第44話 一難去って、また一難!?その5
「そうだね。僕達が国に帰っているうちに、また美羽が人質にされたら大変だもんね」
「……はぁ、仕方ないか」
「美羽、長期間ここの生活を離れても大丈夫なのか?仕事もあるだろ」
あ、そうだった。
タマと一緒に行けると知って舞い上がっていたけれど、仕事……長期間休み取れるかな。
取れたとしても、どのくらいで帰ってこれるか謎だし。
それに、またお母さんが連絡取れないってアパートに来ちゃうと困るし。
どうしよう……このままじゃ一緒に行けない。
「私が必要じゃなくって?」
「!?」
急に甲高い声が聞こえたと思ったら、どや顔でローズが現れた。
「あらあら、私が来たからって驚かないでちょうだい」
「いや、急に現れたら驚くだろ……」
何故ここに来たのか。
数時間前まで一緒にいたし、ホワイトさんと国に帰ったかと思ったのに。
「ローズ、君も美羽に会いたかったの?」
「ちょっと、そんな理由で私が引き返して来たと思う?」
ううん、全く思わない。
私に会いたいというより、タマに会いたくて来たならわかるけど。
「どんな理由かな?」
「さぁ?」
「俺達が知っている筈がないだろ」
あえて理由を聞かない所を見ると、三人(匹)ともローズの話に興味がないみたい。
タマは面倒くさそうで、ただ呆れてやり取りを見ているだけだった。
「ねぇ、私がせっかく来たのに、もてなしてくれないの?」
「あ、ごめん……。三人(匹)もだよね。ミルクで良いかな?」
緊急事態だったから、言われるまで飲み物も出してなかった。
遠くから来たタマのお客様なのに、申し訳ない……。
「おい、飲み物なんて後で良いよ。それより、ローズ……お前が何かしてくれるのか?」
あ、そうだ。
話が脱線しちゃっていて忘れていたけれど、どういう意味だったんだろ?
「あぁ、それね。私が美羽の代わりをしてあげる。分かりやすくいうと、もう一人の美羽になるって事よ」
「は?」
「何それ?」
「ローズが美羽になるって?」
えっ、どういう事?
それに、猫なのにどうやって人間の代わりを?
突拍子もない発言に、皆が唖然としてしまった。
「ねぇ、私の家が何故裕福になったか、ご存知?」
ローズの家が裕福な訳?
貴族とか、商人とか、そういう系統の人だからだと思っていたけど。
「さぁ……?特に興味が無いから、わからないや」
「カイル、貴方に聞いてなくってよ」
「俺も興味ない」
カイルさんのキャラクターで言うのは許されそうだけど、タマまでそんな対応しちゃって……可哀想に。
それでも、ローズはめげていない。
こういう対応のされ方、慣れているのかも。
「代々続く能力のお陰だろ」
「その通り。さすがラツィオね」
ローズ曰く、ブラウン家の初代当主は特殊な能力のお陰で、一代で富を築いたらしい。
その後は、その血族の中から強い能力を持つ者が選ばれ、次期当主の座が与えられるそうだ。
ブラウン家に生を受けた者は15歳までに能力を披露し、それが出来ないものは、恩恵を受けられない。
その能力者の一員のローズは、恩恵を受けまくりって事ね。
「ローズは次期当主なの?」
「いいえ。私より優れた能力を持つ方がおりますもの。そんな身分では無いから、こうして自由に行動できるのよ」
次期当主になってしまったら、当主になるまでの教育とか、当主の補佐とか、色々と忙しいらしい。
能力が高くても、またそれはそれで大変なんだ……。
「ねぇ、どうやって美羽になるの?」
「簡単に説明すると、私が美羽の一部をいただいて、美羽になるの」
「そうなんだ、凄いね」
ただのお嬢様かと思っていたのに、そんな凄い能力の持ち主だったなんて、猫も見た目じゃ判断できないのね。
「それじゃ、早速……美羽になってもらおうか」
「えぇ、構わないわ。ただ、私の場合……1つ難点があって」
難点?
変身時間が短いとか?
それじゃ、すぐにバレちゃうよね。
まさか、顔だけ本人に似てるけど、姿が猫のままとかじゃないよね……。
「ローズ、その難点って何だ?」
「それがね……私、性格までは本人そっくりに出来ないの」
え……そうなんだ。
ローズ曰く、上位の能力者なら完璧に出きるらしい。
姿が私でも、ローズの性格ではすぐに怪しまれちゃうよね……、
「おい……それで大丈夫かよ」
「それじゃ、すぐにバレちゃうね」
「あぁ、そうだな」
「お前、性格悪いしな」
「悪くないわよ!」
あぁ……皆、ここぞとばかりに言いたい放題。
せっかく私を助ける為に駆け付けてくれたのに、これじゃ可哀想。
「でも、黙っていれば大丈夫よ!」
「……そういう問題か?」
「俺はダメだと思う」
「うん」
「他の策にしたら?」
だよね……。
性格が違うのって、一番問題じゃないかと思う。
それに身代わりに出勤したとしても、仕事が出来る訳じゃないもんね。
新人なら誤魔化せるけど、流石に……無理がありすぎるよね。
でも、他の策って?
全く思い付かない私達は、ただただ『うーん……』と唸るだけだった。
結局、私がひどい風邪をひいて仕事を休むという作戦に落ち着いた。
すごく心配されたけど、本当の理由を話す訳にもいかないしね……。
それでもそんなに長くは休めないけど、とりあえずローズは私の姿になったまま留守番をすることになった。
「それじゃ、行ってくる。くれぐれもボロを出すんじゃないぞ」
「ローズ、帰ってくるまで頑張って」
「絶対に喋るなよ」
「そうだぞ、美羽に迷惑だけはかけるなよ」
「ローズ、お願いね。行ってきます」
「わかってるわよ。こっちは大丈夫だから、早く行きなさい」
タマったらこっちが頼んだことなのに、偉そうにしちゃダメだよね。
他の三人(匹)も、ローズにプレッシャー与えちゃうんだから。
ローズは少し不安な表情をしつつ、こっちは大丈夫だから安心してと見送ってくれた。
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