第37話 麗しのお茶会。その1
「赤毛の魔女、外へ。私がエスコート致します」
「まぁ、美しいお姿。外に何がありますの?」
「それは、出てからのお楽しみです」
キラリと光る笑顔で登場したのは、執事スタイルの美形の童顔の男性。
茶色の長い髪を深紅色のリボンで結んでいる。
その姿を見た赤毛の魔女は、とても興奮していた。
これはこれは……見事なイケメン執事だ。
隣の部屋から出てきたという事は……髪色から判断するとカイルか。
人間の姿になったのは初めて見るな。
一体、何を始めるのやら。
「王子、一緒に参りますか?」
「このロープを解いてもらえるならば是非」
「仕方ありませんね。さぁ、解きましたよ」
赤毛の魔女が指をパチンと鳴らすと、体に巻き付いていたロープがスルリと床に落ちた。
ふぅ、ようやく楽になれた。
ずっと縛られたままだったから、体がギシギシしているよ。
こんなに簡単に解放してくれるなんて驚きだが、まだまだ油断は出来ないな。
今のところ、赤毛の魔女はカイルの執事姿に夢中になっているから、大丈夫……かな。
「では、外へご案内致します。クロノ、また後でね」
「あぁ」
「王子、外でお待ちしています」
「はい」
俺は雰囲気を壊さないよう笑顔で返事をし、赤毛の魔女は上機嫌のままカイルのエスコートで外へ出て行った。
ふぅ……疲れた。
とりあえずは、自由になれた。
だが、安心はできないよな。
「……クロノ、お前も参加しろよ」
「勿論だ」
音もなく隣の部屋から現れたラツィオ。
カイルと同じように執事姿になっていた。
「まぁ、素敵」
ラツィオさんの指示で、執事姿になったダラスさんとカイルさんとメイド服の私で家のすぐ近くの森の広い場所を使い、テーブルや椅子等セッティングをした。
それを見てとても喜んでいる。
まずは第一段階クリアだよね。
「お嬢様、こちらへどうぞ」
「お嬢様だなんて……恥ずかしいわ」
カイルさんにエスコートされ、赤毛の魔女は席についた。
そしてそのタイミングで、丈が短めのセクシーなメイド服のサファイアさんとそれに負けまいと対抗して薔薇色のメイド服を着たローズさんが登場した。
「お嬢様、温かい紅茶をお持ちしました」
「とても良い香りがするわね」
「はい。お嬢様に喜んでいただけるよう、厳選した紅茶をご用意致しました」
「そうなのね。嬉しいわ」
「お嬢様、こちらは焼き立てのクッキーとスコーンです。フルーツジャムやクロッテッドクリームもご用意致しました」
「まぁ、美味しそう」
サファイアさんは淹れたての紅茶、ローズさんはホワイトさんが作ったものを運んできた。
赤毛の魔女が並べられたものを見て喜んでいて、満面の笑みで座っている。
その隣には執事のカイルさんが立っている。
美味しいものと、イケメンの執事、どちらも赤毛の魔女の好み。
間違えてカイルさんまで食べられちゃいそうだよね……。
「焼き立てだから、特に美味しく感じるわね。それに、このジャム……何かしら?好きな味だわ」
「それはローズヒップのジャムです。ビタミンCが豊富で、美容にも良いものです」
「初めて食べたわ。爽やかな甘さと酸味が絶妙で美味しいわ。私の美容にまで気遣ってくれるなんて、嬉しいわ」
「喜んでいていだけて、私達も嬉しいです」
このジャムの選択は正解だった。
美しいものが好きな赤毛の魔女だから、美容にも気を付けているのでは?と、サファイアさんが提案。その提案を受けて、ホワイトさんが城から急ぎ取せたものだった。
「お嬢様、シフォンケーキです。プレーン味ですので、ホイップクリームやそちらのジャムをお好みでどうぞ」
「まぁ、これも美味しそうだわ」
ローズさんが運んできたシフォンケーキをカイルさんが切り分け、お皿に載せた。
裏で少し味見させてもらったけど、ふんわりしっとりしたケーキで、ワンホール食べたいくらいの美味しさだった。
クッキーやスコーンもそうだけど、ホワイトさんは趣味で作っていたのよと言っていただけののに、お店に出せるレベルの腕前なのが驚いた。
「ケーキに合わせて、ミルクティーをどうぞ。アールグレイの茶葉で淹れました」
「良い香りね。うん、美味しい。ミルクの割合が私好みだわ」
「お嬢様にお気に召していただけて、安心致しました」
今のところは、赤毛の魔女に満足してもらっているみたい。
直接お世話をしているカイルさんも、安心した表情をしている。
そうそう、私は次のお料理を出すタイミングを見ている役目を任された。
メイド服を着ていても、メイド役じゃないのは美形じゃないから……だと思う。
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