第26話 小さな魔人
ルブレは年齢が13歳の時、魔人になった。
魔人になった経緯は余り話したがらなかったので、俺も必要以上に聞かなかった。
魔人にしてくれた魔人を、師匠と呼んでいる。
師匠とは7日くらい一緒に居た。
お金は師匠から大量に貰った。
師匠と別れてからは1年以上経っている。
魔人は睡眠、飲食を必要としない。体内の核の事とかは一緒だった。
怪我は一瞬で直る。切断までの怪我はしたことないので分からない。
魔法は生活魔法と闇属性が少し使える。全て師匠に教えてもらった。
7日経った時に師匠と別れた。
別れた理由は話してくれなかったので、俺もそれ以上聞かなかった。
ただ人間界でやってはいけない事は教えてくれた。
人間をむやみに殺すな。
人間に魔人と悟られるな。バレた場合は殺せ。
人間達と深く関わるな。
人間界を監視している者に問題ある魔人と判断された場合、処刑対象となる。
もう少し色々な詳細はあるが、纏めるとこんな感じだ。
ここまでの話を聞き出すのには、丸3日掛った。
1つの事を聞き出すのに、俺の事を沢山話さないと聞き出せないのだ。
「好きな色は?」「好きな女性のタイプは?」等々、どのくらい大変だったか分かるだろうか・・
魔界にもルールが存在するのか。
これからは、更に気を付けて行動しなければいけないな。
ルブレの話からの推測で、恐らくだが、多少の人間は殺してもいいが、町単位の人間と敵対すると処刑されるのだろう。
しかし、ルブレはダンジョンの魔物を冒険者ギルドで買取してもらっているが、よく怪しまれなかったな。
聞いたら、売ったのはミノタウロスだけで、その時に怪しまれたが適当に誤魔化したらしい。
ルブレの口調からすると、宝から武器が出て嬉しくて少し自慢したくて、倒したミノタウロスを見せた。
すると買取出来る事になって、たまたま運が良く誤魔化せただけ。
う~ん、何とも危なっかしい・・
「ルブレ。ありがと~俺はもう行くわ」
「どこにぃ?暫く一緒に居るって約束したよ」
確かに、勝負に勝ったら少し付き合ってくれと言ったが、いや~どうしたらそういう解釈になるのか・・
「ああ、そうだな。でも宿屋に戻らないとな」
「ここでいいわよ」
「じゃあ、こうしよう。俺が泊ってる宿屋は滞在期間が過ぎてるから、ここの宿屋の別の部屋が空いてればそこに泊まるよ。いつでもお互い行き来出来るからいいだろ?」
ルブレの扱いは少し慣れた。顔はむくれているが納得した様だ。
仮面を付けて宿屋の受付に行くが、ルブレも一緒に付いてくる。
しかも手を繋ぎたがるのだ。仕方ないので手を繋ぐ。
ここの宿屋は珍しく食堂はない。
受付は男性が対応している。
ルブレの知り合いという事で、直ぐに部屋を取る事ができた。
ルブレは常連で顔が利くのか、宿屋に気に入られている、そんな対応だった。
泊まる事ができたのは普通の部屋だが1泊、金貨1枚と銀貨8枚。
正直、高いし、イステッド町にもう滞在する意味はないので1泊で良かったのだが、ルブレが居たので5泊にした。
「ネクト~5泊?お金ないの?ルブレが払ってあげよっかぁ?」
だよね・・1泊だともっと突っ込まれそうだ。
「あ、いや、イステッド町はもういいかな~と思ってさ。勿論、町を出る時はルブレに声かけるよ。ははは」
「え~~ルブレも連れてって~」
「そうだな。考えとくよ」
俺は部屋に案内されて、ようやく一息吐く。ルブレに内鍵は使わないでって念押された。
少し落ち着いてから、久しぶりに瞑想した。
何か瞑想が一番癒されるな~考え方が爺になったかも・・
翌朝、俺は武具屋に立ち寄った。
ネクロマンサーとの戦いの時に失くした、短剣の代わりを買うために来た。
ダンジョンから出た短剣は駄目だ。素振りしてあんな弱いウインドカッター出るとか、邪魔で仕方がない。
「店主、丈夫な短剣を探しているが、短剣の上から魔法で剣先を伸ばしても耐えれる様な物が欲しいのだが」
「あの~申し訳ございません。何を言ってるのか分かりませんが、丈夫なのでしたら、こちらの短剣は如何でしょう」
勧められたのはミスリルで出来た短剣。
「悪くない。店主。ちょっと魔力を込めて、さっき言った剣先を伸ばすの試してもいいか?」
「はい?構いませんよ」
俺は短剣に魔力を込めて氷の剣にした。店主は驚いた様だ。目を見開いてアワアワしてる。
俺は魔法を解除し
「店主。今、氷でやって壊れないと分かったが、次は炎で試してもいいか?」
「エッ!?いえ、困りますよ。お客さん」
「う~ん、困ったな。たぶん大丈夫だと思うけどな~これより頑丈な短剣はないのか?」
「では、こちらでどうでしょう。これはうちで取り扱っている最高級の品です」
立派な箱に入っていたのは、見たことのある短剣だった。
俺が売った風切の短剣じゃん・・しかも値段は大金貨で言うと880枚だった。
俺が売ったのは大金貨400枚だが・・勿論、断った。
風切の短剣は店主曰く、魔法が使えない人でも力を込めて振ればウインドカッターがでる凄い短剣、と自慢げに熱弁された。
「店主、あそこに飾ってある短剣は何だ?」
「お目が高い。そちらはミスリルより遥か上の、大変珍しいオリハルコンです」
俺はこのオリハルコンの短剣を貰う事にした。
値段はなんと、大金貨500枚。
ちなみにミスリルの短剣は、大金貨20枚だった。
オリハルコンは初めて見た。
書物で知っていたが、そこにも珍しい素材と載っていたくらいだ。
かなり高い買い物だったが満足している。
支払いは別室でと言われたが、めんどくさいのでここで良いと言って、白金貨50枚出した。
店主がある程度の値段なら武具をおまけで1つ付けると言ってきたので、ミスリルのロングソードを選び、それをおまけとして貰った。
「ネクト~~」
店主と話していると、突然俺の名を呼び抱きついてくる。ルブレだった。
「よくここに俺が居るって分かったな」
「探したよぉ~仮面被ってる人どこって聞きまくった。ネクトも武器欲しかったの?ダンジョン武器の方が強いんだよ~」
「ああ、そうだな。でもな、ルブレ。武器は使い方で強さが決まる事もあるんだよ」
「ふ~ん」
やたらルブレに気に入られたな。
可愛いから悪い気はしないが、俺にも予定があるから困ったな。
取り敢えず武具屋から外に出た。
一緒に歩くときは手を繋いでって求めてくるので、手を繋ぐ。
「なぁ、ルブレ。昨日も言ったけど、ルブレにもらった情報では俺が知りたいのは少しだったんだ。だからさ、ある場所に向かう事にしたんだ。分かるだろ?」
ここには人間もすぐ近くに歩いてるから、魔界とは言わない。
「ルブレも付いてく~~ネクト、ダンジョン武器くれるって言ったよね。大人が嘘つくの?」
しっかり覚えてたか・・武器渡しても付いてきそうだが、どうすれば気持ち良く別れてくれるだろうか・・
そんなこと考えて歩いていたら目的地に着いた。
馬を飼育している牧場。そう念願の馬を買いに来た。
飼育所の牧場の広さは町にもよるが、各町の街外れに2ヶ所はある。
飼育所は馬を預ける為の施設としても普段使われている。
馬を買うのは2通りある。
飼育しているオーナーから購入。馬市場で購入。
馬市場は安く買えるが、目利きが必要。
オーナーから買うのは少し高いが、馬との相性も分かる。
「ルブレ。俺の目的地を目指す際に、近くにダンジョンがあったら寄るよ。そこで武器が出たら渡すから、それまで一緒に行動って事でいいだろ?」
「ネクトはルブレの事、嫌いなの?」
「あ、いや~そう意味ではないんだが・・まぁ、好きにすればいいよ」
「わぁ~だからネクトの事好きなの。ウフフフ」
どうもルブレに対して甘くなってしまう。
気を取り直して、ルブレには馬を購入することを教えた。
ルブレの身長からいって馬を持ってないだろうと思ったが、一応聞いてみたら、やはり持ってなかった。
俺は馬のオーナーに、大人しい、扱いやすい、丈夫を条件に聞いてみた。
速さも多少あったほうがいい。荷車用とかではなく、旅用と伝えた。
勧められたのは、4歳の牝馬で青毛。
馬を買うのは初めてだが、若い頃はよく乗っていた。
まずは俺1人で乗らせてもらった。相性は良さそうだ。次にルブレと2人で乗ってみたが問題なかった。
「オーナー、貰うよ。好きな食べ物とか気を付ける事、紙に書いて渡してくれ。この子に名前はあるのか?」
「ありがとうございます。名前はモリーです。大事にして下さい」
俺はアイテムボックスが使える。
大量に入るので、出来るだけモリーの食料を譲ってくれと頼んだ。
二人乗り用の鞍と馬の食料合わせて 大金貨43枚支払った。
牧場のオーナーに後日取りに来ると伝えて、宿屋に戻った。
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