第25話 不思議な少女
冒険者ギルドから出て直ぐに、小さな女の子が俺の近くに来て
「トロールキングを倒した人?宝箱から何が出たの?」
いきなりトコトコ現れて、可愛い声で話してくる。
見た目は10代半ばくらい、金髪でショートヘアー、肌は白く可愛い顔立ち。
身長は俺の肩辺りしかない。軽装だが冒険者用の丈夫な服を着ている。
「よく分かったね。誰に聞いて来いと頼まれたの?」
「有名人だし仮面ですぐ分かる!それよりも早く答えてよ」
周囲がザワザワしだして
「見て見て!!あの2人、Aランクの魔物倒した人達よ」「嘘だ~仮面に幼い子。あんなのがAランクの魔物を討伐できるはずないじゃん」
なんだと!ミノタウロスをこの子が倒したというのか?
人の事言えないが、信じられない。
ただ、さっきから感じている違和感がある。
俺は何故か咄嗟に、女の子に向けて鑑定魔法を使った。
マジかよ・・・種族が分からない・・俺と同じなのか?
「ねぇねぇ。何黙ってるの。早く答えて」
人が集まってきたが気にしない。俺はゆっくりフード外して、髪の毛を晒した。
「あ、ああ。ここでは不味いから、別の所で話さないか?」
「興味ないわよ~」
あれ・・フード外したくらいじゃ分からないのか?俺はフードをゆっくり被り直し
「同族と思ったのだが、違うのか?ここでは君の質問には答えたくなくなった」
「な!?ななにぉ~~いいわ。付いてきて!」
そう言って女の子は走る。
俺はそのまま付いて行くが、疑いから確信へと変わっていく。走るスピードが人間離れしている。
ただ、まだ完全に確信している訳ではない。
女の子の瞳の色は青だったし、神童と呼ばれる才能に恵まれた子なら、速く走れる事くらい簡単に出来るだろう。
それに鑑定魔法をシャットダウンできるとか、俺の知らない魔法とかあるかもしれないから、軽率な行動は出来ない。
女の子は俺をチラッと見て、さらにスピードを上げる。
俺はひたすら付いて行く。この速さだ、フードはとっくに外れている。
どこまで行くのだ?人がいなくなったのにまだ走り続けている。
結局、1時間以上走って、街外れの遠くからでも誰にも見られないような、岩がゴツゴツとある荒れた土地に来た。
「魔族に会うのは師匠以外初めて~それじゃ、私の質問に答えてよねぇ」
女の子の顔は怒っているが、容姿が幼いから怒ってても可愛いとはヤバいな~俺は決してロリコンではないが・・
それにしても、やはり同族だったのか。
これなら色々話が聞けそうだ。
そうだよな。俺だけが特別じゃない。魔人は他にもいるはずだ
「トロールキングから出た宝は、体力を回復する指輪と宝石だが、もう売った」
「なんとぉ~武器じゃなかったの・・」
女の子は体全身でガックリした仕草を見せる。
「武器が欲しかったのか?それならコボルトキングから短剣が出たけど、俺には魅力がなかったから売ってしまった」
「ん~~短剣ならいらない~~」
何だ?女の子にはお似合いの武器だが・・
「俺はネクト。よろしくな!あのさ~魔人の事、色々教えて欲しい。俺、全然知らなくて困ってたんだよ」
「興味ない。それよりも、ネクト走るの速いね。ここで、ちょっと勝負しようよ」
あ~あマジか・・この話のペースを相手に握られいる感じ、普通なら関わりたくない相手だが、魔人の情報が欲しい。
女の子はアイテムボックスから斧を出した。
えっ?勝負って、走る勝負じゃないのか?
バトルアックスで、しかも刃の部分が燃えてる。
さらに驚くべき事に、小さな女の子がバトルアックスを片手で持っている。
通常の冒険者でも両手で持つような長めの両手斧だ。
片手で持つとなると、それこそAランク以上の戦士クラスじゃないと持てないだろう。
「えへへ。いいでしょう。ミノたんから出たのよ。うんじゃ~いっくよ~~」
「ちょ・・」
女の子は勢いよく俺に突っ込んで、斧を振り回す。
近づいてくるスピードも速い。恐らく冒険者のアサシンクラスぐらいある。
それよりも、力が凄いのか・・あの武器を軽々と振り回している。
ただ俺も、素早さにはここ最近自信があるんだよ。
それと、相手の攻撃の軌道が分かるようになったので、女の子の斧を避けるぐらいなら大丈夫みたいだ。
「なあ。俺が勝ったら暫く俺に付き合ってくれよ。話がしたい」
「いいよ。勝ったらだよ。もっとスピード上げるよ~」
「ちょ・・アクアローブ!!!」
女の子の攻撃が、今までより更に速度が上がった。
焦ったぞ。一応、強化版の水魔法のバリアを出したが、当たってはいない。ギリギリかわした。
俺は強化版のウインドカッターを無数、自分の周囲に出して待機させている。
それに気づいた女の子は、俺を攻撃しながらウインドカッターにも攻撃を入れている。
だがそんなので粉砕しても、俺のウインドカッターは次々出せる。
斧の攻撃を避けた時、斧を狙ってウインドカッターを数発撃ち込んだ。
斧を切断するつもりで放った。
結果は、金属音の凄い音がして、折れずに女の子の手からバトルアックスが離れた。
透かさず俺が拾って、女の子に刃の部分を向けて突き出した。
「勝負あったな」
女の子は悔しそうにしている。
バトルアックス、結構重いな~これを軽々振り回してたのか。
俺は何気なく、バトルアックスの刃が燃えているのが気になったので凍らせてみた。
「あ~~もんもんが~~~返してよ~」
刃の炎は消えてしまった。
女の子はさっきまで悔しそうにしてたが、今は泣き出しそうな半泣き状態だ。
俺はすぐさま氷魔法を解除して女の子に渡した。
「悪かったよ。すぐ元通りになるから。たぶん・・・」
バトルアックスは元通りまた燃え出したが、女の子はまだむくれてる。
しかし武器に名前付けているのか。もんもんって、どんなセンスだよ。
「機嫌直せよ~俺が勝ったんだから約束だろ?破ってもいいのか?」
「・・・・・」
「今度、俺が宝箱から武器出たら、譲ってやるよ」
「しょうがないなぁ。許す。武器出たら貰うからね。ウフフ~。じゃ付いて来て」
はぁ~疲れるな、このぺース・・・女の子は東方面に走り出した。
俺は付いて行く。走っているが今度はゆっくりした走りだ。
「ネクトって強いのね。私、ルブレ。ここ真っ直ぐ進むと、イステッド町に行くわ。それまで時間掛るから、色々聞いてあげる」
ルブレは俺の隣に来て走りながら話している。
俺は魔人の事を聞いた。
まず気になったのは、ルブレの容姿だ。
見た目は幼いが人間と変わらない。
これは俺の聞き方が不味かったのか、
「可愛いって罪よね~」
とか違った答えが返ってくるので、保留にした。
次にルブレが魔人になる所から教えて欲しいと頼んだ。
そしたら
「出会ってすぐレディーの過去を聞くなんて嫌い」
と言ってきた。話が進まなくて疲れるが・・
仕方ないので、時間は掛るが少しづつ聞いた。
「イステッド町にはいつからいるんだ?」
「ん~~3か月くらい前?。よく覚えていない」
「俺に聞かれてもな~。ルブレは何で武器が欲しいのだ?」
「欲しいから~」
あ~ダメだ、振り回される。もういいや・・適当に話して退散しよ。
そんな感じでイステッド町に着いて、ルブレの泊っている宿屋の部屋に来た。
部屋の中は、俺が泊まってる部屋より広くて高級感がある。
「1泊幾らだよ。高そうな部屋だな~」
「金貨7枚だったかな?」
高っ。まぁいいや、俺はフードと仮面を外した。
「わぁ~ネクト。カッコイイ~。そっちの方がいいよ」
「さっき話しただろ。この見た目のせいで俺は仮面を付けてるんだ。ルブレは見た目からして人間だからさ、何か知ってないのか?」
仮面を外した途端、目をキラキラさせて少し態度も変わった。
そして少しずつ、ルブレ自身の事を話してくれたが、俺の事をしつこく聞いてくるようになった。
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