第6話 盗賊との戦い

 それから、さらに3日経ったが、次の町には程遠い。

 それにブランソンだが、町に着いたらアイテムボックスを貸してくれと言ってきた。

 やんわり断ったが、しつこく言ってくるので


「次の町で俺は降りる。そもそも、こんなに荷物乗せて移動が遅すぎるだろ」


「旦那そりゃ~ねえぜ。そんじゃ~アイテムボックスを貸してくれれば早くなるけど、どうだ!」


 断ってもあの手この手で攻めてくる。

 結局、次の町で俺と出会った時の量まで商品を売り捌くので、レッドボアを1体譲ってくれときた。

 まあ、それで俺も納得したのだが、何だか損した気分だ。

 

 魔物全般に言えるが、魔物の肉、骨、牙、魔石は使い道があって余すところが無い。

 特にレッドボアは肉も美味いし骨も丈夫なので、Eランクだが人気が高い。売れば結構いい金になる。

 魔物と動物の違いの1つは、魔石が有るか無いかだが、魔石が無い魔物もいる。

 特にアンデッド系は無い。

 

 かなり時間が掛ったが、3つ目の町に着いた。

 宿屋はボロから標準になった。

 翌朝、ブランソンは約束通り半分の量まで商品を売り払った。

 俺もレッドボアを渡そうとしたが、最後に別れる時にしてくれと頼まれたので承諾した。

  

町を出て、次はいよいよ国境を抜けてギスミート王国の町までいく。

 馬の速度も戻って快適だ。

 

「旦那、ここの道が一番危ないからしっかり頼むぜ。俺もなるべく寝ずに走るからよー」


 ブランソンがそんなことを言い出したので詳しく聞いてみると、次の町までの道が盗賊に一番狙われやすいと言う。

 国境の近辺は、悪さするには都合が良いらしい。

 町を出て少し経つと、道は平だが整備されていないし、所々小さな穴が開いてるので揺れも酷い。


 案の定、馬車を2日走らせた所で、しかも昼間っから堂々と盗賊が来た。

 前方から弓矢が飛んでくる。

 馬を狙っているのだろうか。正直下手クソだ。

 俺は荷台の上に乗り、周囲を見渡した。

 後方からは馬が追ってきている。

 これについては、ブランソンの馬車が少し左右の視界が悪い道を通った時、探知魔法の反応があったので警戒はしていた。

 ただ弓矢を放ってる奴は、何処にいるか分からない。

 魔力は上がっているが、まだ探知魔法の範囲もそこまで広くないってことか。

 結局、弓矢を放っている奴は肉眼で確認した。

 少し高台になっている所にいる。

 まだ前方で、けっこうな距離があるが、しつこく矢は飛んで来ている。


「ブランソン、馬の速度は上げなくていい。盗賊は俺に任せて運転に集中しろ」


「旦那~頼んだぜ!」


 まず弓矢の奴からだ。馬に当たったら不味い。


「ウインドカッター」


 俺は弓矢を放つ盗賊のいる方向に、風の刃を複数回放った。相手は木の陰に隠れたがお構いなしだ。

 何度も放って、木ごとぶった切る。

 弓矢の盗賊を倒したのは確認できなかったが、たぶんこれで倒しただろ。

 次は後方からくる馬に跨っている盗賊が2人。直ぐ近くまで接近していた。

  

「ファイアボール」


「サンダーアロー」


 盗賊は投げナイフを俺に向けて投げてきたが、かわしてファイアボールとサンダーアローを必要以上に数発放った。

 木の仮面は大分慣れたが、戦闘になるとやはり見にくいので、念の為、必要以上に魔法を放つ。

 ファイアーボールでバランス崩しや攻撃を阻止し、2人共サンダーアローで止めを刺した。

 サンダー系の魔法は俺には扱いが難しい。余り使わないが、試したかったので使ってみた。

 結果は、盗賊の体にサンダーアローが刺さり感電死した。

 日々魔力が増大しているので、調整が難しい。魔法が強力になっている。

 これも魔人の力か・・


 直ぐ馬車が止まった。道に少し大きめの穴が開いていた。

 恐らく盗賊達の仕業だろう。

 ここで仕留める気だったが、俺にやられてしまったって感じか。


「旦那~助かりましたぜ。盗賊が死んだのだったら剣でも拾いに行こっかな」


 無事、盗賊達を倒して安全を確認したのか、ブランソンはそんなこと言い出したので


「やめとけよ。生きていて刺されても知らんぞ」


「旦那~~冗談ですよ、冗談。ワハハハ」


 冗談に聞こえなかったが・・これも商人魂なのか。凄いな~と感心した。

 死んだ者の金品や武具を奪うのは当たり前なので何とも思はないが、本当に死んでないかもしれないから、ブランソンが行くのは危険なのだ。

 

 その後は問題なく進んで、国境まで来た。

 ここは検問があって町に入るより厳しいと聞くが、町と同じく冒険者カードを見せるだけで通れた。

 後から分かったのだが、ブランソンは結構顔が利くらしい。


  

 国境を無事に抜けて、そこからさらに3日かけて町に着いた。

 町の名はバーパン。

 バーパンの町では入る時、冒険者カードを見せていない。

 ブランソンの知り合いということで入った。ここでも顔が利く。

 俺の目的地はこの町なので、ブランソンとはここまでだ。

 ブランソンと別れる時、1体の約束だったが、大きいサイズのレッドボアを2体渡した。


「ネクトの旦那~いいんですか?。ありがとうございます!俺はギスミート王国の首都ミートと首都リスタを行った来たりしてます。首都ミートに俺の家と店があるんで、来た時にはぜひ寄って下さい。サービスしますよ。ワハハハハ」


 俺は軽く返事をして、予想外の収入にご機嫌なブランソンと別れた。

 ブランソンはレッドボアの血抜きをして、バーパンの宿に泊まらず次の町まで行くとの事だった。

 ちなみに、アイテムボックスの中は腐らないし劣化しない。

 

 さて、バーパンの街並みは、見るからに環境が悪そうだ。

 町全体は広そうだが、建物は木で作られていて、道は平だが整備されていない。

 雑草が至るところに生い茂っている。

 

 まずは宿屋の確保だな。

 どのくらい泊まるかは、まだ決めていない。綺麗で安ければいいが・・

 

 ゆっくりと歩きながら、ブランソンに教えてもらった宿屋の場所に着いた。

 今は丁度昼時で、宿屋の1階は食堂になっており賑わっている。

 外見から判断すると、古風な宿屋って感じで中はかなり広い。

 カウンターに行くと、ふっくらしたおばちゃんが立っていた。

 

「女将、宿泊したいが1泊幾らだ?」

 

「泊まるだけなら安い部屋で銀貨3枚。標準で5枚。高級で金貨1枚だよ」


「標準で取り敢えず3泊頼む」


 3日分の金を支払って、別の従業員?女の子供に部屋に案内される。

 2階に部屋があり、古さはあるが小綺麗で、1人部屋にしてはかなり広い。ベッドも2つある。

 子供に銅貨5枚チップを渡して、女将の所に戻った。

 そして女将にギルドの場所を教えてもらい、宿屋を出た。

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