第10話 新たな試練

 予定通り昼過ぎに、冒険者ギルドに着いた。

 中に入り、受付のシェリーに


「グールを持って来たけど、解体室はどこかな?」


「え、あ、ネクトさんですよね?そっちのドアから入った、右側のドアが解体室です。どうぞ」


 俺は場所が分からなかったから聞いたが、冒険者は解体室には自由に入れる。 

 早速、教えてもらった解体室に入る。

 広いな~超大型の魔物2体、余裕で入るんじゃないか?

 入ってすぐのところに、体格がガッシリとした男性がいる。

 この人はチラッとだが、一度レッドボアの時に見ている。


「噂の新人か。今日は何か持って来たのか?」


「試験討伐のグールと、ついでに狩ったジャイアントスパイダーの子供1体だけね。ここに出しても?」


「ああ。そこのテーブルに出してくれ」


 かなり大きな金属製のテーブルが3つある。

 指定されたテーブルに、グールとジャイアントスパイダーを出す。


「俺、受付の方にいるからさ~買取と試験の合格確認。よろしく頼むよ」


「任しとけ。ほう、スパイダーの方は傷が少ないな~試験の方は、後で試験官に確認してもらう」

 

 解体室の男性に後の事を任せて、俺は受付の方に戻って掲示板を見たり、椅子に座って瞑想したりして待っていた。

 周りを見回すと、今日はギルドの中は人が少ない。

 まぁ昼過ぎなのでこれが普通だよな~暫くして試験官が来た。

 あ、よく知ってる人だ・・


「ネクト?何その仮面・・前の仮面もそうだけど、センスないんじゃない?」


「ええ~!?前の仮面は分かるけど、これはそんなことないだろ~!」


「まあそんな事どうでもいいわ。それよりも、どういうことよ。あれはハイグールよ!!」


「うん。何となく違うグールって分かってたけど、あれしか居なかったよ。でも、あれもグールだろ?」


「そういう事を言ってるんじゃないのよ!はぁ~、もういいわ。試験は合格よ。シェリーに言っとくわ」


 呆れた感じでイドはそう言うと、シェリーのところに行き、その後、どっかに行ってしまった。

 イドは思った事が黙っていられないタイプか・・嫌いではないが、もう少し黙っていればかなりいい女なのに、勿体ない。

 気を取り直して、結果を確認する為に俺もシェリーのところに行く。


「ネクトさん、Cランク試験おめでとうございます。Dランクのカード貰えますか」


「ありがとう」


 俺はアイテムボックスから、Dランクの冒険者カードを出して渡す。

 すぐにCランクのカードと金貨4枚を貰って、Cランクの説明を受ける。

 まぁ大した規約はない。Cランクのカードは青だ。

 2回目のCランクだが、貰うとなると嬉しい。

 買取の方は、やはりこんなもんか。

 ジャイアントスパイダーの子供だとしても、金貨4枚は少ないな~

 

 シェリーからの説明で、Bランクの試験はギルドマスターから直接言われるらしい。

 この事は、以前Bランクだったので知ってはいたのだが、どういった基準で言われるのかは分からない。

 確実なのは、依頼の数をこなし、信用を獲得することだが、どうしたもんか・・・

 

 今の俺の力なら、討伐系も簡単にこなせるだろう。

 CとDの魔物中心に依頼を10個程こなして、ギルドマスターに交渉してダメだったら違う町へ行くか。

 金も稼がないとな~以前は拠点とする町が在ったから、無駄使いしても何とでもなったけど、今はある程度余裕がないと心配だ。

 依頼は早朝か夕方出されることが多い。

 取り敢えず、明日の早朝にまた来よう。

 今日はCランクに昇格したことで良しとしよう。

 

 冒険者ギルドを出て、ぼちぼち宿屋に向かう。

 気分良く歩いていると、後ろからイドが走ってきた。


「ネクト、一緒に来て」

 

「え・・何処に」


「いいから、付いてこれば分かるわよ」


 イドは俺の手を引っ張って連れて行こうとするので、俺は手を振りほどいて付いて行く。

 そうして連れて行かれた場所は、さっきまで居たギルドだった。

 そのままギルド職員用の扉に入って行くから、俺も後に続く。

 訳の分からないまま奥の部屋に入り、大きなソファーに座れと言ってきたのでそのまま座ったが


「ちょっと!私が座れないじゃない。もっと奥行きなさいよ」 


「イドは何かとうるさいな~」


「何よ!!」

 

 めんどくさいので、俺は体ごと横にずれる。

 俺は以前、冒険者としてソロだったし独身だったが、人付き合いは悪い方ではない。

 ただ周りからは少し変わっていると言われたが、俺には理解できなかった。

 女性も好きだが、打ち解けるには多少時間が掛かる。よく分からないが、マイペース過ぎるのかもしれない。

 

 

 それから直ぐにアドムドが来て、対面のソファーに座った。


「ネクト君。悪いね~引き留めて。おや仮面変えたのかな。以前もそうだけど、余り見かけない仮面だね。全てオーダーメイドかな?」


 何かと鋭いな~答えて調べられたら厄介だ。


「仮面の事で呼んだのですか?」


「いやいや。そういう訳じゃないよ。ネクト君はBランクになりたがっていたから、返答次第では、今日Bランクの試験を出しても良いと思ってるんだが、どうかね?」


 うおぉぉぉぉ!すげーラッキーじゃないか。

 願ってもないチャンス到来。

 取り敢えず俺、落ち着け。

 よし、ここは冷静に対処しないと・・ 


「あ、それは有難いけど、俺で答えられることなら」


「知っての通り、ギルドは信用が大事だ。ネクト君はギルドの事をどこまで熟知しているのかね。全く知らないとは言わせない。俺と初めて会った時、ギルドの規則を知っていて、俺の事も見抜いていた。君は降格者かね?正直に答えて欲しい」

 

 うわ~~やらかした。

 俺もまだまだだな~ギルドマスターだけあって、言葉もだけど全体から凄い圧かけてくるし。

 かなりピンチじゃんかよ・・降格者とは絶対に言えない・・・これはBランクどころではないぞ。


「アドムドさん。そういう事は答えられないんですよ。信用第一ですからね」


 俺が答えられるのはこれが限界だ。下手に言い訳しないで、やり過ごした方が良いだろう。

 隣でイドが黙って聞いているが、隙が無い。

 前にはアドムド。もし戦いになっても逃げられない。

 仕方無い、この町でBランクは諦めよう。

 Cランクのカードがあるから、他の町でなんとかなる。


「俺は一応ギルドマスターだが、それでも答えられないか・・・まあいいだろう。それではネクト君、ランクはどこまで目指すのかな?」


 クソ~~これもどんな理由か分からないが、誘導尋問だろうな。


「取り敢えずAランクです。その後は考えてませんよ」


 Aランクの試験は、各国の主要都市だ。

 このギスミート国なら首都ミートになる。

 これはバーパンの町に長居はしないって俺のアピールでもあるが、Aランクが欲しいのも事実だ。


「なるほど、なるほど。尋問したようで悪かったね。ハイグールの切断はネクト君の魔法で間違いないかな?それとBランクの試験だが、イドと2人で、グールを討伐した古戦場跡に行ってもらう。できるかな?」


「え・・」


「え、ちょっと聞いてないわよ~」


 アドムドの表情が少し和らいだが、これには俺とイドから驚きの声が出た。

 アドムドの狙いが分からないが、取り敢えず助かったのか・・


「イドは黙ってなさい」


 ムスッとして、イドは黙ってしまった。

 流石にアドムドには弱いのか?アドムドは俺の返事を待ってる様だ。

 今の俺が人間と共に行動するのは非常に不味いが、これをクリアすれば信用とBランクが得られるか?

 クソ~~俺1人で行きたいが、アドムドはまだ俺を疑っているという事か。


「あのグールは俺の魔法で倒した。え~と、行くのは構いませんが、俺、男ですし、2人きりでと言うのは・・」


「あら~~ネクト。私を女性扱いしてくれるのね。可愛いとこあるじゃない」


「イードー!ネクト君、このイドの強さは申し分ない。俺が保証する。今回依頼する試験だが、ネクト君1人ではまだ実力も不明だからね。かと言って、ハイグールが出たなら放置できない。行くのは構わないんだね。後でイドを行かせるから、詳しいことはそこで聞きなさい」 


 アドムドはそう言って、俺の泊っている宿屋を聞いてきたので、既にチェックアウトしたが、その宿屋の場所を教えた。

 宿屋の空きがなかったら、またギルドに報告すればいいだろう。

 話は終わったので、俺は冒険者ギルドを出て宿屋に向かった。

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