第27話 ルブレの試験

 ルブレは自分の部屋に戻らず、俺の部屋にいる。

 部屋では仮面を取ってくれと強請るので、仮面は取っている。

 

「明日、イステッドの町を出ようと思うけど、大丈夫か?」


「うん。ネクトと一緒なら大丈夫。ウフフ」


 俺はアイテムボックスから地図を出し説明した。

 

「俺の目指している魔界はアド山脈の向こうにある。ダンジョンがあるのは、ここから北西に行った首都の近くと、北にいった国境近くになる。北のペルシエル王国を通るので、ここの国境近くのダンジョンに行こう」


「ん~~ここ通るの~?お馬さん大丈夫かなぁ~?」


 ルブレがそんなこと言い出したので詳しく聞いたら、俺等がいるエルゴエデン王国とペルシエル王国は戦争していると言う。

 大規模な戦争ではなく、激しいのは国境近くだけ。

 なんでも、エルゴエデン王国の国境近くにあるダンジョンを巡って争ってるらしい。

 

 困ったな~確かに馬のモリーには危ないし、戦争となると国境もすんなり通してくれないだろう。

 遠回りになるが、迂回して違う場所からアド山脈目指すしかないか。


「ルブレは詳しいんだな。じゃ、こっちの方行くか。ちなみに聞くけど、イステッド町以外のダンジョンに入ったことあるのか?」


「ううん。洞窟テッドしかないよ~後の2ヶ所は冒険者カードが要るみたいなの」


「そうだったのか。じゃあ、ついでにルブレも冒険者カード作るか?」


「ほんと~!ルブレも作れるの? ネクト大好き~~ウフフフ」


 ルブレは嬉しそうにはしゃいでいて、見ているこっちまで嬉しくなってくる。

 ついでに他の国の事も聞いてみたら、何も知らなかった。

 どうやらルブレはエルゴエデン王国出身で、国から出た事がないようだ。


「ルブレ。そろそろ部屋戻れよ」


「え~~~じゃ、出かける時、呼びに来てくれる?」


「ああ、行くよ」


「えへへ。分かった」


 ルブレは自分の部屋に戻って行った。

 俺は瞑想して明日を待つ。

 翌日、ルブレを迎えに行き、宿屋の受付で一言挨拶をして牧場に行った。


 牧場に着くと馬主から「道中、お気を付けて」と言われ、モリーを渡された。


「これからよろしくな、モリー」


 俺はそう言って、モリーの首を撫でる。

 ルブレがジッと見つめているので、ルブレも同じようにと言った。


「よろしくね。モリー」


 モリーは目を細くして気持ち良さそうに応えてくれてる感じがした。

 町の外からモリーに乗り、首都エルゴを目指す。

 首都エルゴまでは町が3つある。4つ目で首都エルゴになる。


 モリーには負担を掛けない様、好きな速度で走ってもらっている。

 休憩も定期的に入れて、天気が悪い雨の日は俺の魔法で小屋を作る。

 ストーンウォールを応用した石の小屋だ。

 モリーの為でもあるが、俺等の為でもある。

 魔人だから雨は何ともないが、人間だった頃の名残なのか、雨に長時間打たれるのは良い気分ではない。

 なので小屋は俺等が入っても寛げるように作ってある。

 休憩の時、


「ルブレ。次の町で冒険者カードを取得するが、注意点がある」


「うん。何?」

 

「冒険者カードはDランクから貰えるんだけど、ルブレに対するDランク試験がどんな内容か分からない。絶対に手加減するように。試験に落ちてもまた直ぐ受けれるから、目立つのは不味い」


「分かってる。ウフフ」 

 

 ルブレが冒険者カードを取得する為のDランク試験が不安だ

 ルブレが魔職なら問題はない。

 ルブレより年齢が若くても魔法を使える人はいる。

 

 一応、闇属性は使えるみたいだが、闇属性と光属性は駄目なのだ。

 光属性は教会に半強制的に連れていかれる。

 闇属性は人間で使える人は聞いたことが無い。

 現にルブレの師匠から、人前で使うなと言われてるらしい。

 

 なので、ルブレは物理職の試験になる。

 幼い頃から才能があっても、物理的な力には限界がある。

 ルブレが普通に力を使ったら目立って仕方がない。

 物理職でルブレの容姿は余りにもひ弱なので、試験内容によっては中止も考えている。


 それと、気になることがあったので、


「ルブレ。闇魔法、何でもいいから見せてくれ」

 

「分かった。えへへ、いっくよ~」


 そう言うと、ルブレは無詠唱で魔法を使った。

 今は昼頃で天気も良く明るいが、闇魔法で俺の周囲を暗くした。

 視界を奪う魔法。

 そして驚いた事ある。

 少し前、そうだな、詐欺師ケンジの時くらいから思っていたが、俺は多分、相手の魔法や特技を見れば真似ができる。

 試しにルブレの魔法をやってみた。

 少しぎこちないが、やはり真似できた。


 それにしても、ルブレだ。師匠と7日しか居なかったらしいが、そんな短期間で下位とはいえ闇属性を覚えれるのか?

 まぁ色々疑問はあるが、休憩も終わり出発した。


 

 移動を始めて数日が経ち、1つ目の町に着いた。

 モリーを馬小屋に預けて宿屋に泊まる。

 部屋は別々だ。ルブレは不満そうだったが、たまには1人になりたいってもんだ。


 翌日、俺とルブレは冒険者ギルドに行く。

 色々心配なので、用心の為、空いてる時間帯を狙って昼過ぎにした。

 

 冒険者ギルドの中は思った通り人は少なかった。

 ルブレは興味深々なようだ。目を輝かせキョロキョロしている。

 受付で


「この子を冒険者にしたい。Dランクまでの案内頼む」


「あら、可愛い。妹さんですか?」


「ああ、俺はBランク魔導士だ。だからギルドの事は知っている」


 妹と聞いて来たので、返事をして頷く。この方が都合がいい。

 ルブレは全く話を聞いておらず、相変わらずキョロキョロしている。

 俺は自分の冒険者カードと、Fランクになる為の金貨1枚、Dランク試験を受ける金貨5枚を受付の女性に渡した。


「Eランクの試験の魔物3体は、この後解体室に持って行く」

 

「そうですか。では、Dランクの試験はどのように?」


「戦士系で頼む」


「はあ~?本当に物理職の戦士でいいのですか?」


 だよね~見た目から考えられないよね。

 暗殺や俊敏な動きを得意とするアサシンでも良かったが、事前にルブレに選ばせたら「絶対戦士!」と言い出した。

 どっちも大差ないだろうし、俺自身もどんな試験か分からないから戦士にした。

 

 受付の女性に、ルブレに聞こえない小声で


「大丈夫。試験は不合格でもいいんだ」


「なるほど~分かりました」


 と伝えて解体室に向かった。

 解体室ではイステッド町のダンジョンで倒した魔物を、種類もバラバラで20体出して


「全部買取で頼む。それと、この子のEランク試験の魔物3体の納品も兼ねているから。俺等は受付の方にいるよ」


「とと、特殊個体が20体も!?しかも無傷って・・・・分かりました」


 解体室の男性は、口をポカンと開けて驚いている。

 俺も少しづつアイテムボックスにある魔物を売らないと、増える一方になる。

 次の町、さらに次の町でも売りたいのに、20体で驚かれても困るんだが・・

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