第17話 魔法
馬車は止まって休憩となった。
馬車主には、俺等が冒険者で魔導士ということは伝えてある。
飲み食いもアイテムボックスから自分達の好きな時にするという事、そういった条件も含めて、イドが馬車代の値段の交渉したのだ。
その為、馬車が止まるのは馬車主の食事と仮眠とトイレ、馬の休息や食事、俺等のトイレ(俺は必要ないが怪しまれるのでね)その他は緊急時だけとなる。
早速、俺は実験する。アイスアローを1本出して魔力を込めるが、ウォーターアローになった。
「ネクト、それはただの変換よ。無詠唱魔法の時でも教えたでしょ。魔法はイメージが大事なの。あの青い炎や円形の斬撃はイメージで作られた物よ。あなたオリジナルの魔法なの」
俺はイドの説明を黙って頷くだけで聞いているが、疑問が出てくる。
「オリジナルって大袈裟じゃないのか?世界は広いんだぞ。あんな魔法幾らでもあるだろ?それにさ~イドは水と氷属性得意なんだから、イドがやった方ができるだろ?」
「あのね。私が知る限り、あの魔法は他では見たことないのよ。私はギルドに居たのよ。そりゃ~世界のどこかには在るかもしれないけど、そんな事いったらキリがないじゃない。加えて言うけど、球体のトルネードとドーム型の障壁魔法もそうよ。そんなのポンポン出されれば期待するでしょ?そ・れ・と。私は真似るのが得意なの。というか魔法使い全般そうなのよ!!!!」
「なるほど。そうか、理解した。少し考えさせてくれ」
イドの説明は相変わらず分かりやすい。
ただイドが言ったように、オリジナル魔法となると魔人の力だから出来ただけではないだろうか?
既に俺の頭の中では氷のイメージは出来ている。
少し時間をかけて練習すれば、上手くいく筈だ
イドに見せて出来るのだろうか?俺が魔人だとバレないのだろうか?
そんな思考と格闘していると、休憩時間が終わって出発となった。
移動中の馬車の中では、俺はイドと会話はしているが、色々と気持ちが纏まらず、まだ考え事を続けている。
バーパンの町を出て3日経った。
俺はようやく決心がついたので、馬車の中だが練習する。
出したのはアイスショットで、使う粒1つ。
これは丸いただの球体だが、ここから俺のイメージの形にする。
トゲトゲの小さなボールになった。
馬車の中では効果が試せないので、ここまでだ。
魔法を解除して掻き消す。
イドが驚いたのか、立ち上がろうとした時にタイミング悪く馬車が揺れて、前の席に頭をぶつけてしまった。
「大丈夫か?」
「痛い~~もう!その魔法何よ」
「アイスショットの1粒を変形させたんだよ。効果はまだ分からないから、次馬車が止まったら試すよ」
「試すまでもないわ。恐らく威力は格段に上がるわよ」
イドも同じようにアイスショットの粒を出して真似ようとするが、上手くいかないみたいだ。
俺はイドの魔法を眺めてる。少しずつ形になってきた。
まだ棘の数は少ないし整っていないが、もう少し練習すれば出来るだろう。
やがて馬車が止まった。俺とイドは外に出て、近くの岩壁まで歩く。
通常の球体のアイスショットと、トゲトゲのアイスショットを1粒づつ出して、同時に岩壁に放った。
イドの言う通り、威力は格段に違っていた。
「俺が思うにさ~こんなのは所詮、子供騙しだと思うよ」
「何言ってるのよ。凄く威力が上がってるのよ。これが子供騙しだったら、今までのアイスショットは何よ?」
「いや、氷属性は凍らせることに特価しないと意味がないと思う」
俺は、高さ3m横3m幅1mのアイスウォール障壁魔法を出した。
「イド、この障壁魔法を壊せるか?」
「そうね~この厚さなら簡単よ」
イドはそう言ってアイスランスを1発放つ。
簡単に言うと、少し大きめの先が尖った氷の塊だ。
流石に1発では壊せなかったが、3発放ったところでアイスウォールが壊れた。
「ちょっと。何がしたいのよ!」
「慌てるなよ。いいから少し見といてくれ」
俺はさっきと同じアイスウォール出した。
頭の中でイメージしてる事を描いて、そこに力を込めて魔力を注ぐ。
透明だったアイスウォールが、真っ白に変化していく。
「イド。これを壊せるか?」
「え、ええ。やってみるわ」
イドがアイスランスを1発放つが、弾いたのだ。
流石に傷は付いたが、かすり傷程度。
その後も数発放ったが、イドの魔法では壊せなかった。
「成功だな。これなら氷属性全部、強化される。硬さだけじゃないぞ。凍らせる性能も強化されているはずだ」
「これが氷だというの・・・・信じられない」
イドは黙って何か考えている様だ。
俺にも経験がある。こういう時は1人で集中して考えたいものだ。
俺は何も言わず、1人で馬車の方に戻った。
暫くしてイドが戻って来て、馬車も出発した。
イドはアイスショットの1粒を出し、トゲトゲの球体を作った。
「おお~凄いじゃないか~」
「ネクト嫌味いってるの?これは造形だから、見た時から出来ると思ったわ。発想はなかったけど・・だけど白い氷は別よ。どうなってるか分からないのよ」
「イドが教えてくれたんだよ。俺はイメージして魔力を注いだだけで、色なんて何でもいいんじゃないか?性能さえ上がればいいだけだろ?」
「・・・・・」
そんな事を言いつつ時間が流れて、最初の町についた。
町では1泊するが、宿屋代は別料金だ。
「私が馬車代払ったから、ネクトはこれからの宿屋代お願いね。部屋は任せるわよ」
馬車代払ってもらった時、女神に見えたのに・・・まぁ宿屋代なら安いか。
部屋はもちろん別々だ。
俺は時間の限り町を見て回る。イドはひたすら魔法を練習している様だ。
それぞれに好きな事をして時間を過ごし、翌日、町を出た。
「イド。次の馬車止まった時でいいからさ~今度は俺に魔法教えてくれよ。水と氷は苦手だから中位魔法から頼むよ」
「分かったわよ。その代わり、白い氷また見せて」
俺とイドの会話は、主に魔法の事ばかりになった。
つまらない訳では無い。寧ろ俺にとっては、とても楽しい時間である。
こうして何日も過ぎ、次の2つ目の町に着いた。
「イド。今度は水と氷の上位魔法を教えてくれ。特にダイアモンドダストとコキュートス。あれは凄かった」
「ネクト・・あんたね~ダイヤモンドダストは上位の中でも上の部類なのよ。それと、コキュートスは上位魔法ではないわ。究極魔法と呼ばれる1つよ。それに上位魔法より上の魔法はそれだけではないわ。見たことはないけど、古代魔法というのが存在するらしいのよ」
「イドはその究極魔法を使ったのか?すげ~~」
「フフフフ。そうでしょ。でもあれは技を放っただけで、威力は大したことないの・・今の私の力ではあれが限界よ。まあ、ネクトが獲得できるかは別として、教えるわよ。その代わり、分かるわよね?白い氷、何回でも見せてもらうからね」
「いや、改めてイドは凄いと思うよ。」
「そう?ようやく私の偉大さが分かったのね。もっと褒めていいわよ。フフフ」
「・・・・・」
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