第43話 一難去って、また一難!?その4
「美羽、気をつけてね」
「あ、ありがとう」
……何を気を付けるって?
余計な警戒心を持たせるなよ。
美羽が挙動不審になっているだろうが……。
「お前達、ちゃんと大人しくしてろよ」
「了解」
良い返事をしても、そのにやけた顔が信用できないが……。
「クロノ、お前もな」
「……どういう意味だ?」
「そのままの意味だろ」
「想像しすぎだよ」
やっぱり、そっちの方向に考えてるのかよ。
いくら猫の俺でも、そんな所構わず……な男じゃないんだよ。
まぁ、そんな雰囲気になってしまったら……我慢できるか微妙だけどな。
さてと、邪念を振り払って美羽とちゃんと話をしなくては。
寝室に入ると、美羽は俺を見た。
アイツ等に色々言われたからか、ちょっと警戒しているようだ。
「美羽、心配しなくても大丈夫。俺は襲わないから」
「あ、う、うん。別に心配していなかったんだけど……ね」
「それなら良いんだ」
警戒していないと言いながらも、まだ少しそれが残っているみたいだ。
俺はその警戒を解く為に、美羽の膝の上にちょこんと乗って笑顔を見せた。
美羽は、俺の頭や背中をゆっくりと撫で、呼吸を落ち着かせていた。
もふもふ効果、絶大だな。
「ねぇ、タマ……私に出来ることは無い?」
「美羽の気持ちは嬉しいんだ。だけど、俺はここに居て欲しい。危険な目にあうのは間違いないから」
俺が話し出そうとしたら、美羽が先に話を切り出した。
言われる事はわかっていた。
だから、俺の気持ちを正直に話した。
でも、美羽がそれで納得するなんて思わない。
話し合いの解決策は、1つしかない。
俺が答えを出すだけ。
それが解っているのに、美羽が大切だから答えを渋ってしまう……。
「でも、タマは行かないんでしょ?」
「あぁ、そうだな」
「それじゃ、せっかく来てくれた彼等はどうなるの?タマに止められているし、私も助けになってあげられないのに……」
美羽は黙り混んでしまった。
堂々巡りの答えしか出ないから。
俺は美羽の優しい気持ちを、アイツ等が利用しているのも知っている。
それで俺が拒否出来ないように仕向けているんだ……。
「はぁ……。わかったよ。美羽、俺と一緒に行こう」
「えっ、良いの?」
「あぁ。美羽だけ行くのも、ここに残しておくのも心配だからな」
「タマ~!ありがとう~」
美羽は俺の出した答えに喜び、ぎゅーっと抱き締めてきた。
「み、美羽……苦しい」
「あ、ごめん……つい嬉しくて」
「俺こそ……ごめん」
「……?」
この時ばかりは、猫の体である自分を嘆いた。
これが人間同士だったら、シチュエーションが変わっていた筈だよな……。
「タマ、どうしたの?」
「いや、何でもない。そろそろアイツ等の所へ戻ろうか。待ちきれずにドアをぶち破って入って来そうだから」
「うん」
美羽は俺を抱き抱えたまま、笑顔で寝室を出た。
俺としては、もう少し余韻に浸りたかった……。
でも、先程の美羽の歓喜の声で、アイツ等の気配がドア付近まで来ていたし。
そのお陰?で、俺の理性を止めることが出来た。
俺と美羽の関係は、どうなる事やら……だな。
「やっと戻ってきたか」
「美羽、おかえり~」
「お待たせしました」
ソファで寝ていた皆が、一斉に顔を上げた。
私達の話し合いがどうなったか気になるみたい。
「……何やら騒がしかったようだが?」
「そうですか?」
「気のせいだろ」
そう思われるのは、私が嬉しくて大きな声を出しちゃったからで。
それ以外は特に騒いではいないので、しれっと誤魔化してみた。
「それで、どうなったんだ?」
「俺と美羽が国へ行くことにした」
「そうなの!?」
「……おい、良いのか?」
「美羽は置いていけよ」
タマは冷静に問いに答えた。
しかしその答えに三人(匹)とも驚き、タマへ非難が集中してしまった。
「いや、それは反対だ」
「うん、僕も反対。だって、危ないよ」
「クロノ、お前だけで良いだろ」
「これは、話し合って決定した事だ。だから、美羽を連れていく」
責められてもタマは、その答えを変えなかった。
知り合ったばかりの私なのに、こんなに心配してくれている。
そんな三人(匹)の気持ちは嬉しかった。
それでも、私はタマと一緒に行きたいという強い気持ちを伝えた。
「ラツィオさん、ダラスさん、カイルさん……私も連れていって下さい。お願いします」
足手まとい、役に立たない、と言われるかもしれない、内心、とても不安だらけ。
危険だと言われている事なのに、無謀だとも思う。
それでも、私は言わずにはいられなかった。
「……美羽、本当に危険なんだよ?」
「そうだぞ、俺達だってどうなるか……」
「クロノ、お前だって知っているだろ」
「あぁ、知っている。だけど、もし……ここに置いていって何かあってみろ、助けに戻れないだろ」
俺達が出てきた事で、美羽がまた拉致されるかもしれない。
魔女の件だって、俺のせいで起こったことなんだ。
美羽が俺の大切な女だって事は、相手に知られている。
だからこそ、美羽を連れていく。
それが最善の方法なんだ。
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