知り合ってから、魔人は他にも沢山いるんじゃないかと思っている。

 なので魔人を探す為、鑑定魔法を発動したままにして、今も歩いてる人を見ている訳だ。

 

 少し遅いな~と思っていたら


「ネクト~お待たせ~~」


 上機嫌でルブレが戻ってきた。

 そして、肩には小さ目の白いトカゲが乗っている。15cm位か。


「何だよそれ~幾らしたんだ?」


「ん~~大金貨10枚!」


「マジかよ~ぼったくりじゃんか~今すぐ・・・ん?それ、ちょっとおかしいな?」


 白い魔物は珍しいが存在する。ゴブリンの白いのも発見されている。

 生態的には解明されてないが、一応、希少種扱いになっている。

 

 取りあえずその事はいいとして、問題は鑑定魔法で種族や情報が何も分からないという事だ。

 そういや~猫のサフィルも居たし、このトカゲ、魔人なのか?

 

「名前も付けたの~シロロン。いいでしょ~」


 何か展開が早いな。それに相変わらず名前のセンスが・・・言ったら怒るかな?


「そ、そうか。まぁいいや。ルブレ、それどうするんだ?」


「ルブレの友達になったの~」


「まぁ、ここじゃ不味いな。歩きながら話そう。友達か、俺が居るじゃないか。それにそのトカゲ、喋れるのか?」


 白いトカゲはルブレが歩いても落ちない。寧ろ動き回って肩にいたり、頭の上にいたりと器用に乗っている。


「だからトカゲじゃなくて、シロロンだよ~~ネクトは友達じゃないよ~」


「友達じゃないなら、なんだよ」


「ウフフ。秘密~~。シロロンは話せないよ?」

 

 秘密か。俺は鈍感ではないので想像はつくが、ちびっ子に恋心を持たれても嬉しくないんだよな・・まぁ嫌われてないだけでも良しとしよう。

 問題はシロロンだ。確認の為に会話を試してみないと・・


「あれ?シロロン、魔道具付いてないじゃないか。ルブレ、買う時どんな説明された?」


「ん~~シロロンは魔物か動物か分からないって言ってた。後、何でも食べるって」


 確かに見た目は爬虫類と言われても分からんな。

 食べる?魔人じゃないってことは確定か。ますます分からん


 そんなことを話していると、宿屋に着いた。


「ルブレ。先に自分の部屋に行ってくれ。滞在延長のお金払ってくるから。それと、シロロン隠して行けよ。見つかったら追い出されるぞ」


「あ、うん、分かった!」


 俺は部屋の滞在が1週間だったところを、3週間に延長した。

 その分の金額を支払い、ルブレの部屋に行ってシロロンと会話を試してみるが、特に反応はない。


「ルブレ、確認するが、本当にシロロンを飼うのか?飯の世話だけじゃないんだぞ。トイレの世話もあるんだ。面倒見れるのか?」


「大丈夫~でも~ネクトも手伝って~」


 まぁ~俺も気になるからいいんだけどさ。魔物、動物どっちにしても、魔道具無しでこんなに懐くだろうか?

 魔物なら間違いなく大きくなる。そうなると町での生活はもう出来ないな~

 でも鑑定魔法で分からないし・・色々考えてしまう。


「そうだな~取りあえず、飯は3食。朝、昼、晩でいいんじゃないか。俺が人間の食べ物を持っているから分けてやるよ。それと水もか」


 俺はアイテムボックスから食料と水を出した。

 ルブレは喜んで抱きついてくる。

 

「食べ物は一度に沢山やるなよ。体がちっこいから食べる量も少ないだろう。トイレはどうしような~明日、猫用の買ってくるか」

 

 ルブレは俺の話を聞いてない様だ。渡した食べ物を、早速シロロンに食べさせている。

 まぁ~俺が持っている食料と水は少ししか渡してないから、大丈夫だろう。


「ルブレ、何か問題起きたら知らせてくれ。俺は部屋に戻るよ」


「うん」


 暫く様子見だが、明日俺なりに調べてみるか。

 俺は瞑想しながら色々と考える。

 あ、そういえば、鑑定魔法で自分の持ち物調べてなかったな。

 

  靴  耐性 火氷風雷土闇光。

 ローブ

 シャツ 耐性 物理全般

 仮面  耐性 物理全般

 

 靴は以前鑑定してもらった時に分からなかった2つが、闇と光か。

 耐性は凄いけど、何故水だけないんだ?

 そしてローブは、何も耐性付いてないのか。


 夜が明け朝になったが、結局ルブレは俺の所には来なかったので、何も問題はなかったのだろう。


 俺はルブレを呼びに行って


「ルブレ。あれから変わったことないのか?」


「ん?何もないよ。あのね。シロロンと一緒に水浴びしたの~」


「そっか」


 シロロンに変わった事はないようだ。

 少し眠そうにしている?

 昨日とは違って目をよく閉じている。トカゲって夜行性なのかな?


 宿屋を出て、ルブレと話ながら歩く。

 暫くしてモリーの居る馬小屋に着いた。

 勿論、シロロンは一緒にいる。

 馬小屋に来たのは、モリーの様子を見に来たのと、動物にも鑑定魔法が通じるか試したかったから。 

 馬 成馬。鑑定魔法で普通に分かる。

 

 モリーは俺に気づいたようで、近づくと顔を擦り寄せてきた。

 俺とルブレはモリーの首を撫でて、暫くモリーの傍に居た。

 

 シロロンは不思議な事に、馬や人間に全然臆さない。

 

 馬小屋の管理者にモリーの状態などを聞いた。

 とても元気で、状態は良好との事だった。

 さらに13日余分に預かってもらう事にし、お金を支払って馬小屋を後にした。


 次に雑貨屋に来た。

 猫や小型犬用の、シロロンが使えそうなトイレを買う為。

 俺が猫用トイレを見つけて手に取ると、


「ネクト~それ要らないよ」


「何でだ?要るだろう。汚れたらルブレが掃除するんだぞ。いいのか?」


「シロロン、トイレ覚えたの~賢いでしょ~」


 よく分からないので詳しく聞くと、人間用のトイレをルブレが教えたら器用にしたらしい。

 そんなことがあるのか?流石に偶然だろう。

 俺は猫用トイレと専用の砂、それと丈夫そうな肩掛けバッグを買った。


 トイレと砂はアイテムボックスに入れて、肩掛けバッグはルブレに渡した。

 ルブレには斜め掛けのバッグになって、両手も使えるし良い感じだ。

 ルブレがバッグを掛けると、シロロンはバッグの中にスルリと入って行った。

 覗いてみると、気に入ったらしく寝ようとしている様だった。



 時間を気にせず行動していたので、武術大会予選が始まる時間は既に過ぎているが、まだ1ヶ所寄りたい場所がある。

 俺とルブレは、昨日シロロンを買ったテント小屋に行った。

 すると、昨日テント小屋があった場所だが、綺麗さっぱり何も無くなっている。

 どういう事だ?武術大会が終わるまでは稼ぎ時のはずだが・・

 

 俺は近くの屋台を出している人に聞き込みをしたが、朝来た時には既になかったと言う。

 参ったな~テント小屋での情報を期待していたから、ショックがでかい。


 

 仕方ないので気持ちを切り替えて、武術大会の予選を見に行く。

 ルブレはシロロンがバッグから出てこないので、つまらなそうにしている。


「ルブレ。心配しなくても、夜になれば起きてくるさ」


「うん・・そうだね」


 武術大会の会場に着いた。

 今日も遅刻だ。昨日みたいに席を無断で使われてなければいいが・・

 席は問題なく空いていたので、座って観戦する。


 観戦して幾つか気づいたことがある。

 勝敗だが、これまで全ての試合は降参か審判の判定で、過激な試合はない。

 それに戦い方だが、みんな魔道具をよく使っている。

 例えば魔法を吸収する盾。

 武器も性能は低いが、魔法を発動する物を使っている。

 

 武具以外で驚いたのは、アイテムボックスの代わりとなる魔道具があることだ。

 これは選手が使っていたのではなく、武術大会優勝の褒美だった。


 俺は賞金や褒美がある事は分かっていたけれど、興味がなかったので調べていなかった。

 隣の男性の会話が、そのような気になる内容だったので詳しく聞いてみたら、優勝の褒美がアイテムボックスのバッグの魔道具だと分かった。

 アイテムボックスのバッグは何でも中に入る。サイズ大、中、小とあって、今回の褒美は小サイズらしい。

 小でも持っている人は凄く珍しいと言っていた。

 ちなみに準優勝の褒美は、体力回復 小のブレスレット。

 だからなのか、選手は物理職が多い。

 賞金もあるし、そこまで魅力的な褒美があるなら、もう少し白熱した試合でも良いんじゃないかと思うが、残念ながら参考にならない試合ばかりだった。

 しかし体力回復 小のブレスレットって、俺が洞窟テッドで取得した物じゃないだろうな?


「ルブレ、帰ろうか。明日も予選あるみたいだけど、明後日の本戦だけ見に行こう」

 

「うん。じゃあ、部屋でシロロンと遊んでる」


 ルブレは余程シロロンの事が気に入ったらしい。

 俺から見たらただのトカゲだけど、何でだろう?

 そのシロロンだが、バッグに入ってから2時間くらいで起きてきた。

 今はルブレの肩に乗って、たまに餌を貰っている。

 

 で、今何処かというと、俺は猫用トイレの設置をする為、ルブレの部屋にいる。

 

「だから、それ要らないよ~~」


 ルブレはそう言って、トイレのドアを開けっぱなしにする。


「シロロン~。ネクトがうんちしてるとこ、見たいんだって~」


「はぁ?誰もそんなこと言ってないだろ」


 ルブレは俺の事をからかっている。

 俺はそんな風に考えていたのだが、シロロンがルブレの肩から降りてトイレに行った。

 用を足したのだ。

 俺は驚きを隠せなかった。


「お、おい、ルブレ。シロロンは


「だから言ったでしょ~要らないって」


「ああ、でもそうじゃなくて、人間の言葉が分かるのか?」


「うん、そうみたい」


 ルブレがシロロンに話しかけている事は知っていたが、過剰に可愛がっているだけかと思っていた。

 それが人間の会話を理解するトカゲだと~ありえん!と言いたいが、鑑定魔法でも分からないから納得しないと・・


「なぁルブレ。確認するが、シロロンは喋れないけど、言葉は理解できる、であってるか?」

 

「うん。そうだよ~。あ、シロロンお利巧だね~なでなで」


「クェ~」


 改めて見ると、ルブレはシロロンとまるで心が通じているかのように接している。

 俺は暫く黙って様子を見ていた。

 シロロンは小さな鳴き声を出す。

 それも分かっていたが、どうもルブレに対して返事をしている様だ。

 俺はシロロンに、文字が分かるか色々アプローチした。

 それを見ていたルブレも参加したが、結果は分からなかった。

 シロロンに伝えれる手段があれば、何かしら分かるかと思ったのだが・・

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