第34話 華の貴公子、見参!?。その2
「……お前達、何故ここに?」
俺達を見た第一声がこれかよ。
皆で遊びに来たとか思うのか?
この状況を見たら、誰だって助けに来たと思うだろ。
「おや、これはこれは。華の貴公子と呼ばれている方達ですね」
これが赤毛の魔女か。
今のところは柔軟な感じだが、クロノがされている仕打ちを見ると、表の顔というところか。
「おぉ、俺達ここでも有名だったみたい」
「この世界にも名が届いているなんて、嬉しいね」
「勿論です、こんな美しい方達にお越しいただけるなんて、光栄です。さぁ、こちらへどうぞ」
赤毛の魔女にちやほやされていて、喜んでいる。
……俺以外は。
いつもこういう役割だから、別に気にはしない。
でも、一応敵地にいるのだから気を引き締めてくれよな……。
「突然来たのに、こんなにおもてなししてもらって良いのかなぁ」
「……お前達、俺の状況を見て楽しんでいるのか?」
「なかなか見られない光景だからな」
「クロノ、元気だったか?」
香りの良いお茶を用意してくれた為、俺達は寛いでいた。
その近くでは、未だに縛られたままのクロノが呆れた目で俺達を見ていた。
おや、クロノの姉のホワイト様と元フィアンセのローズ、有名な遊女のサファイアまでいるな。
……それと、人間の女。
この女が、クロノの想い人か。
「茶色のフサフサした毛並み、貴方がカイル様。綺麗な白の毛並み、貴方がダラス様。黒色のフサフサした艶のある長い毛並み、華の貴公子のリーダーであるラツィオ様ですね」
「おぉ、当たり。完璧だね」
「ずいぶん俺達に詳しいんだな」
「勿論です。華の貴公子のファンクラブに入っていますから」
……おいおい、俺達のファンクラブに入っていたのかよ。
クラブの会合に出るわけじゃないからメンバーを知りもしなかったが、まさか赤毛の魔女がいたなんて驚きだよ。
「それなら、話が早いね。クロノを解放してくれない?僕からのお願い、聞いてくれるよね?」
僕達のファンならば、それくらい聞いてもらえる筈だし。
こんな願いなんて簡単な事だよね?
「お願い……と言いましたね?」
「うん」
「カイル様、お願いを聞いて差し上げます。ですが、その代価は払っていただけますよね?」
「代価?」
「えぇ、私はタダでお願いは聞きません。それに対して代価を払っていただく事になっております」
「えぇ~!そんなの……酷いよ」
僕達のファンならば、タダで聞いてくれたって良いじゃないか……。
まさか、僕が身代わりになるとか?
そんなの嫌だよ……。
「さすが、赤毛の魔女だな。やはり只者ではなかった」
「勿論です。せっかく苦労して手に入れたのに、簡単には逃しません」
願いを叶えてくれる魔女として有名だが、その代償が大きいと聞いたことがある。
その魔女にクロノが捕まったという事は、その願いの代償。
俺達が連れて帰る事は、そう簡単では無い……。
一体、どんな願いをしたというんだ。
他人の為に自分の身を捧げるなんて、絶対にしないヤツだったのに。
「如何致しますか?願いを叶えて差し上げますか?」
「ちょ、ちょっと待って!」
「ラツィオ、どうする?」
「お前達、少し耳を貸せ」
このままじゃどうしようもないと考えた俺は、カイルとダラスを近くに呼び、小声で作戦を伝えた。
この作戦で救出出来るのかと疑問を持ったようだが、やってみる価値はあると判断してもらえたようだ。
「これで救えるかどうか、俺達の腕にかかっている」
そうプレッシャーをかけると、気を引き締めた俺達は作戦を実行する為に動き出した。
「ホワイト様、挨拶が遅れました。ご無沙汰しております。お元気でしたか?」
「え、えぇ。元気よ」
まずは俺がクロノの姉に笑顔で挨拶をし、奥の部屋へとエスコートする。
「ローズ、お前……勝手にこんな世界に来ても良かったのか?お父様が心配していたぞ」
「えっ、お父様が!?」
次に、ダラスがクロノの元フィアンセに近寄り、俺に続いて奥の部屋へと誘導。
「あっ、君は有名なサファイアだよね?一度会ってみたかったんだ。会えて嬉しいよ」
「は、はい。私もお会いできて嬉しいです」
そして、カイルも同様にサファイアを奥の部屋へ。
「おぉ、そこの人間の美しい女性もいましたね。はじめまして」
「は、はじめまして。美しいだなんて……言いすぎですよ」
最後に残った人間の女は、ダラスが奥の部屋へ誘導した。
これで部屋に残っているのは、赤毛の魔女とクロノだけになった。
急に挨拶をし始め、奥の部屋に連れてこられた為、女性達がきょとんとした目で俺達を見ていた。
クロノだけが、何を始めたんだという目で俺達のやり取りを黙って見ていたが……。
そして赤毛の魔女はというと、特に動じることもなく、無表情のままだった。
「お嬢様方は、ここで大人しくしていて欲しい。何があっても、俺が迎えに来るまでは決してここから出ないように。カイル、任せたぞ」
「リーダー、了解です」
「あ、そうそう。ホワイト様……お聞きしたい事があります」
「はい、何でしょう?」
俺は作戦を更に実行する為、これまでの経緯をホワイト様に事細かに聞いた。
そして考えもしていなかった話が出てきて、俺達は驚いた。
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