第18話 異変

 そんな感じで更に日が経ち、問題も無く、3つ目の町に着いた。

 3つ目の町だが、何となく町全体が重々しい雰囲気だ。

 俺等の泊る宿屋の斜め前に、立派な宿屋らしき建物があるが、その宿屋の前には、王族馬車3台と護衛騎士が数十人いる。


 俺等の馬車主は町で必ず1泊するので、町に入るのは決まって早朝。

 宿屋に1泊して損しない時間を見計らって町に入るという訳だ。

 俺はいつも通り宿屋を確保すると、町を見て回る。

 一応イドに声を掛けるが、


「私は興味ないわ。知ってるでしょ。どうしてもデートしたいなら相手してもいいけど、昼間だけだと物足りないわよ」


 そんな事を言い出すのだ・・なので今回も1人で町を見る。

 町の様子を見ていて分かった事がある。

 住人達は何を怖がっているかは分からないが、少し怯えている様だ。

 何となく、俺への態度が違う。

 ただ明らかに感じが悪い訳ではなく、少しだけ違和感がある程度。

 たしかに仮面を付けているし、デザインも少し怖いかもしれないが、冒険者として見れば違和感がないはずだが・・

 その他には、高級宿屋にいる王族も分かった。

 ギスミート王国の第2王子がいるとの事で、来ている理由はどうやら魔物討伐らしい。

 後はこの町はバレスと言うくらいで、これ以上詳しくは分からなかった。


 宿屋に戻り、夕食にイドを誘う。


「何時も遅いわね~こんな時間まで町見てたの?先に1人で食べるとこだったわよ」


 結局、イドは誘っても文句を言うが、誘わなかったらもっと酷くなる。

 なので町見る時も、一応誘ったのだが。

 一緒に飯を食いながら、俺は町で感じた事をイドに話した。


「へぇ~物騒ね。討伐手配書の魔物でも居たのかな?私達には関係ないけど、王族まで出てるとなると、報奨金凄くなりそうね」


 そんな話や、いつも通り魔法の会話をして、お互い部屋に戻った。

 部屋でいつもの瞑想をして過ごしていると、突然、魔物の出現を知らせる警告音が町中に鳴り響く。

 俺等が居る宿屋は、町の中心付近の宿屋街だ。

 探知魔法を使っても、町の外壁までは遠過ぎて見れない。

 魔物が町を襲撃するのはかなり珍しいが、それを分かっていて王族が町にいるのか?

 襲撃前提で待機って、それもどうかと思うが。まあ、王族がいるなら安心だろう。


 暫くして、イドが俺の部屋に来た。


「ネクト、外を見に行くわよ」


「え・・行くの?」


「ずっとあの音が鳴り響いているのよ。おかしいじゃない。それにうるさくて寝れないわよ」


 俺とイドは宿屋から出て


「ネクト。ギルドに行って情報収集して来て。私はあそこの宿屋に行ってくるわ」


 あそこの宿屋とは、例の王族のいる高級宿屋だ。

 俺はイドに言われた通り、冒険者ギルドに行く。

 昼間町を見ているので、場所は分かっている。

 辿り着いた冒険者ギルドには一般人もいた。俺は所かまわず情報を集める。

 どうやら魔物は群れで襲ってきている。

 ギルドマスターや他の冒険者は、その対応でここには居ない。

 居るのは一般人と、冒険者カードを持たない冒険者と冒険者ギルドの関係者だが、戦えない者。

 アンデッド系で、南と西から襲ってきているらしい。

 

 暫くして、イドが冒険者ギルドに来た。

 イドはどうやら魔物を討伐した時の報奨金目当てで、王族の人と交渉していたらしい。

 しっかりしてるな~勿論、俺の情報もイドに話した。


「ネクトは南に行って。私は西に行くわ。雑魚でもお金になるけど、もし数が多いなら、お金になりそうな魔物だけアイテムボックスに入れてよ」


「分かった。イド、無理するなよ」


 南門に行くと門は閉まっているが、1人だけ入れる小さな扉の前に門番が居る。

 その門番に

 

「冒険者だ。扉を開けてくれ」


「はい。開けるのは構いませんが、外から中に入るには、偶然開いた時に入るか、朝になるまでは無理ですよ」


「問題ない」


 門番は冒険者カードも確認しない。

 それだけの事が起きているのだろう。

 1人用の扉を開けてもらう。扉は2重構造になっている。

 

 扉から出ると、南西の前方、離れた場所に人の集団が陣取っている。

 探知魔法で分かっていたが、反応は人間だったか。

 走って近付く。今は夜で、外壁から魔道具の明かりが外側に向けて照らされているが、それでも周囲は薄暗い感じだ

 集団の所に近付いた。さらにその先は、戦場になっていた。

 

 グールやスケルトンがワラワラやって来る。異様な光景だ

 戦場は近接職が主に戦っていて、魔職は援護している。

 これでは俺の範囲魔法は使えない。近接職に当たってしまう。

 

 単発魔法で応戦するが、キリがないくらいやって来る。

 指揮しているのは年配の男だ。甲冑を着てロングソードを持っているので、近接職だと分かる。

 戦い方の陣形を見ても、近接パーティーのやり方だ。

 恐らくあれが、この町のギルドマスターだろう。

 俺は目立ちたくもないし、問題を起こしたくないので、適当に魔物を倒してる。

 

 俺は適当に戦いながら、周囲の観察をしている。

 魔物の数は非常に多いが、CランクかDランクばかりで、俺やイドからすれば取るに足らない存在だ。

 金になりそうな魔物も居ない。

 味方の全体は60人強くらい。王族の騎士も数名居る。

 西側にも同じくらいの冒険者が居るとなると、町の冒険者殆どが参加しているのか。

 

 冒険者で戦闘に使えるようになるのはDランク以上からだが、そのDランクの者だとこの戦いは厳しいだろう。

 まぁパーティーを組んでいる者が殆どで、連携でやれば大丈夫だと思うが、アンデッドの数が異常に多い。

 しかし、どういう事だ?町の南西の方から魔物が来て、南と西に別れているのか?

 グールやスケルトンには出来ない芸当だ。

 これは指揮している者がいる。

 分かっているが冒険者も沢山いるし、俺が口を挟む問題じゃない。


 魔物自体は弱いが数が多いので、戦闘が長引いている。

 次第に冒険者の疲労が原因なのか連携が崩れ、負傷者や死人が出てきた。

 ギルドマスターらしき男の檄が飛ぶ


「ここで守らなければどうする!!愛する家族、恋人がバレスにいる。町を戦場にしたいのか!!ギスミート国の英雄よ。死を恐れるな。魂の剣となって悪を滅せよ!!!」


 「「「「「 ウォォォオオオオーーー!!! 」」」」」


 流石ギルドマスター。士気が高くなったし、あれで逃げだしたら冒険者として恥になる。

 周囲が少し明るくなって、日の光が見えてきた。

 もうそんなに時間が経ったのか。気付かなかった。流石にイドが心配だ。

 俺は南側の戦場を捨て、イドがいる西側に行く。

 

 到着すると、西側は南側と違っていた。

 イドが先頭で戦っているのだ。

 と言っても、魔力消耗の低い下位の範囲魔法で倒しているし、そのお陰で魔物の進行も遅い。

 冒険者達の負傷も少ない様だ。

 俺はイドの傍に行って加勢する。

 

「ネクト!そっちは終わったの?」


「いいや」


「え!あ!私が心配で来てくれたのかしら。嬉しいわ、フフフ」


「ああ、まあね・・・」


「あら、意外に素直なのね。それはそうと、ネクト。気付いているでしょ?このアンデッド指揮してる奴がいるわ。私が探して来るから、ネクトはここを守って」


「いや~お、おい。嘘だろ・・」


 イドは俺の話も聞かず、町の南西方向に走っていった。

 こんだけのアンデッドを指揮してるんだぞ・・幾らイドでも無謀すぎるだろ。

 それにしても、西側はイドが先頭で守っていただけあって楽に倒せる。

 陣形が配慮されていて、範囲魔法が使えるからだ。

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